過去編 ~動き出す現実 3 ~
銃声が鳴り響いた後、その場に倒れる神崎。
「神崎ッ!」
桐生は銃声を聞いた後、髪の長い男を警戒しながらすぐさま倒れた神崎が無事なのかを確かめた。すると新城が何かに気付く。
「あれ……。桐生さん……?」
新城は神崎の近くに寄り、脈拍を調べた。
「やっぱり……、大丈夫ですよ桐生さん。神崎さんは気を失っているだけです」
「そうなのか……。良かった……」
神崎が無事だということに桐生は安心する。そしてそのまま桐生はその場に立ち、拳銃のような物を持った長い髪の男を見た。
「おい、アンタ。神崎を狙った訳じゃないな? なら多分、敵じゃない。だからこそ聞くが、今ここで何が起きている? アンタが持っているその変な物。俺の知り合いが似た様な物を持っていた。つまり、今ここで何かが起こっているんだろ?そうなんだろ!?」
勢いに任せてどんどん質問をする桐生。気に触ったのか、髪の長い男を包んでいたオーラはどんより重くなる。
「あー、少し黙ってくれ。”五月蝿い”のは、嫌いなんだよなァ…」
髪の長い男のあまりにも殺意に満ちた鋭い眼光と言葉に、桐生は圧倒されぐっと思い止まる。すると長い髪の男は、鋭い眼光をどこか明後日の方向に向けると同時に口を開いた。
「……おめェの今、想像している事は多分当たっているだろうなァ……。だがーー」
その先を言い掛けると、髪の長い男は拳銃のような物を刀に変形させ、桐生に刀身の刃を向けた。
「ーーそれを知ったところでどうする?」
それはまるで威嚇の様にも思える程、低い声だった。
すると、桐生は何かの意を決したかの様に口を開いた。
「ーーも、ーーーーいーー」
「あァん?なんつった……?」
次は口を大きく開いて空気を思いっきり吸い、怒鳴る様な声で言った。
「俺も戦いたい!! 何が起こってんのか、わっかんねぇよ! だけどよ、何も分からないまま仲間も助けられず、無力なままで居たくないんだ、教えてくれ! その“力”はどこで手に入れる事が出来るんだッ!!」
桐生の答えに対し、髪の長い男は無言で桐生を睨んだ。
「ふん、無力なままで……、か」
少しの間、無言で睨んでいた顔が緩み、桐生に向けていた刃を下げて長い男は桐生に近付いてきた。
「……お前、命の保証はねぇぞ。それでも良いんだな?」
桐生はその言葉を聞き、髪の長い男に真剣な眼差しを向けた。
「一体何が起こっているのかもわからねぇし、仲間も助けられねぇ……。でも、ただただ無力なままじゃ収まりがつかねぇ……。だから、俺は仲間の為になるなら、自分を犠牲にしたって構わないぜ」
その返事に男は頬が少し緩む。
「……なら、決まりだな。お前の覚悟とやらを俺に見せてみろ。……これから場所を移動する。俺に着いて来い」
「き、桐生さん…!?」
今まで無言で聞いていた新城が急に桐生の発言する。
「ちょっと待って下さい! 私達はこの後どうすれば……? それに、危ないですよ桐生さん!」
「悪い、新城。勝手に決めちまって……。必ず俺は戻ってくる。それまで神崎の事を頼んだぜ」
桐生は満面の笑顔を新城に向けながら無責任に言った。
髪の長い男は会話が終わるのを確認し、口を開く。
「用は済んだか? ならば行くぞ、ついてこい」
「あぁ……!」
突然現れた謎の長い髪の男と共に、桐生はどこかに行ってしまったーー。
ーーそれからしばらくすると、少年の様なシルエットが走ってきた。
「あっ……! あれは、新城と……。神崎さん……!」
こちらに走ってくるシルエットが誰なのか、新城はすぐに分かった。
「月影……、さん!? 今までどちらへ……?」
「話は後だ。とにかく僕に着いてきて! ここはもうじき更に激しい争いの場所になる」
神崎を新城と月影の二人で支えながら建物の中に隠れた。安全を確保した事を確認すると、新城は月影を呼んだ。
「月影さん。あなた、もしかして何か私達に隠し事をしていませんか?」
月影は驚く。言い訳をしようとするが、新城には全てを見透かされている事に気付く。月影はその質問に対しして返事をする。
「……どうやら、話さなきゃだね……」