過去編 ~動き出す現実 2 ~
「今日も“敵”の数がやけに多かった。ここ最近ずっとだ……」
手元に持っている拳銃らしき形をした物を平らな円状の形に変形させ、背面の腰に装備する。
「にしても、昨日はつい助ける気持ち一心でコイツを使っちゃったなぁ……。おかげでもう皆のところには行けないや……。
皆は絶対に聞いてくる。あの穴は何なのか、襲ってきたモノは一体何だったのか。そもそも昨日起きた出来事がまるで無かったかの様に穴が消え、17番市街も元通り。そして、何よりも……」
少年の様なシルエットが空を見上げた。悲しそうに、されど顔は無表情に。そして、少年の様なシルエットは口を開く。
「ニュースにならなかった事」
ザーザーッ、ピーッ
〈よし、そろそろ帰還して来い〉
少年の様なシルエットの脳に声が響く。少年の様なシルエットはその声に返事をした。
「こちら、“輝大盾”帰還します」
そう言い残すと少年の様なシルエットは何処かへ走っていったーー。
「くっそー、あの野郎。今日に限って俺を散々こき使いやがって……」
ぶつぶつと、不機嫌そうな顔をしながら歩く桐生。
「先生の事をそんな言い方してはいけませんよ。先生にも事情があったのでしょう。」
苦笑いをしながら返事をしたのは、桐生の左隣を歩く新城だ。
「あーあー、残念ねー?どうせまた今日も寝過ごす気だったんでしょう?」
右隣からはそんな言葉と共に、神崎からクスクスと笑われた。
今日も学校の授業が終わり、下校中の桐生と新城に神崎だ。普段と変わらない下校。だが、一つ普段とは違うのは、
そこには月影の姿が無いのだ。
「月影、どうしたんだろうな。やっぱり昨日の事が関係しているのかもしれないな……」
「私もそう思います。ですが、月影さんの居場所が分からない以上こちらから会う事も出来ません……」
「アイツ、電話にも出ないしな……」
桐生と新城が話していると、閉じていた口を神崎が開いた。
「多分、多分だけど……。月影はあたし達を巻き込みたくないから連絡を取らないんじゃないかな……。昨日、もしかしたら桐生や新城さん、あたしは死んでいたかもしれないし
そんな危ない事に関わりを持って欲しくないんだと思う……」
ーーそんな神崎の発言に桐生は怒った顔をした。
「だからって、お前は月影を放っておけって言うのかよ!」
急に怒鳴り出され、圧倒されてしまう神崎。
「ちょ、ちょっと待ってよ! 誰も月影を放っておけなんてーー」
神崎が桐生に釈明をしようとするが、桐生の勢いは止まらない。
「じゃあよ、それって月影も死ぬかもしれねぇって事じゃねぇかよ。今更“関わりを持って欲しくない”からって関わりを断ち切るのかよ! そんな簡単に関係を切る為に今まで一緒に過ごしてきた訳じゃないだろ!? 助け合う為に仲間になったんじゃねぇのかよ?信頼し合える為の仲間じゃねぇのかよ!!」
「そ、それはそうだけど……、でも……!」
神崎がその先を言いかけた瞬間、今まで来た道の方向から声がした。
「随分とご立派な仲間想いの奴だなァ?」
その声と共に聞こえた音はーー
“パァンッッ!!”
ーー周りに響き渡る銃声音だった。