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【完結】転生したけどやっぱり底辺ぽいので冒険者をやるしかなかった  作者: よぎそーと
その8 目指すべき次は、やっぱりいつも通りな感じのようだった

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レベル156-1 同じだけど違う新しい一日が始まっていきます

 温かい。

 柔らかい。

 戻ってくる意識が感知したのは、まずはそれだった。

 続いて目を開ける。

 体は妙に疲れているが、同時に爽快感も感じる。

 何でだろうと思って周りを見渡す…………その前に自分が抱えてるものに気づく。

(なんだ?)

 腕で抱えてるそれが何であるかを確かめようと目を向ける。

 最初に黒い髪が目に付いた。

 剥き出しの肌も。

(…………ああ)

 意識が急速に覚醒していった。

 自分が今どこにいて、ここで何をしたのか思い出す。

 腕に抱きしめてるのが誰であるのかも。

(ああ、ああ、ああああああああ!!)

 昨夜の事が一気に頭の中で再生されていく。

 風呂から戻ってきたサツキを抱きしめ、抱えこみ、押し倒してからを特に鮮明に。

 頭と顔が沸騰していく。

(そうだそうだそうだそうだ、そうだった)

 昨日が結婚式で、それから宴会に突入して、終わってから神主に呼ばれて。

 離れた場所にあるここまで連れて来られて、一晩あかしたのだ。

(やっちまったよ……)

 後悔するつもりはまったくないが、とんでもなく悪い事をしてしまったような気がする。

 引き返せない所まで来てしまったとも。

 戻るつもりも更々無いが、大きなものを抱え込んだなと思ってしまう。

(まあ、いいか)

 解決しなくちゃいけない問題はまだあるが、とりあえずその事は忘れる。

 今は、腕の中の感触の方が大事だった。

 さっさと起きて仕事に向かうべきなのだろうが、あともう少しこうしていようと思った。



 二人が離れた所にある社から出てきたのは、朝がとっくに始まってからだった。

 目をさましたサツキが消え入りそうな声で「おはようございます」を告げてから。

 用意してあった着替えを身につけ、前日の衣装をまとめてからになる。

「遅刻だな」

「そうですね」

 もうとっくにモンスター退治が始まってる頃合いである。

 今更急いでもどうにもならないので、落ち着いて帰る事にした。

 妙に曲がりくねった道をたどって境内へと向かっていく。

 急いだところでどうにもならないので、歩調はゆっくりとしている。

 それでもさして時間もかからず神社に出る事ができた。

 一応、挨拶はしていこうと社務所の方に向かっていく。

 出来れば顔をあわせたくないが、そうもいかない。

 昨夜の事があるので、出来れば避けたかったが。

(しゃあないか)

