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第四章 奥羽編その1 甲州破れて

 慶応四年二月、土方は江戸に到着すると同時に新撰組の再編成に向けて動くつもりであった。それが実現しなかったのは、近藤が既に別の動きを始めていたからである。

「甲陽鎮撫隊?」

「ああ。甲府城を押さえて、連中が江戸へ進んでくるのを食い止める」

 広げた地図をトンと指でつつきながら近藤。どうやら彼が江戸に呼び出されていたのはこのためだったらしい。確かに甲府は東西の交通の要衝である。ここを突破されると街道で江戸まで真っ直ぐだ。なるほど戦略的に防衛拠点とする価値がある。

「それはいいが……だったら京都で言えば良いのにな」

 新撰組が京都から直接甲府へ向かえば、あんな空振りの戦などせず、今頃甲府城を押さえられていたかもしれないではないか。幕府のお偉方はまだ、まだ自分たちが特別偉いと勘違いしているようだ。

「そう怒るな」近藤が苦笑いなのは、彼もそう思ったからなのだろうか。

「東海道は?」

 山を抜ける甲州街道や中山道よりも。海沿いで平坦な東海道の方が新政府軍も進軍しやすいだろう。というのは当然の考えであった。

「駿府や小田原に諸藩が控えている、大井川もあるしな。

 しかし凄いとは思わないかトシ」

「凄い?……何が?」

 この状態で何を褒めるのか。片眉を吊り上げる土方の前で、近藤は我が事のようにはしゃいでいる。

「東海道に信用できる直臣を配置し、大井川に川をかけずに進軍を遅らせる。そうして反乱や敵の侵攻を遅らせる。この発想は、家康公がなされたらしい。考えられるか?二百五十年前に考えた仕組みが、今役に立とうとしているんだ、恐ろしいほどの先見の明ではないか?」

「ああ……確かにな」

 日本全体の勢力配置が、江戸を中心とした要塞として機能しているのだ。東海道程露骨ではないが、他の大きな街道も、要所にいくつも城があり、直臣や身内の藩が並んでいる。

 なるほど、戦に勝つことよりも、何が起きても如何に負けずに長期間支配体制を維持することに重きを置いた、超長期的な戦略は常人の発想を凌駕している。喧嘩屋の土方には文句のつけようもない素晴らしい戦略なのだろう。

 もしも家康がそれほどの天才であったなら、ついでに子孫に一言「家臣を大事にしろ、裏切るな」と伝えておいて欲しかったものである。徳川家康も家臣を盾にして逃げたことはあっただろうが、逃がすために家臣が残って時間を稼いだのと、何も言わずに逃げるのとでは天地の差がある。

「結構な話だ。

 で、その部隊?いいんじゃないか……どれくらい集まってるんだ?訓練は?武器は?」

 すると近藤はからりと笑ってみせた。

「まだまだ足りん。お前が江戸に来てくれて助かった、これで百人力だ」

「あんたって人は……」

 土方は額を抑えて天を仰いだ。遊んでいたわけではないのはわかる。近藤は本当に、こういう仕事が向かない性分なのだ。まあいいさ、次は新政府相手に甲府で喧嘩してやろうじゃないか。

 軍の編成というものは果てしない。集めた人間の配備、訓練、命令系統の構築。寝泊まりする場所、食料に武器弾薬、目立つものだけでもこれらを短期間で手配しなければならないし、部隊内の規律も守らせねばならない。もちろん自分一人で全てが回る訳ではないが、部分的な仕事を任せられる人間を見つけて、それぞれにその都度仕事を振り分け、線引きするというのも、それはそれで大変なのだ。

「鉄がいればな」

 かつての土方は新選組でそれらの仕事をこなすとき、鉄之助が大いに役立っていた。単純だが素直で時に大胆なあの少年は、意外とこういう細かい事が上手かった。それでも忙しいときは寝る暇も無かったのだが……今思えばその日々は楽しかった。無限に走れる気がした。

「いかんな、頭が妙な方向ばかりに回る」

 それを楽しいと思えたのは、それが全て近藤の立身出世に繋がっていたからだ。そうさせるのが面白くて仕方なかったからだ。だが今はどうだろう、仕事は回っているが、面白いとは思えなくなっていた。

 はたして徳川家、もっと言えば慶喜は、近藤とその率いる甲陽鎮撫隊の忠義を受け止めるだろうか?報いろとまでは言わないし、現状を鑑みれば莫大な報償をよこせとも言えない。既にそれ以下の「何もせず見捨てて逃走」をかました男に対して、忠義を尽くす意味があるのだろうか?

