プロローグ
此の度、「そして ハジマル 物語」を書かせて頂きますvlinder-蝶-です。
この物語は主人公:桐生叶弥の過去と現在、そして未来を舞台としたお話です。
今回のを読んで「面白そうだな」と思いましたら、今後とも宜しくお願い致します。
響き渡る断末魔。崩壊した家々、荒れた地面。
ここは戦場だ。今にも泣きそうな黒い雲に覆われ、真っ赤に染まった夕暮れの空がそれを更に強調させる。そんな中ただ一人、走る男の姿があった。
ーーまだだ! まだ間に合うはずだ!! 俺は走りながらそう願った。願うしか無かった。少しでも遅れたなら間違いなくずっと後悔をする事になるだろう。だから俺はアイツの居る場所に向かって息を切らしながらも、必死で走っていた。
しかし、目的の場所を目前とした時、“それ”は聞こえてしまった。ーー鳴り響く銃声。その場所へ辿り着くにはもう遅かった。俺は銃声が聞こえた場所まで“最悪な事態を避けたい”一心で走った。それと同時に、拳銃を持っている右手の力が無意識のうちに強くなっていた。
やっとの思いで目的地に着いた俺が、最初に目にしたものはあまりにも綺麗で、悲しい光景だった。
まるで、深紅の花が満開に咲いたかのように思わせる程の血を地面に飛び散らせ、左胸を真っ赤に染めたアイツがその場に倒れていた。
俺はすぐに近づこうとしたが、殺気を感じ取り、俺は右手に持っていた拳銃で物陰に隠れていた“的”と呼ばれる敵を撃った。
警戒しながら近付き、倒した事を確認すると俺は、倒れたアイツの近くに小走りで行き、声を掛けた。その言葉に対して返ってきた返事は、俺の心を引き裂くあまりにも残酷な答えだった。
「ドジったなぁ。この感じだと、もう私は長くは持たないと思う。だけど、叶弥はこのまま私を気にせずに、目的の為に頑張って。それが、今の貴方が成すべき事だから」
「馬鹿な事を言うな! 今、誰か一人でも失えば俺は、絶対に後悔をする事になる。だから俺はお前を置いて先には進めねぇよ!」
「こんな時でもワガママなんだね。叶弥らしいけど。でも、貴方はやらなければならない。更なる後悔をしない為にも、みんなの為にも。頑張って……」
その言葉を最後に、体を揺すったり呼び掛けたりしても、一切反応がなかった。次第に体温が冷たくなってきたのが分かった。全く動かない。まるで糸が切れた人形のようだ。
ーーあぁ、そうか。これが“死”というやつなのかーーーー。
“間に合わなかった” 目の前で起きている事実を認めたくない。
“もう少し、もう少しだった” 段々と込み上げてくる自分への怒り。
“どうしてこんな事になったんだ” どれだけ後悔をしても、もう二度と声は聞けない。
俺達の元にアイツは、もう二度と戻ってこない。
「ちっくしぉぉおおッ!!」
あの時。俺が正しい選択肢を選んでいたなら。
“ーーーーお前を守れたのかもしれない”