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Story-11 『ある二人の兄弟のお話』


 ある所に、二人の兄弟がおりました。

 二人は大層仲が悪く、幼い時からいつも喧嘩をして張り合っておりました。


 二人の仕事は、兄は住職、弟は医者でした。弟は死人ばかりを相手にする兄をいつも嘲笑ってっておりました。


 ある時、二人の父親が死に、多額の保険金が下りました。


 すると二人はお金を巡って喧嘩を始めました。


「お前は医者なのだから、お金が沢山入るだろう?」兄が言いました。

「そんなの偏見だ。そっちこそお布施で沢山入るじゃないか」弟が言いました。


 それを見かねた母親が言いました。


「二人の内、今月の収入の少ない方に重点的にお金を渡します」


 それを聞いた二人は、その日から仕事を真面目には取り組まなくなりました。収入を少しでも減らそうとしていたのです。


 兄の方はその月のお布施が一定を大きく超える事はありませんでした。亡くなった人があまりいなかったので、収入が変わらなかったのです。


 それに対抗して弟も収入を大きく減らそうと躍起になっていました。


 弟の働く病院は受け持った患者が多ければ多い程収入が増えるという特殊な仕組みでした。


 ならばと、弟は出勤回数を減らそうと考えました。


 しかしそれでも、運ばれてくる患者は後を絶ちませんでした。


 弟は仕方なく治療していましたが、それに比例して次々と収入が増えていきます。


 このままでは金が手に入らないと考えた弟は欠勤を考えました。そうしてまで減った収入よりも保険金の方が多額だったからです。


 それを実行に移そうとしていた矢先、弟は一人の小さな子供に出会いました。それは事故で運ばれてきて、弟が治療した患者でした。


 小さな子供は拙い言葉遣いで弟に感謝を述べました。


 それを受けた弟は、考えた末、欠勤を取りやめました。


 そしてその月が経過し、結果、弟がお金を受け取ったのです。


 お金を受け取った兄に対して、弟は言いました。


「医者が見捨てた物は坊主の物とはこの事だな」


 兄はその言葉に大層憤りを顕にしながらも、結局は受け取って帰りました。


 数日後、弟は兄に呼ばれてとある葬儀に出席しました。


 弟が兄の居る寺を訪れると、その寺の本堂は以前よりも豪華になっておりました。


 葬儀を終えた兄に弟は言いました。


「受け取った金でこんな豪華な物を買っていたのか」


 そんな所に、葬儀を受けた遺族が兄の元へとやってきました。


「こんな豪華な葬式にしていただいて、ありがとうございます」


 それを聞いていた弟に、兄は言いました。


「お前は自分の力で人を救うが、俺は金の力で人を救うんだ」


 その言葉に、弟は口を閉ざしました。




                               END

かなり前の作品ですね。

ちょっと、掘り起こしてみました(笑)

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