第九話 戦闘
すこし描写不足がある可能性があります
─あぁ…壊れる音がする。すべてが、なにもかもが─
目の前でお兄ちゃんが倒れる、赤い尾を引きながらそれを見て私の頭は真っ白になる。お兄ちゃんが…お兄チャンガ…オニイチャンガ…
「アアァァァァァァァァ!!」
叫ぶ。ひたすら叫ぶ。悲しみを、憎しみを、後悔を、怒りを。
沸くのは殺意、純粋な殺意。
すると叫び声を聞いた人が走ってくる。教員で今の現状を見て驚き救急車に電話をかけているようだった。だが刀華にはそれを気にする余裕などなかった。そのままフラフラ歩き出す。それから少し立った後冷静になり考える。
だけど殺意が消えることはない。狙撃手を殺すことだけを考える。
それはもしものために携帯していたもの…
その片手にはナイフ、片手には拳銃…ベレッタM92を握りしめて
場所はわかっていた。学校の近くにある裏山だ。あそこにいるだろうと予測し全力で走る。
到着したそこにはいろんなところに立てかけられたWinchester Model 70…すべてはスコープが取り外されており狙撃は不可だ。視線を前に向けると狙撃したライフルであろうM24 SWSを構える銀髪の女性が立っていた。
「やはり…死の運び人はお前か…」
「坂倉魅零」
刀華がそういうと彼女は笑みを浮かべる。
「えぇ。正解です。刀華さん…いや…」
「殺戮の女神さんとでも言えばよろしいでしょうか?」
そう言った魅零を少し驚いた刀華はその後笑みを浮かべる。
「そういうのはもどかしい。やめてくれ。」
そう言った後、刀華は怒りの表情に戻り言う。
「なぜ彼を狙った。彼は一般人だろう」
それを聞いて魅零はM24を抱えながら笑う。
「そうもいかないんですよね」
彼女はそう言うと理由を話し始める
「殺しがすごく優秀だったあなたがとある一件から依頼も受けず、殺しもしない。それに脱退するときた。正直邪魔なんだそうです。クライアントはそう言いあなたの排除を依頼してきました。まぁクライアントは誰かお分かりだとは思います。だけど正面衝突ならこちらが少し分が悪い、だから弱点をつかせていただきました。あなたの溺愛する彼を…ね」
刀華は宗介に会ったあと裏の世界から足を洗うと組織に言っていた。理由は簡単だ。殺すなと言われたから。復讐はするけどむやみに殺すなと言われたから。だから刀華は足を洗うと言って裏の世界の組織から脱退した。ただそれだけ。
「使うだけ使っておいて使えなくなったらポイ…か…笑えるな、そのクソ野郎らしいやり方に…裏の世界も表も世界もあまり変わらないな…」
刀華は空を向いて狂ったように笑い始める。
「だから…あなたには死んでもらいます…よっ!」
そう言い魅零はM24を発砲する。それに刀華は横にずれたあと木の後ろに身を隠す。
(M24は最大5発…)
後ろから2発、3発と射撃音が鳴る。それを刀華は数えていく。
また後ろから音が鳴り木がえぐれる
(4発…)
そしてまた音が鳴る。
(5発…来た!)
そう思い木から出る。向こうでは弾切れを起こしたようで背中にM24を戻す魅零がいた。それを見て刀華は片手にベレッタM92を3発撃つ。
「あは!」
魅零はそう笑うとベレッタの銃弾を避けて木の後ろまで走っていく。
それを刀華は追従しながら1発、2発と撃つがあたらない。すると魅零は木の後ろに隠れる。周りは暗く視認しづらい。
「一つ言っておきます」
「なんだ?」
どこからか魅零の声が響く。
「狙撃手といえど近距離戦を経験しないわけではありません。普通は拳銃…あなたが持っているのがセオリーですが私は違います。まぁ…気づいてはいるとは思いますけどね」
「まさか…そういうことか!」
「そういうことです!」
後ろから音が聞こえる。ふと振り向くとスコープを外したWinchester Model 70(以下WIN M70と省略します)を構えている魅零がいた。
「くっ!」
後ろから撃たれる銃弾を防ぐためにナイフを構える。
甲高い音とともにナイフは根元から折れ、ただの棒と化する。
「さぁ!」
魅零はそう言うと持っているWIN M70を投げ捨て、後ろから新しいのを持ち出し発砲する
それを刀華は横転しながら回避して魅零へ発砲する。だが3発発砲しても当たることはなく、魅零はまた木の後ろに姿を消す。舌打ちをしながら弾切れを起こしたベレッタを懐にしまう。
魅零を探すために周りの音を聞こうと刀華は耳を澄ませる。ふと後ろでガチャっとレバーを動かす音が聞こえた。悟らせぬようにそちらに走り出すと目の前にWIN M70を構えた魅零が姿を現す。
「やはりな!」
目の前にいることに驚いた魅零がWIN M70を撃とうとするが刀華をそれを蹴り上げる。空を舞うWIN M70を見もせずそのまま蹴り上げの反動生かして回転しながらベレッタをリロードして目の前の魅零に構える。
だが魅零もM24をこちらに構えていた。
(あのときの音はそれのコッキングレバーの音か…ッ!)
少しの静寂が起こる…そして蹴り上げたWIN M70が地面に落ちる音が鳴ると同時に動き出す。
魅零がM24を撃とうとしようとしたのをベレッタで殴りつけ軌道を変更し、直撃を逸らす。そのまま魅零の足を払い転倒させ、落ちたM24を蹴り遠くに飛ばす。そしてそのまま倒れた魅零に銃器を構える。
「ふふふ…さすがですね。完敗です。さぁ殺してください」
「あぁ…そう言わなくとも」
そうベレッタの引き金に手をかけるときに刀華の頭に宗介の顔が出てくる。悲しそうな顔、それを見てそんな顔させたくないと思った。このまま撃てばお兄ちゃんは悲しむだろう。そう頭の中で過ぎり、ベレッタの引き金にかけた指を外し、しまう。
「撃たないのですか?」
「お前を撃てば、お兄ちゃんが悲しむ」
そういう言うと魅零は笑う
「後ろから撃つかもしれませんよ?」
「そのときはそのときだ」
そう言うと刀華は踵を返し去っていく。
残された魅零は呟く。
「あっけなかったですね…しかし倉石宗介…興味が湧きました」
そう彼女は言うと目の前に落ちているM24 SWSを担ぎ、刀華とは逆方向に消えていく。
携帯には宗介のいる病院の場所が乗っている。
「お兄ちゃん…ッ!」
刀華はそのまま走り出した。
初の戦闘、そして夜中テンション…あぁ…うまく書けない…くっ