01:よろしく
僕の家族はグレールにとりつかれた『罪人』に殺された。
あの頃はたしか七歳の時。
遊びに行って帰ってきた時にはもう、血の海だった。
だから・・・僕はグレールを追うものになったんだ。
* * *
あれから八年が経ち、僕、フィル・レトワールはグレールを倒すために集まった集団、
『狼』の一員となった。が、いいものの、パートナーがいない。
このグループでは主に、二人一組で行動する。
僕はグレールにとりつかれた人の匂いが分かる『追跡者』。
パートナーは罰を与え、グレールを清める『執行者』のはずなんだけど・・・。
僕の元には一向に来ない。
あー、もうっ!!とヒステリックな叫び声を出しながら机に八つ当たりする。
叩きすぎて手のひらがジンジンする・・。
涙目を擦っていると、このグループのリーダー、ガルディア・オーデンスさんがやって来た。
「おう、フィル。いい知らせがあるぞ」
「え、なんですか?」
手を腰にあていばったポーズをする。
「お前のパートナーが決まったんだ」
「え、やったぁ!どんな人?ねぇ、どんな人なんですか!?」
「おいおい、落ち着けよ。そうだな、自分で確かめればいい」
「失礼します・・・」
「え、?」
見知らぬ声がした方をとっさに見ると、そこには僕と同い年位の男の人が立っていた。
そして、なぜかぶっちょう面。
「おう!入れ、入れ!フィル、コイツがお前のパートナーだ!」
「クレイ・リターナだ」
ぶっきらぼう回答だった。
黒く艶やかなその長髪も、切れ長の目も、独特の雰囲気を出していた。
「僕、フィル・レトワールっていうんだ。よろしく!」
自分では満点クラスの笑顔を浮かべ、手を差し出した。
「・・・・」
あ、あれ?無視?
そう思い、出していた手を降ろそうとした直後、クレイが手を差し出す。
「よ、よろしく・・・」
「あ、うん」
そうして握手を交わした。
「さて、顔合わせも済んだ事だし、さっそく任務についてくれ、
南のフェルディアで罪人が発見されたんだ。」
「分かりました。いいよね、クレイ君?」
「あぁ、あと君付けはやめてくれないか?呼び捨てでいい」
「分かった、それじゃあ行ってきます!」
「おう!気をつけろよ~」
オーデンスさんの声を背に部屋を出た。
「あ、さっきの話なんだけど、僕の事もフィルって呼んで」
「おう」
クレイって見た目なんとなくキツイけど話してみるとそうでもないのかもね。
それにさっきの反応は・・・。
「ねぇ、クレイってさ、ツンデレ?」
「はぁ!?お前、何言ってんだよ!?」
「え、いや、なんとなく・・・だよ!」
「なんだそりゃ・・・お前っておかしいしい位素直、つーか、おかしい」
「ユーアー、クレイジー!?ちょっと酷くない!?」
「まぁ、どうでもいいだろ。んじゃ、準備したらここで待ち合わせな」
「ちょっとぉ!主導権握んないでよぉ!僕、先輩だぞ!」
「同い年じゃねぇかよ」
「そーゆー意味違うっ!!」
こうして任務に行く前にグダグダになってしまった僕達(僕だけでした)は初仕事に向かったんだ。
ここでの単語(?)説明です。
・グレール→魔物の名称
・罪人→グレール(魔物)にとりつかれた人の名称
・追跡者→グレールを追う者
・執行者→グレールを滅する者
・先見者→発症前の罪人を見つけられる者
こんな感じです。よくわからんと思いますが、がんばってください。