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入部!

いつか小さい頃、近所のお姉さんたちとUFOを見たと騒ぎ立てて親を怒らせたことがあった。夜の7時頃まで公園で遊んでいたとき、空にキラリと光るものが見えたのだ。遊んでいたうちの1人が「何アレ」と大声で言ったからみんなが注目してみると、明らかに飛行機であったにも関わらず、みんな口を揃えてUFOだと言った。UFO見えたー!と言いながらみんなで滑り台の上に上り、空を見上げてきゃっきゃっと笑ったが、その声があまりにも大きかったから隣の家のばあさんに注意された。それから少しもしないうちにみんなの母親もその騒ぎ声をききつけて引き取りに来た。中にはまだ帰りたくないとぐずっている子もいたが、ばあさんが凄い剣幕で滑り台の前に立っていることもあって母親と子供たちはそれぞれの家にそそくさと帰って行ったのだ。確か、そのときうちの親が1番遅くに迎えに来たのだ。私は滑り台の上でずっと下にいるおばあさんの頭のてっぺんと右手に持っている布巾を見ていた。おばあさんはエプロン姿で白くて薄い髪の毛は適当に1つに結っていた。私はそのとき何故だか少し温かい気持ちになったのを覚えている。凄い剣幕で注意されたのに、おばあさんが何故だか優しく、家庭の温かみや私たちに対する気持ちがなんとなくその姿ににじみ出ていたのだ。しばらくぼんやりとおばあさんを眺めていると、私の母親がエプロンを着たまま現れた。

「すみません。本当にすみません。」

母は何度も頭を下げた。私の頭も無理やり手で下ろさせた。そうだ、そのときだ。私があの石を貰ったのは。母が帰るわよ、と小さく言った時におばあさんは私の手に何かを置いた。

「これからは気をつけるんだよ」

ちょっと怖くて図太くて、でも温かくて大きな優しさというオブラートにつつまれているおばあさんの声。私の手に何かを置いた時のおばあさんの体温。すべてがおばあさんを表しているようだった。








「うちの部活、入部してくれるの⁉︎やったぁー!」

先輩が両手をあげてバンザイのポーズをした。部室は狭くて埃っぽくて、変な資料が入った本棚が壁に沿ってぎっしり並べられていた。先輩は退屈そうに雑誌を読んだりお菓子を食べたりしている。

「あ、あの、1年は私だけですか?」

思わず聞いてしまった。部室にはどう見ても先輩らしき人しかいない。しかも全員高校生。

「あー、うん!高3が2人、高2が1人、中3が1人とあなただけだよ!」

先輩は楽しそうだった。でも私の心は、いろいろな意味で焦って、また冷えきっていた。




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