過去編 ~動き出す現実 1 ~
ーーあれは何だったんだ……。
家に帰り、疲れた身体を布団に預ける。そして、悩みながら過ごすその日の夜。桐生は今日の放課後に起きた出来事を、頭の中で整理していた。
『月影……。お前は一体……?』
「まるで夢でも見ていたかの様な、そんな感覚だ……。だが、夢じゃない。今日の放課後、実際に目の前で起きた事だ。それに、月影の持っていたあのよくわからない物体はなんだ……?」
透明な盾と、拳銃。どう思い出しても、同じ物が一瞬にして姿を変えたようにしか見えない。そしてそれをなぜ月影が持っていたのか……。桐生はその夜、ずっと思い悩んでいた。
ーーそして、時は次の日の朝になる。
桐生は結局、一睡も出来ずに思い悩んでいた。
「くそ! 全くわっかんねぇじゃねぇか……。仕方ない。今日学校で本人に直接聞けば良い。考えるのはそれからだな」
だがーー。
その日、月影は学校に来ていなかった。クラスの担任に聞いたところ、どうやら風邪で欠席との事らしい。そのまま午前の授業が終わり、今日も昼食はいつもの様に集まって食事をしていた。
勿論、月影は居ない。
「どうしたんだろうねぇ……、月影」
「俺は何も言われて無いな……。新城は何か聞いてないか?」
「いえ、私も何も……」
「だよな……」
桐生がガクッと肩を落とした。
「何か月影に用があったの? 桐生」
そんな桐生の様子を見て気になったのか、神崎が桐生に聞いた。
「いや、俺は単に昨日の事で月影が何か関わっているんじゃ無いかと思って今日、直接本人に会って聞きたかったんだ」
「そういえばあの時、桐生さんを助ける際に何か持っていましたね……」
「そう、それだ。あれがなんなのか気になるんだ。そもそもだが、なぜ月影がそんな変な物を持っているのか。それと……」
そこから先を何か言おうとして口ごもる桐生。
月影のやつ、見知らぬ誰かも分からない奴とは言え、あんな躊躇無く撃ったんだ。今までも同じ様な事をしていると思うんだよな……。
「どうしたのよ、桐生」
「桐生さん、何か思い悩みでも……?」
「いや、大した事じゃないんだ。それよりも早く飯を食わねぇと昼食の時間が終わって食べれなくなるぞ!!」
そう言いながら桐生は、手元の弁当のご飯にがっついた。
「はい、大丈夫です。今回の“敵”も全て排除しました。ーー引き続き、任務を遂行します。」