レベル160-2 拡大に伴って負担がやはり増大します
現在、一団の運営費として、一人あたり一日五百銅貨を徴収している。
稼ぎがあった場合に受け取ってるので、仕事が無い日には払う必要はない。
毎月の稼働率から、一人当たり銀貨一枚くらいを支払ってる事になる。
妖犬を相手にした場合は、稼ぎが若干増えるので一千銅貨にしていた。
この費用で、消耗品を買ったりしている。
宿舎として使う小屋の購入費用もここから出していた。
もし人を雇うとしたら、やはりここから出す事になるだろう。
とても今の状態では金を出す事は出来ない。
賃金として、一ヶ月に十銀貨から十五銀貨くらいは必要になる。
そんな余裕はトオル達にはない。
全員が妖犬を倒していればどうにかなるかもしれないが。
そうなるまであと一年はかかるだろう。
さもなくば、人数を増やすしかない。
人数が増えれば、徴収できる人数も増える。
一団の費用も当然増える。
だが、順調に増えていったとしても、やはり時間がかかる。
レベルと違って人数の増加は予想が出来ないので、確実な手段として見る事は出来ない。
増大は見込んでいるが、あてには出来なかった。
そういった役目が必要である事を、他の者達が理解出来るかも疑問である。
モンスターを倒す事には直接的に関係するものではない。
わざわざそういった役目を設ける事に反対するかもしれない。
それが不満になっていくかもしれない。
必要性が実感出来ないと、どうしても不要だと思ってしまうだろう。
徴収してる団員費を用いるのだから、無駄遣いと思えば文句も出て来るかもしれない。
命がけというほどではないが、苦労して稼いでるものである。
疎かにしてると思えば突っかかってくる事は十分に考えられる。
(どうすっかな)
モンスターを倒す以外にも悩む事が増えてきていた。
各地に散らばる者達の状況もどうにか把握したいところでもある。
何人がどこにいて、誰がどこに向かっているのかはある程度把握しておきたかった。
新人がいつ入ってきたのかを知っておく必要もある。
周旋屋との手紙のやりとりで分かる事もあるだろうが、実際には多少のずれが生じると思われる。
そこを埋め合わせるためにも、確認はしておきたかった。
どんな技術を持っていて、それが何レベルであるのかも。
これが分かってないと、仕事の振り分けが出来ない。
レベルが上がった者達には相応の仕事をしてもらいたい。
何人で組んで仕事しているのかも、可能なら知っておきたかった。
おおよその目安として、戦闘と解体を五人ずつの合計十人で一組としている。
今後、これより多かったり少なかったりする場合も出てくるだろう。
それはそれで構わないので、どういう形で行動してるのかを知っておきたかった。
それぞれの性格なども、所見として小さく短くでいいから感想をのせてもらえるとありがたい。
ただ、これは手間がかかりすぎるとは思った。
レベルを集計するのも面倒である。
人数が増えれば面倒は増大していく。
それほど頻繁に上昇するわけではないので、レベルが上昇する時期にまとめてもらえればいいが。
(パソコンとかって、本当に便利だったんだな)
ワープロソフトや表計算ソフトのありがたみを感じる。
電子メールも。
簡単に記録が出来るというのは優れものだ。
紙に書き記すよりも手間がかからない。
それを瞬時に送付・受信出来るというのも大きな利点である。
情報だけでも一瞬にしてやりとり出来るというのは、恐ろしいほど大きな利点であるのに気づく。
(けど、手間がかかるってのが使えるかな?)
手間がかかる事をやらせる事で、それを肩代わりしてくれる役目のありがたさに気づくかもしれない。
特に人数の多くなるであろう町に駐留してる場合、管理対象が飛躍的に上昇する。
レンもモンスター退治をしながらでは大変になる。
(これを利用させてもらうか)
あえて負担をかける事で、専属で働く者の必要性を実感させる。
戦闘と解体を分けるように、各自の状態の記録も専門化した方がよいと感じさせる。
(そしたら、毎月やらせる方がいいかな)
レベルはともかく、人数を把握の方はもう少し頻繁にやりとりが欲しい。
そちらの方は毎月一回の報告をさせた方が良いかもしれない。
(とりあえず、必要事項をまとめておくか)
何を報告させるのかをはっきりさせ、必要な事をまとめさせる。
書式として形を一定にする事も含めて。
何がどこに書いてあるかをはっきりさせないといけない。
(書いた日付と、人数と、レベルと。
誰が誰と組んでるかも書いてもらった方がいいか?
手間だから、組を代表してる奴の名前だけでいいかもしれないけど)
自分が欲しい情報をとりあえずまとめていく。
後々増やしたり削ったりする事もあるだろうが、まずはそこからである。
頭でどれだけ考えても、やってみなければ何が必要でどれが無駄かも分からない。
当面は必要そうな事だけを連ねておけばよいはずである。
(ノウハウがないと大変だな、本当に)
蓄積や積み重ねがない。
全てを一から積み上げねばならない。
その事の苦労を知る。
前例に縛られてはいけないだろうが、前例があると本当に楽なんだなと思った。
あれば、何が良くて何が駄目なのかを考える事も出来るのだから。
また、知っておきたい情報として、モンスターの分布もまとめておきたかった。
どこにどの程度のモンスターが出るのかが分かれば、送り込む者達のレベルを考慮出来る。
弱小モンスターしか出ない所に高レベルを投入しても無駄になる。
その逆も然り。
適切な対応をするためにも、出没するモンスターを知っておきたかった。
それに、強力なモンスターは手間がかかるが、倒せば高値で売れる素材を手に入れられる。
中には例外もいるが、高レベルの者達が稼ぎを得るならそういった所に投入する方がよい。
稼ぎを増やしたいと思ってる者達なら、それに文句を言うこともないだろう。
中には、稼ぎはほどほどで良いから、さして手間のかからないモンスターを相手にしたいという者もいるだろうが。
(そういう希望もとっておいた方がいいかな)
まとめておきたい情報がまた一つ増えた。
これらの情報のやりとりをするために、やはり定期的な行き来が出来る者が欲しかった。
こちらからも情報を発信し、向こうで起こった出来事を受信するための。
受け取るだけではなく、受け取ったものへの反応を示す為にも、双方向でのやりとりが必要になる。
これがないと、送信してる方は何の為にやってるのか分からなくなり、不安と不満を抱く。
そうさせないためにも、こちらからの送信も必要になる。
当面は手紙のやりとりだけで済ませる事になるだろう。
さすがに専属の事務員や連絡員を置く余裕がない。
そうしなくても済むだけの余裕が今はある。
いずれはそうも言ってられなくなるだろう。
トオルも、前に出て戦うなら事務処理を専門でやる者が必須になるだろう。
いずれは事務処理や全体の統括で忙しくなり、前線から遠ざかる事になるかもしれない。
ただ、そうなるまではモンスターを倒し、事務作業もするという状態が続くだろう。
(……出来るのか?)
忙しくなりそうで気が滅入りそうになった。
続きを明日の7:00に投稿予定