 仕方なく顔を出す事にする。

 穏やかな顔で出て来た神主は、トオルとサツキの挨拶に自然体で返事をしてくれた。

「気をつけて帰るんだよ」という言葉を受けて、二人は「はい」と返事をする。

 昨夜の事は当然知られてるだろうから、まともに顔を合わせられなかったが。

 何となく急いでその場を立ち去っていく二人は、神主が面白そうに見送ってるのに気づく事もなかった。



 領主の村に戻ってきて、トモノリの館の中に入っていく。

 とりあえず荷物をおろし、いつもの格好にもどろうと部屋へと向かっていく。

 トモノリにも挨拶をしておきたかったが、まずは格好をどうにかしないといけない。

 使わせてもらってる部屋に入って、ようやく落ち着けた。

「なんか、疲れるな」

「そうですね」

 結婚をすませ、式も終わった。

 そのせいだろうか。

 張り詰めていた日々が終わり、気が抜けている。

 今まで感じていなかった疲労が押し寄せていた。

 昨日一日大変だったのもある。

 夜も含めて。

 黙っているとその事を思い出してしまうので、体を動かして意識しないようにしていく。



 神社で用意されたものから普段身につけてるものに着替える。

 それからトモノリの所へと向かう。

「失礼します」

 中に入り、トモノリと向かいあう。

「おはよう」

 面白そうに自分達を見るトモノリに居心地の悪さを感じた。

「昨日はおつかれさま」

「ええ、まあ」

「あらためて、おめでとう」

「ありがとうございます」

 ねぎらいを祝福の言葉を受けて頭を下げる。

「どうだ、夫婦になった感想は」

「ええ、まあ」

「それは……」

 その言葉が、昨夜の事を指してるようにも思えてしまう。

 気のせいと思いたいが、面白がってる風情から何かしら含むものがありそうではあった。

「まあ、暫くは落ち着けないだろうが、いずれ慣れるだろう。

 早く二人一緒でいる事を受け止めていってくれ」

「はい……」

「分かりました……」

 言われて赤くなりそうになる。

「ただ、なかなかゆっくりもさせてやれんが」

「……何かあるんですか?」

「まあな。

 今来てる連中に、君らのやってる事を案内しなくちゃならんしな」

「ああ……」

 結婚式に来ていた貴族達の事である。

 彼らの目的がモンスター退治の視察であるのを思い出した。

「今日はいいんだが、明日あたりには頼む」

「分かりました」

 なるべく急いで対処した方が良いことではある。

 トモノリの言うように明日には案内しようと思った。



「それと、君達の事だが」

「はい?」

「離れてるが、小屋の方を使ってみるか?

 いつまでもウチの部屋というわけにもいかんだろ」

「小屋って、倉庫に使ってるあれですか?」

「ああ。

 家になるとすぐにどうにか出来そうなのはあそこくらいしかなくてな。

 多少は手直ししてからにするが、どうする」

「なんでまた」

「そりゃあ、君らが結婚したからに決まってるだろ」

 当たり前の事を聞くなと言いたげであった。

「部屋の中に籠もってるつもりなのか?」

「いえ、いずれは家を持ちたいと思ってますけど」

「それまで何年かかる?」

「それはまあ……」

「出来上がるまで部屋で生活するつもりか?」

「そういう訳では」

「まあ、倉庫に使ってた所だから気になるだろうが。

 今はそれでどうにかしてみないか?

 いずれ新しい場所を建てるつもりではあるが」

 その申し出はありがたかった。

 しかし、

「どうしてそんな事を?」

 トモノリがそこまでする理由が分からなかった。

 損とまでいかないまでも、利点が分からない。

「まあ、囲い込みだな」

「またそんな……」

「そう思うか?

 だがな、今回君らが結婚して、これで終わりってわけではあるまい。

 何人かは同じように結婚していくだろうさ。

 そういう者達がいつまでも一緒に雑魚寝するわけにはいかんだろ。

 幾らか対応をしておかんとな」

「身銭を切ってまでやるんですか?」

「君らがいてくれる効果は大きいからな」

 安全面だけではない。

 税収源としても貴重であった。

 常駐させておく利点はある。

「そういうわけだ。

 こちらとしても、打算はある」

 だとしても破格の待遇であろう。

 わざわざ用意してくれるというのは。

 トオルとしては断る理由はない。

「ありがたくお受けしたいと思います。

 でも、」

「なんだ?」

「家賃がどれくらいかを聞いてからにします」

 トモノリは大声で笑った。



 そんなこんながあって、詳細を決めていく事となった。

 サツキも一緒になって条件を聞いていく。

 ここで決定とはせず、とりあえず考えてからという事にはなったが、それほど悪い条件ではない。

 部屋に戻りながら、二人はあらためてこの話について話しあった。



 そして。

 なんだかんだで夕方になり、一団の者達が帰ってくる。

 出迎えたトオルにサトシは、

「昨夜はお楽しみだった?」

などと邪な質問をしてきた。

 何も言わずに拳骨を頭に叩き込んだ。

 続きを19:00に投稿予定

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