レベル156-2 同じだけど違う新しい一日が始まっていきます
結婚翌日はともかく、二日目にはもういつも通りに働く事となった。
この世界、新婚旅行といった洒落たものはないようである。
トオルも例に漏れず、いつものようにモンスター退治に出る事になる。
ただ、今回は他にもやるべき事がある
余所からきたトモノリの一族達の見学がまず一つ。
モンスター退治をやってる所を見て、その成果がどれだけあるのかを視察する事になっていた。
来訪してるのは七家ほど。
トモノリの一族全体からすれば少数だが、手間と時間をかけてやってくるだけはある。
貴族らしい尊大さは多少目や鼻についたものの、いい加減さは見られない。
文字通りに熱い熱意で見聞きしていく。
初歩的で素人目線のものではあるが、疑問については質問すらしてくる。
やってる事にどれほどの意義があり、どういう意味があり、どれだけ結果が出てるのか。
それらに高い関心があるのが伝わってきた。
穴を掘ってそこに誘導するという待ちの戦法への評価は低い。
モンスターとの戦いという事で、もっと派手で格好良いものを想像していたのかもしれない。
見栄を気にする貴族のことしょうがないのかもしれない。
衣食足りて礼節をしるという言葉があるが、身だしなみに気をつける余裕がある。
そのため、外見や外聞を気にしてしまうのだろう。
出来ればもっと格好良く、美しくやりあいたいと思っているのかもしれない。
しかし、損害もなく素人でも対処可能な方法であるのが分かるとそれも消える。
彼らは時に尊大で傲慢であり、無駄に見栄えに気を回しまう。
だが愚かではない。
得られる成果が大きく、その為の手間や労力が少ないなら受け入れる度量はある。
少なくとも事の優劣を判断できるだけの智慧はある。
例え智慧はなくても、それを補うだけの教育を受けてきている。
最初は呆れ顔をしていた者達も、説明が進み、実際にやってる所を目にし、結果が出て来るのを見ると顔色が変わった。
真剣な表情でトオル達のやってる事を目にした貴族達は、具体的なやり方に強い興味を示した。
目立った資源や、工業・商業などがない者達がほとんどである。
そもそもこれらが現代日本ほど発達してない。
産業の大半は農業である。
それだけに、収穫高はそのまま国家や社会に影響を及ぼす事もある。
例えそれを考えなくても、貴族にとって収穫高が収入につながる。
これを増大させる手段があるなら、着目しないわけがない。
その為に必要になる人手は馬鹿にならないが、数をこなせれば素材の売却利益で賄える。
作物だけでなく、人への被害も減らせる。
いつやって来るか分からないモンスターへの備えとしても期待される。
小鬼集団の撃退は、その可能性を十分に示していた。
それはさすがに希有な例外かもしれないが、戦力を確保する手段があるのは大きな利点である。
挑戦する価値はあった。
トオルとしても、そこに食い込む余地がある。
それらの領地に人員を派遣する事で、人集めが幾らか楽に出来る。
村への派遣は以前から考えていたが、その為に依頼を待つ必要がない。
兵士の育成に手を貸すのが基本となるが、どうしても余る者達を冒険者として一団に加える事も出来る。
余ってる部屋住を吸収する事で、確保したい人員を手に入れる事が出来る。
そうやって手に入れた人員は町につれていき、周旋屋の宿泊所に入れるつもりだった。
トモノリの領地に収容する小屋が出来上がるまではそうやって対応していくつもりだった。
今まで通り、トモノリの領地でも教えるつもりではあるが、これで少しは順番待ちが解消出来る。
一番欲しかった、人手の確保も出来そうなのが大きい。
説明が終わり、更なる質問があふれてくる。
それらに答えていく事で、貴族達の関心は更に高まっていった。
モンスターの被害はどこもそれなりに出ている。
すぐにでも対処したいと誰もが思っている。
自分の所で一団の者を受け入れるか、トモノリの所に人を送り込むか。
どちらが良いかを考え、話し合いが始まっていく。
各地の貴族達の状態もあり、だんだんと条件の調整といったおもむきになっていく。
当たり前だが、それぞれ状況が違う。
規模はともかく、兵士を抱えてる所もあればそうでない所もある。
トモノリの領地の近くか遠方なのかというのもある。
被害の大きさにも差があった。
それらを考慮し、一番良い条件を考えていくとなると、これまた頭を使う問題になっていく。
事前にある程度考えてはいたが、それだけでは提案が足りなくなってしまった。
やむなく、個々の状況と出せる条件のすり合わせをしていくしかなくなった。
続きを明日の7:00に投稿予定




