レベル154-1 どういうあり方が求められるか、ちょっと想像ができません
「そういうわけで、また暫くは人数が減ると思います。
妖犬の方もまた休止です」
考えをトモノリに伝えていく。
村が被る被害にも関わってくるので、報告しておこうと思っていた。
トモノリもそこはすぐに「分かった」と了承してくれた。
「だが、いずれ妖犬退治も再開してくれ。
やってもらうと助かる」
「分かってます。
でも、一年は間が空くので」
「それは仕方ないだろう」
時間がかかる事も承知してるし、無理をして壊滅されたら困る。
「しかしなあ……」
「なんです?」
「お前、あと少しで結婚だろ。
こんな事考えてる場合か?」
呆れ顔でトモノリは苦言を呈した。
「仕事が大事なのは分かってるが、どうも仕事にかまけすぎに思えるぞ」
「そう見えますか?」
「まあな。
式の方の準備も進めてるようだから、そんな事はないんだろうが」
「そっちの方は、村の人や神社の方に色々教えてもらいながらですから」
「普通はそうだろうな。
冠婚葬祭なんて一人で出来るようなもんじゃない」
自分が当事者としてやるのは一生に一度か二度である。
やり方を熟知してる当事者はなかなかいない。
「やり方を聞くのは悪くない。
それでちゃんとやってるのだから、まあ文句を言う筋合いではないのだが」
「やっぱり、言いたくなる事もあると」
「どうもなあ。
彼女をかまってないように見えてな」
「なるほど……」
色々忙しくて接点が減ってる可能性はある。
また、今までがあるから、どうしても仲間としての接し方をしてしまう。
すぐに変わるものでもないし、いきなり変えたらそれはそれでおかしいだろうが。
「もう少しどうにかしないといけないですかね」
「そう思うぞ。
何せ夫婦になるんだからな」
「夫婦ですか……」
復唱してしまう。
あらためて考えると、夫婦というのも難しいものだった。
仲間や友人ではない。
恋人とも違う。
家族であるのだが、親兄弟とも違う。
「どうしたらいいんですかね」
「なんだ、悩んでるのか」
「始めてですから、こういうのは」
「そりゃそうだろうな」
再びトモノリは苦笑する。
「まあ、上手い付き合い方を探していってくれ。
何せ一度きりのものだからな」
そう言ってからトモノリは言葉を付け足す。
「────普通ならな」
「あ、はい」
あらためてトモノリの事を思い出す。
普通なら一度だけの事で済むのだが、そうでない場合もある。
「…………言ってはなんですが、俺は一度だけにしたいと思ってます」
「ああ、そうしてくれ。
是非ともな」
素直な応援であった。
「トモノリ様も頑張ってください」
「ん、まあ、そうだな」
そちらの方も色々と動きがあるようである。
詳しい事は知らないが、どこからともなく漏れてくる話しでそんな事を聞いていた。
(つっても、どうしたもんだか)
トモノリの所から戻る途中で考える。
どうすれば良いのか悩ましい。
結婚するのだから変な遠慮はいらないのだろうが、無くすわけにもいかないだろう。
距離の取り方や、どこまで踏み込み、どこは控えるのかをあれこれと考えていく。
(って、これじゃ仕事の仕方を考えるのと一緒だ)
自分の思考法がそういった形になってる事に呆れる。
長年続けてきたせいで、どうもそういう考え方が身についてしまってるようだった。
(色恋や人間関係には使えないよな)
やったら、あまりにも味気ない事になるだろう。
もう少し人情のある考え方をしたかった。
そして、考えればまた事務的に無味乾燥に考えてしまう。
いかにすれば成功するかと。
そして、失敗を無くすことが出来るかと。
唯一の手段を模索しようとしてしまう。
人間関係とはそういうものではないだろうと思いつつも。
(いかんいかん)
どうにもならないまま、宿舎の方へと戻っていく。
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