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第五話 邂逅

─何があっても慢心するな。闇の世界はそんなに甘くはない─


「お兄ちゃん…」


 目の前の彼女は涙を浮かべながら僕に抱きついてくる。そんな僕も軽く泣きそうになりながら行方不明だった彼女が生きていて、目の前にいることを確認するように抱き返している。

生きていてくれているとは思わなかった。今まで恐怖や怯えの感情をこの赤いコートの殺人鬼に向けていたのだけれど、これが刀華だと思ったとき不思議とその感情は消え去ってしまった。今では目の前の少女にいなくならないで欲しい、ずっといて欲しいという感情に変わってしまった。だけどそれがすごく心地いい。唯一の肉親である刀華へ向けての軽い独占欲を持ちかけているみたいだ。


「おにぃちゃん…」


 刀華はさらに僕に擦り付いてくる。もうこんなに大きくなっているのに心は子供のままなんだね。と心の中で呟くと僕は彼女の頭に手を乗せ撫でる。

すると一瞬だけビクッとカラダを震わせたがすぐに刀華は満悦の笑みを浮かべる。


「今まで何をしていたの?」


 僕は彼女にそう聞いた。すると彼女は少し嬉しそうな顔を暗くして。


「いや、普通にマンションに部屋借りて住んでただけだよ」


 そう返してくる。だが顔は暗く、嘘ついているし、無理をしているのもわかっていた。


「そっか…」


 僕はこのまま追求しても刀華に迷惑なだけだと思い追求しないことにし軽く言葉を返す。

すると彼女は向けていた笑顔を止め、僕の体に顔を押し付ける。


「ど、どうしたの!?」


 突然の行動に僕は心配して彼女に声をかける。すると帰ってくるのは何かをしゃくり上げる声と悲しい声、そのときに彼女の顔のあたりから感じる冷たい感じに僕は理解した。彼女は再開した時とは違う悲しみだ。


「ごめん、ごめんなさい…」


 僕に向かって刀華は謝り出す。すると彼女は僕のほうに顔を上げる。その顔は涙でグチャグチャで、でもその顔で必死に見つめ僕にすべてを話し出す。僕が庇ったあと、失踪した時の頃を。


「お兄ちゃんが死んだと思って…それで、それが嫌で、最低でもお兄ちゃんを殺した奴に復讐しておきたくて、私は裏の世界に入っちゃった」


 裏の世界?僕はそれに疑問符を浮かべる。裏の世界とはなんだろう。そう思っていると刀華がそれについて喋りだした。


「裏の世界っていうのはまんま殺し屋とか、殺人とか違法なのを仕事でやったりとかする社会のことなの」


 彼女はそう言った。殺し屋…そんなものがあったのか。この国に。僕はそう心の中で思う。そう考えている僕の顔は刀華にはすごく怖い顔に見えたようで必死に僕に抱きついて彼女は言う


「ごめんね。お兄ちゃんの復讐のために私殺人鬼になっちゃった」


 すごく涙を貯めた目でこちらを見てくる。そんな彼女に僕は笑って言う。


「いいよ。全然。殺人鬼ってのはさすがにダメだけど。僕は君の家族だから」


 そう言いながら僕は彼女の頭を撫でる。安心したように彼女は目をつぶって僕に擦り付けるように抱きついて来て、それからか細い声で言った。


「ありがとうお兄ちゃん。やっぱりお兄ちゃんは優しいね」


 そして顔を上げ僕に向かって微笑む刀華はすごく綺麗だった…

うわー久々に宗介さんside書いたらなんかキモくなったような気がする…

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