第六話 急襲?
─裏の世界の人間に平穏という言葉は存在しないと思え─
ひとしきり刀華は泣いたあと、立ち上がり軽やかなステップを踏みながら少し距離を開けていく。
「そろそろ行かないと…」
そう彼女は悲しそうに言う。
それを見て僕はその彼女がこれからどうするのか心配に思いながら彼女を見つめていると。
「もう大丈夫だよ。お兄ちゃん。もう無闇に人を殺したりしないよ!」
彼女は笑顔でこっちを見ながら言った。
わかっているけど僕は彼女に少し笑いながら言う
「本当に?」
「本当だよ。だけど復讐…じゃなくなってるか…だけどあの事件の犯人のグループの殺しだけはやるけどね」
それを聞いただけで普通は驚くところなのだけど、僕は少し安心していた。僕だって家族を殺されてるんだ。そう思ったので刀華の言葉に反対を唱えることはなかった。
「それじゃあね!お兄ちゃん」
「うん。バイバイ。また会おうね」
そう言った後、刀華は僕が来た道を辿るように去っていく。それを見送ったあとこのままにしておくのも…と思い僕は携帯を取り出して警察に電話をかけた。
あの後、少し警察署で事情聴取を受け、赤いコートの殺人鬼でしたと答えて、それからやっとの思いで親が残してくれた一軒家の自分の家に帰ってきた。
玄関に入ってから誰も返事は返してこないけど様式美なので悲しいけれど挨拶をする。
「ただいま」
「おかえりー!」
返ってきた。その事実にビックリして少し呆けたあと急いで靴を脱いで僕は声が聞こえたであろうリビングのほうへ向かっていった。
リビングに行くとキッチンのところから何かを叩く音や人の気配を感じた。警戒しつつキッチンの中に入ると。
「おかえり。お兄ちゃん」
刀華がこちらに気づいたらしく笑顔で返してくる。これが普通なのだけれど僕はそれに関して呆けてしまう。それから復帰した後目の前の妹に向けて疑問を言った。
「なんでここにいるの…?」
「いやただお兄ちゃんの家に住むことになるから来ただけだよ?」
「え?ここに住むの?」
「そうだよ」
ポンポンと衝撃的な言葉が出てくる。それを聞いて僕はまた呆けることしかできなかった。
「奇跡的に会えたし、家族なんだから一緒に住もうと思って…もしかして嫌だった?」
「いやいや!そんなことないよ!」
「そっか。良かった。いきなり来てしまったからダメだって言われるかと思ちゃった」
刀華は胸に手を当てて安心したようにため息を吐く。その彼女を見ていると後ろの料理に目がいった。
「あっ!そうそう、私料理作ったんだ。一緒に食べよう?お兄ちゃん」
「う、うん」
僕がそう言うと刀華は嬉しそうな顔をして料理をリビングにある机の上に運んで行く。
「さぁさぁ!お兄ちゃん座って座って!」
刀華は僕の腕を掴んで催促しながら僕を椅子に座らせる。
目の前には肉じゃがや卵焼き、焼き魚などの和食が並んでいた。いい匂いが立ち込めてすごくお腹が減った。
「はいどうぞお兄ちゃん!あーん」
「あーん」
彼女が箸で掴んだ肉じゃがのじゃがいもを差し出したのを食べる。
「どう?」
「うん。すごく美味しい」
和食らしい薄味にちゃんとじゃがいもも柔らかくてすごく美味しかった。
僕が美味しいというと彼女は笑顔になって卵焼きや焼き魚などを差し出してくる。それらもちゃんと美味しくて、刀華が料理を差し出してくるのは料理がなくなるまで続いた。
その後お風呂で刀華が突撃をしようとするなど事件はあったけどそれから刀華と話したりしたりした。今はベッドの上で刀華が僕の背中に抱きついている体制でいる。すると刀華が微かに動いて
「ねぇお兄ちゃん。私がここにいても大丈夫なのかな?」
そう心配そうに聞いてきた。僕は後ろにいて顔は見えないけれど少し微笑んで彼女に向けて言った。
「うん…大丈夫だよ」
少し簡単で短い言葉だけどそれを聞いて彼女は嬉しそうに抱きついてくる。
すると刀華が小声で
「おやすみ。お兄ちゃん」
と言ってきたのでおやすみと返して僕は意識を手放した。
なんだろう…刀華のキャラがおかしくなってきた気がするぞ…やっぱり難しいですな…精進しないと