自滅
もう少し表現を細かく書けるセンスが欲しいね
身体を引き裂かれる感覚がした。ちぎれ吹き飛び、自分だった肉片が宙を舞う。
手も足も何もかも。胴に穴が空いて、有機の管が外気に触れ、有機のポンプは破裂して、有機のろ過機は地に落ちる。
脳しょうが汚く軌跡を描く。白の水晶が割れて、白の石が飛散する。黒味がちな紅が噴水のように上空で吹き荒れる。
無残にかき消される精神。自分という単なる物理現象が霧散していく。ゴミみたいに吐き捨てられる感覚がひどく心地良く感じられた。
それはとても、とても汚い風景だった。
「これが現実であれと何度も思い、これが全てであれと何度も思う。けれど、それと同じだけ自分はそれを否定した」
死ねたら、なんて事を何度も思い描いた。空想上のそれはひどく汚く、現実よりも現実的に感じられた。
自分の腕に視線を落とす。無数の傷跡が残ったそれは他人の気分を害するには十分なものだろう。
「くっ!」
刃物を突き立てる。何度も何度も何度も何度も何度も何度も……。
ピンクの物体が見える。ぶるっと身体が震える。
興奮作用のある物質が脳内を満たす。ダダ漏れになって、口から、耳から、目から流れてきそうだった。
「本当は」
突き刺した刃物で腕を抉る。大きな血管を切ったのか、ピュッと赤黒い液体が噴き出る。
「ほんとうは」
胃の中身がせり上がる。口を閉じて、それを呑みこむが、僅かに口の端を伝う。
今度は刃物を足に突き立てる。
「ホントウハ」
一瞬視界が暗転する。強い光の痕を見た気がした。
そこに全てがある気がした。
刃物を
「本当はもっともっともっと素晴らしい人生を送りたかった」
のど元に
「それが出来ない自分の矮小さに頭を割られる思いがした」
………………。
…………。
……。
…。
自分は刃物を喉元に突き立てる事が出来なかった。
どれだけの深手を負おうとも、最後の一撃を自らに向ける事が出来なかった。
それは、今回だけの事ではない。
どんな時にだってそうだ。どんなに自滅の方向に向かおうとも、最後の最後の、終わりの一歩を踏む事が出来なかった。
「その度に自分が嫌になり、また同じことを繰り返す」
ここから逃げる事が出来なかった。
いや、しようとしなかった。
結局、自分のしなければならない事も、したい事も分からなかった。誰も自分を見ようとしなかったし、自分もまた誰も見る事がなかった。
ただ自分に嘆き、苦しみ、傷つき、悲しむ。
汚い。
あぁ、自分はなんて、こんなに汚いんだろう。
自分は、そういう自分が好きなんじゃないのかと思う。