初めての友達
「もしも…豹牙が過去に日本に滞在していて、保育園で春都と出会っていたら…過ごしたら」というパラレルです。
一話完結式です。
※もしも豹牙と春都が幼少時に会っていたら。という「もしも話」です。
「みんなに新しいお友達を紹介するよー」
俺の背中に手を添えている女の先生が、部屋で遊んでいた子供たちに呼びかけた。
子供達の目が先生から、俺に向けられる。
それは友達が増えることへの期待よりも……俺の外見への好奇心の目だった。
俺は……日本人ではない。
銀色の髪に緑の目。あと、日本の子供よりも少しだけ高い身長。
それのすべてが子供達の興味を惹いている。
……正直、うんざりだ。
父さんの仕事の関係で、日本に来たのはいいものの……。
言葉なんて聞き取れるけど、まだちゃんと話せないし。
この外見についてよく聞かれるし、変とか言われるし。
あげくには仲間はずれにされたり、ケンか売られたりするし・・・。
それが理由で保育園を3つも変えた。ここが4つ目。
母も父も「ここで最後だから」と、必死に言ってくるので仕方なく来た。
……どうせ、ここも同じだ。他と変わるもんか。
「神風豹牙(jb2823)くん。みんな、仲良くしてね~!」
『はーい!!』
元気よく返事をする子供たち。
俺は「どうせ最初だけだろ」と心の中で呟いた。
それからはやっぱり他のところと変わらなかった。
髪や目のことについて何度も聞かれ、上手くしゃべれないと大げさに驚いて、
からかってきたり、眉をしかめて離れていったり……。
あっという間に俺は一人になった。
(今回は結構早かったな)
なんて、諦めて……もう俺は保育園に行く事は無い……そう、思っていた。
「あいつ」が話しかけてくるまでは。
クイックイッ……
「?」
後ろから急に服の袖を引かれたので振り向くと、
俺より2つ下ぐらいの4歳の女の子がいた。
「……なに?」
また、質問しに来たのだろうか?聞いてなかったやつがまだいたのか……。
なんて思ってちょっとぶっきらぼうに言うと、女の子は気にした風でもなく、
柔らかく微笑んで。
「わたし、はりゅと(はると)ってゆーの。よろしくね!」
自己紹介をして右手を差し出してきた。
予想外の行動に俺の頭は止まった。
とりあえず……なにが起こった?
女の子が袖を引っ張った。
なんの用かと聞いた。
女の子が笑った。
女の子が「ハルト」と名乗った。
(おそらく「る」が言えなくて「りゅ」になったのだろう)
女の子……ハルト(jb2291)が手を出してきた。
これは……握手、だよな。どう考えても。
なんで? どうせ後になって俺を仲間はずれにするくせに。
「……これ、なに?」
「? あくしゅ。おともだちになりたいから」
差し出された手を指差すと、女の子は当然と言った顔で答えた。
「……おれ、と?」
「うん!かみかじぇくんと!」
「…………なん、で?」
分らなかった。質問するでもなく、ケンカを売りに来たのでもない。
純粋に俺に友達になろうと言ってきた意味が。
「だって……かみかじぇくんとあそびたいから!!」
にこにこと笑う女の子。
遊びたい?俺と?
「……おれの、かみ。へん、言わない?」
恐る恐る聞くと、女の子はキョトンとして。
「なんで、へん、なの? すっごくきれーなのに!」
逆に分らない、って顔された。
「きれ、い?」
「うん! おつきしゃまみたいにキラキラで。
ほーせきみたいにきれーなめだよ!」
にこにこと笑って。
綺麗だと何度も言って。
言われたことなんて無い言葉を女の子は……ハルトは俺にくれた。
それだけで涙が出た。
「え……ええ!! ど、どーしたの?!
おにゃかいたい? けが、した?」
俺が突然泣き出したから、女の子……ハルトが慌てている。
「……ち、がう」
「え、えっと。じゃあ、おめめにごみ、はいった?」
「ちがう」
「え!? えっと。じゃあ」
「……ひょう、が」
「え?」
慌てているハルトがおかしくて、涙は流れてるけど、
俺は全然悲しくなかった。
「ひょうが。おれの、なまえ。」
「ひょーが、くん」
「うん。ひょーが、よんで」
「!!うん!」
俺が改めて自己紹介すると、ハルトは嬉しそうに笑った。
「よろしく、はると」
「よりょしく!ひょーがくん!!」
改めて俺はハルトの手を握って……友達になった。
(最後の場所。やっと見つけた希望の光)
(はると。「る」いえない?)
(? いえりゅよ!!」
((いえないんだ……))
ついやってしまった幼少時パラレル。
豹牙の過去は実際のものとは違います。
あくまで作者の想像と妄想です(ぁ