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レベル150-2 新たな一歩を踏み出すのだから、やはり準備は大変です

「で、袖にされたってわけか」

「あんた、話し聞いてんの?」

 サトシの言葉にレンは少々憮然とした風になった。

「いやいや、兄貴が選ぶ事はあっても、レンに選択権なんてないでしょ」

「言ってくれるじゃない」

「まあ、兄貴もこんなモンスターなんて相手したくなかっただろうし。

 このまま嫁の貰い手も無いままなんじゃねえの?」

「サトシ」

 たった一言だが、その場を凍てつかせるには十分だった。

「良い度胸してるわね」

 満面の笑みを作ってるレンに、サトシは命をかける覚悟をした。



「なるほど」

 トモノリはやってきたトオルとサツキの言葉に頷いた。

 サトシとレンが馬鹿げたやりとりしてる同時刻である。

 赴いた二人は自分達がどうするかをしっかりと伝えておいた。

「ですので、以前聞いた仲立ちの話しをお願いしたいんです」

「ああ、かまわんよ」

 トモノリに断り理由はない。

「さっそく手配をしよう」

 小なりとはいえ貴族の仲立ちである。

 平民庶民としては破格の扱いと言ってよい。

 それだけの価値のある有力者という箔が付く。

 そういった名声などを望んでるわけではないが、自然とそうなっていく。

 もとよりトモノリはトオルをそれだけ評価はしているが。

「しかし、こうなるとこっちも独り身じゃ格好がつかんな」

 こればかりは苦笑せざるえない。

 仲立ちをする者が既婚者である必要はないが、「結婚したこともない者が何を」ととられかねない。

 ましてトモノリは離婚歴がある。

 事情を知ってる者ならばとやかく言う事はないだろう。

 それでも、なんやかんやと言い立てたり、ろくでもない事を吹聴する者は出かねない。

 悪意を持って言う者も、面白がって囃し立てる者も世の中には事欠かない。

(こっちもどうにかせんといかんかな)

 もとより独り身でい続けられるとは思っていなかった。

 縁談はちらほらとやってきてるし、一族全体の圧力もある。

 発展を見込んで利害の絡んだ見地からのものや、ただただ今までの苦労を哀れんでのものもある。

 トオルの事もあるので、トモノリもそろそろ決着をつけようと思っていた。

「では、早速だが本題に入ろう」 

 何はともあれ二人の事をまとめておかねばならない。

 そちらが優先である。



 結婚となればそれなりの準備が必要となる。

 といっても、大げさなものは貴族や裕福な者達の話でもある。

 平民庶民であれば、神社に出向くか、神主に来てもらって集会をやる場所で式を挙げるだけで終わる。

 それも大した手間はかからない。

 式そのものもそれほど時間もかからない。

 お披露目やら宴会やらもさほど手間のかかったものではない。

 参加するものが手弁当で食い物などを持ち寄り、めでたい事だと騒いで終わる。

 余裕のなかなかないのが民であるだけに、時間も手間もかけてはいられない。

 トオルとサツキもそのつもりでいた。



「それでだ。

 こっちも一族の者を呼ぶんでな。

 日取りと場所の設定をどうしたらいいかな」

「はい?」

「いや、前々から色々と話しにはあがってるようでな。

 手紙にも色々書いてきてる」

 通信手段は限られ、報道機関のない世界のこと、これらが有力な情報源となる。

 トオルの事はそれを通して一族にも伝わっている。

 会ってみたいという話は以前から出ていた。

 これを機会にそれをしてしまおう、とトモノリは考えていた。

「なので日程を調整出来ればと思ってな。

 もちろん、これない者も出て来るからそれほど難しく考えなくて良いが」

「いやいや、ちょっと待ってください」

 予想外どころではない。

「貴族の方が参列するって、どんだけ重要な出来事なんですか」

 有力者でもあればともかく、貴族が平民の結婚式にやってくるなどありえない。

「何を考えてるんですか」

「こっちで何が起こってるのか見てみたいらしい。

 視察みたいなものだろう」

 結婚式にかこつけてという事のようだった。

 むしろ式の方はおまけであろう。

「ついでに顔を見合わせる機会のない者達で集まろうというのもあるかもしれん」

「完全に利用されてますね、俺達」

「こちらとしても心苦しいところでな。

 遠慮無くご祝儀をふんだくってくれ、としか言えん」

「どうにかならないんですかね」

「どうにかしたんだがな。

 もう何人かはそれにあわせてやってくるつもりでいるらしい。

 可能な限り断るが、何人かは参加させてやってくれんか?」

 無茶苦茶な話である。

 ただ、そういう口実でもないとなかなか領地を抜け出せないという事情もある。



 領地を運営する貴族は、基本的に領地にいる事になる。

 定められた義務というわけではないので外に出るのを咎められる事は無い。

 ただ、外に出れば領地経営や運営が出来なくなる。

 その為、極力外に出る事は控えるのが通例だった。

 かてて加えて、それが通例となっていくと面倒な風潮も出来上がる。

 決して悪い事ではない領地の外に出る事も、仕事をさぼってると見るような連中も出てくる。

 むろん、全てがそうであるというわけではない。

 所用で領地から出る必要もある。

 だが、そうでない場合はとかく鬱陶しい噂の的になりやすい。

 そこには、「自分は外に出ることもなかなか出来ないのに」といった嫉妬ややっかみなどもある。

 また、そういった風潮を作り出したり利用して相手をおとしめるのを楽しむ者もいる。

 他にも理由はあるだろうが、そういった事がなかば慣例のようになってしまっている。

 おかげで領地持ちの貴族達の外出を阻むようになってしまっていた。

 こうした背景が、貴族の遠出に理由を求めていた。

 トオルの結婚もその一つとなっていた。

 理由としては少々苦しいものがあるが。



「そんなわけだから、何人かは頼みたい」

「納得したくないですね」

「そこを曲げて頼む」

 トモノリにそう言われては仕方がなかった。

 続きを20:00にも投稿予定

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