03:汝、悔い改めよ
少し臭った所から少し歩くと、小さく古ぼけた小屋が見えてきた。
ニオイはさらに強くなって軽くふらふらする。
「た、ぶんここだよ、すごく臭いがする」
「なるほど…罪人は中だな、すぐに殺ってくるから離れてろよ」
「ていうか『殺』で『や』って読まないでよ、キショいよ…」
「お前、さり気に俺をけなしてないか…?」
「ふーんだ」
「ま、無駄話は終わりにして、行くか」
少し真面目顔になるクレイ。
そして、固いドアを開けた。
「ご、ごめんくださぁい…」
まぁ、用心に越した事はない。
僕は陰から中を覗き見た。
すると、中には一人…女の人がいた。
髪は乱雑に広がり、目は眼球がない様に真っ暗な「闇」だった。
その人を見た瞬間、激しい頭痛が走り、意識が遠のく。
「お前は外に出てろ、すぐ終わる」
クレイがそう言い終わった直後、「ぐぎぃっ」と歪な音が響く。
中にいた女の人が首を曲げたのだ。体はそのまま180度。
「来るぞ!!」
女性、とはもう呼べない様な姿、爪が長く伸び、牙が生えている。
「それ」が入り口にいたクレイに向かって走ってくる。耳が痛くなる程の奇声を上げて。
真ん中に置いてあったテーブルに飛び乗り、勢いを一度つけてから
長い爪をクレイへと振り上げる。
その時、クレイも動いた。そして、同じく剣を振り上げる。
「!!」
そして、「それ」の動きが、止まった。
「!…?」
何が起きたか分からないという顔をしている。
そして、答えはクレイの口から話される。
「俺の剣は切った場所にグレールの力を及ばせない様にするが出来る。腕と足はもうお前の力で動かせない。グレールを滅する前に女よ真実をその口によって言葉として示せ」
いつもよりも低い声で呟いた。静かに剣を鞘にしまう。
そして彼女は奇声はもうあげておらず、その瞳には光が宿っていた。
「ワタ、シハ…我ガ子ヲ殺しテ…あァ、夫二捨テられ、惨メで、子供ガ煩くテ…我慢が」
これは女の人の懺悔だ。
その女の人に何が起き、どうしてこうなったのか僕らは知る。
「そう、か」
一瞬、悲しそうな顔をしたのは僕の気のせいか。
そしてその刹那、彼女の声が低く、醜くなる。
「グレールの声!?」
「別にいいじゃあねぇか、辛いコトなんて無い方がいいに決まってんだろぉ?
その原因を消してなにが悪い?悪を殺してなにが悪いっていうんだよぉおお?」
クレイがキレた。
「人の命奪っといてなにが悪い?だと、自分のために人を殺して開き直ってんじゃねぇええ!!!」
再び剣を鞘から抜き、振りかざす。
「汝悔い改めよ!」
剣が彼女を通り抜け、彼女は崩れ落ちた。