明日天気になあれ
てるてる坊主、照る坊主。明日天気にしておくれ……あの子の笑顔が見られるように。
※保育園生シリーズ第二段!今回は「雨」をテーマに考えてみました!
その日は朝から雨が降っていた。
ザアーザアーと降る雨は鬱陶しくて、煩くて。
沈んだ気分を無視するように俺は本を読んでいた。
「おはよーございます!!」
出入り口の方からハルトの声が聞こえて顔を上げる。
「おす。おはよう春都(jb2291)。」
「はーくんせんせー!おはよーございましゅ♪」
本棚からひょこっと顔を出すと、同胞(jb1801)先生に頭を撫でられて
嬉しそうに笑っているハルトがいた。
(…なんだろ、あれ)
ハルトが黄色いコートのようなものを着ている。
だが、コートを着るには季節違いもいいところだ。
じーっと見ていると、ふいにハルトと目があった。
顔を引っ込めようとしたが、それは叶わなかった。
「ひょーがくん! おはよー!!」
ハルトが俺の名前を大声で呼んだからだ。
必然的に同胞先生の目も俺に向いて…………ふっと笑われた。
………無性にむかついたのは気のせいじゃない、はずだ。
「なんだ、神風(jb2823)。 そんな所で見てないでこっちに来ればいい」
手招きする同胞先生。
だが、なかなか動かない俺を見て苦笑した。
「来ないのか? せっかく可愛いカッパ姿の春都を見れるのに……」
なぁ?と言ってまたハルトの頭を撫でる同胞先生。
「かわいい?!ほんと?!」
「ああ。」
「…えへへ~♪」
褒められて嬉しそうに笑う。
……ちょっと面白くなくて、渋々立ち上がり近くに行く。
「お。やっと来たか。んじゃ、先生は行くからあとは頼んだぞ~」
「はーい!」
「……」
同胞先生は俺にハルトを任せると、奥に行った。
……そして雨で外で遊べない男の子たちの鬱憤晴らしの餌食となっている。
合掌。
「? なんで、てをあわせてりゅの?」
「なんでも、ない。………ハルト」
「うん? なあに?」
「なぜ、コート、着る?」
「コート?」
「それ」
着ている黄色いコートを指差す。
「ああ! これ! これはかっぱさん♪」
「か、ぱ?」
「えっと……れいん、こーと?」
「……ああ」
とっても片言な英語だったが、なんとなく理解できた。
「あたらしーの、かってもらったのー!」
「よかった、な」
「うん!」
「おーい、二人とも~いつまでも入り口にいないでさっさと中に入れ~」
「はーい!」
男の子達のプロレスごっこで技を多方面からかけられても、
笑顔でいる同胞先生に注意された。
「ハルト、なに、する?」
「うーん……おえかき!!」
「わかった」
「ひょーがくんは?」
「…ほん、よむ」
「わかったー♪」
こういう雨の日、ハルトといて助かるのはハルトが「おままごと」とかが
好きじゃないことだ。
周りを見ると結構女の子たちは「おままごと」をしているが、
ハルトは混ざらない。今みたいに絵を描くか、絵本を読むか。
時々ばば抜きをする。
…正直、「おままごと」が苦手な俺にはとっても助かっている。
「みんなー、いいかー?明日は晴れたら公園に行くからなー!」
突然同胞先生が大きな声で何を言うかと思えば……公園?
「こーえん?! いくの?!」
「ああ、いくぞ~」
「せんせっ、せんせっ! “あの”こーえん?!」
「そうだぞ~」
「せんせー! すいとーはかるぴすいいー?」
「あははは~。だめにきまってるだろう?」
「……ちっ」
「おいこら、舌打するな」
「「「「ちっ」」」」
「……さ~て、誰だ舌打したやつはー!!!!」
「「「「ぎゃー!!!!」」」」
逃げる保育園児を黒いオーラを撒き散らしながら追いかける同胞先生。
しかし、ハルトは微動だにせずに目をきらきらさせていた。
「ひょーがくん! ひょーがくん!! こーえんだって!!」
「こ、えん?」
「こ、う、え、ん!」
「…こう、えん」
「そう! あのね、すべりだいとか、ぶらんことか!
とってもたのしーばしょなの!!」
……よく分らない単語が沢山出てきたぞ。
でも、楽しいっていうのとどこかに行くって事は判った。
…あと、ハルトがすっごく楽しみにしてるってことも。
でも、確か明日の天気予報は。
「あした、あめ」
「え?」
「てんき、よほう。あした、あめ」
「え……ええええ!!!! ほんと!?」
「うん」
明日は降水確率が70パーセントって言ってたはずだ。
それをハルトに伝えると……すっごく落ち込んでいた。
……なんだか罪悪感が湧き上がってきて、声をかけようとしたら。
「よし! つくろう!!」
「え?」
思いっきり顔を上げて、何かを取りに行ってしまった。
作る? 何を?
首をかしげて待つ俺の所にハルトはたくさんの紙と
ペンと紐を持ってきた。
「なに、する?」
「てりゅてりゅぼーずさんをつくりゅの!!」
えっと……ハルトの「りゅ」は「る」だから。
“てるてる坊主”か。
「なんで?」
「んっとね。あしたはれてほしーから!!」
「つくる、そしたら、あした、晴れる?」
「んっと、んっと……もしかして、ひょーがくん。
てりゅてりゅぼーずさん、はじめて?」
こくん、と頷くと。
ハルトは一生懸命自分の中の言葉で説明をしてくれた。
「あした、はれてほしいときにね、てりゅてりゅぼーずさんを
つくって、はれますようにっておねがいすりゅの。
それで、はれたらすずをつけてあげて。
あめだったら、おくびをちょんぎっちゃうの。」
「ちょん、ぎる?」
「おくびをきりゅの」
……なんか怖い言葉がハルトの口から出てきた。
でも、なるほど。おまじないの類か。
「そう……」
「うん!!」
そう言っててるてる坊主とやらを作り始める。
俺も真似して作り始める。
「お。てるてる坊主か」
「はーくんせんせー!!」
作っていると同胞先生が様子を見に来た。
「明日晴れるようにか?」
「うん! それでこーえんにいけますようにって」
「そうかそうか。春都は公園好きだもんな」
「うん!」
そんなに好きなのか。と、黙々と紙を丸めて包んでを繰り返していると。
「はれたら、こーえんでたくさん、ひょーがくんとあそぶの!!」
…………俺、と?
「いっしょにおててつないで、こーえんいって。
たくさんいろんなものであそんで。
おててつないでかえってくりゅの。
ぜったい、ぜったいたのしーとおもうの!!」
なんて、すっごい笑顔で言うから。
照れくさくなって、むすっとした表情で俺はてるてる坊主を作っていった。
「あした、はれりゅといーね!」
「……そう、だね」
そう言って二人で窓際に吊るされたてるてる坊主を見上げていた。
(明日は晴れますように…そして、君の笑顔がみれますように)
お、落ちが付かなくなって不時着……。
同胞さん、出演感謝です!!ありがとうございます!