「きっと将軍様には何かお考えがあったのだ。だからこうして、江戸への通り道で防御する計画が進んでいるのだ。そうだろう?」

 いつもは頼もしい筈の近藤の楽観視が、この時ばかりはやけに無神経に感じてしまう。それが顔に出ていたのだろう、更に近藤は、

「そう根に持つな、我ら武士の忠義は徳川に捧げる為のものさ、腹を決めようじゃないか」とこうだ。

 そう、近藤の説得は「同じことを大声で繰り返す」ことなのだ。意思がない、あるいは固まっていない連中には効果的だが、考えの違う相手の説得には向かない。これはかつて土方自身が伊東へ語った近藤評である。あの頃との大きな違いは、それからほんの三か月で、自分がそうなってしまったことだ。

 近藤には……いや、大阪城にいなかった者には分からないだろう。城を枕に討死する覚悟さえあったのに、それを無下にされた者の辛さを。たとえそれが高度な政治的判断であったとしても、忠義に悪影響を及ぼさないわけが無い。

 結局、甲陽鎮撫隊の結成と出撃は当初の見通しよりも大幅に遅くなった。かつて土方を衝き動かしていた巨大な情熱はもうない。情熱を失った仕事としては当然の帰結であったが、それでも近藤がやっていたよりは遥かに速かった。

「幕府に……俺たちが仕える価値があるのかい?」

 一人そう呟くと、腰の和泉守兼定が、今までより何倍も重く感じた。この刀が誰の為に何を斬るのか、今の自分には答えられそうにない。


 心に迷いがあったから。

 装備に圧倒的差があるから。

 兵力に十倍以上の差があったから。

 戦術が古かったから。

 既に甲府城が新政府側に寝返っていたから。

 逆賊であったから。

 理由はいくらでもあるし、恐らくすべて正しいのだろう。結果として甲陽鎮撫隊は勝沼で惨敗を喫し、彼らは命からがら退却、土方と近藤は江戸の郊外へ潜伏した。

「ここは……調練で使った空地か?」

「そう、その近くの倉庫街だ」

 ここは江戸の物流拠点の一つである品川の港町、その倉庫の一つである。幕府の武器や軍需品の倉庫も並んでいた。甲陽鎮撫隊の軍需品は、この一帯の関係者から秘密裏に横流しさせたものであった。三倍急がせた武器調達には口止め含め相場の十倍の値段を吹っ掛けられたが、おかげでこうして匿ってもらう程度の信頼を築けていたことは思わぬ収穫であった。

「倉庫街は働いてる人間以外はまるっきり用がない、静かにしていれば見つからないさ」

「見たところ、貧しい浪人や流れ者ばかりのようだな」

「そいつらだって敗残兵よりいくらかマシだろ」

「手厳しいな」

 近藤の溜息をかき消したのは、そこにずかずかと入ってきた二人組である。

「左之!新八!」

 デカくて派手な顔つきの方は原田左之助、元新撰組十番隊隊長にして一番の槍の使い手で、鎖帷子まで腕まくりする豪傑である。小さくて髭面のほうは永倉新八、元新撰組二番隊隊長にして、新撰組でも最強の呼び声高い剣客である。両名とも鳥羽伏見から土方とほとんど行動を共にしていたが、今回の潰走ではぐれていた。

「無事だったか、良かった」

「なんにも良くねえよ、なんだあのザマはよぉ!」

 体がでかければ声もデカいのか、左之助の怒鳴り声は倉庫街に響いた。

「声がでかいぞ左之、見つかりたいンか」

「おっと」

 永倉の台詞に、左之は口を塞ぐ。誰よりも単純明快な男であるが、それだけに怒りの熱量も桁が違う。何しろ口を押さえる手を通しても、何を言っているのかが聞き取れる。

「ありゃあねえぜ、あの役立たずどもはなんなんだ!」

「そうは言うがな左之……」

 必死にかき集めた二百人であったが、文字通り烏合の衆の寄せ集めでは、かつての新撰組の練度には遠く及ばない。しかも相手は新兵器とあっては無理もない。

「そういうことじゃねえよ!確かにやべえ武器だよあいつらは!でもな、切り込む隙はあった、一回や二回じゃねえ!俺たちが切り込んで、そこに二百人が続けば、連中に一泡吹かせた筈だ!連中の防具見たろ?布の服だぞ?近接に持ち込めば勝機はあった!」

 あまりに無謀、戦術と呼ぶことも憚られる無茶苦茶を言う左之に、さすがの近藤も声が大きくなる。

「それはあまりに無茶だ、お前は二百人に死ねと言うのか?」

「俺じゃない!死ねと命令するのはアンタたちだ!アンタらはずっとそう言ってたろ、新選組に!死番だの士道不覚悟で切腹だの無茶言ってたじゃないか!だから新選組は強かったんだ!一人一人は大差ねえよ!腹が決まってるかどうかだろ!違うか?

 それがなんだ!すたこら逃げちまいやがって!あんたらどうしちまったんだよ!土方のダンナ、いつものアンタなら近藤さんが引き上げるっつってももう少しだ、もう少しだって粘るじゃねえか、有利なら徹底的に叩くし、不利ならギリギリまで殿務めてくれるじゃねえか!」

 一気にまくし立てた左之であったが、一呼吸つくと一転、涙ぐんで歯を食いしばった。

「……それがなんだよ。とにかく近藤さんを逃がせだぁ?あんなに焦って……どうしちまったんだ?本当に、あんた鬼の副長なのか?」

 固く握った拳が震え、滂沱の涙を流している。この男にとっても、かつての新選組は眩しい青春であったのだ。

「黙ンな左之……人が来る」

 永倉が低い声で左之を制止した。

「左之は怒りっぽいが優し過ぎる。だからはっきり言えねンだ……変わりに言ってやる。土方さん、あんた日和ったね?弱くなったね?腕じゃない、心の話だ」

「………ッ!!」

 無意識に目を逸らしていたことに切り込まれて言葉を失う土方に、永倉は大きくため息を吐いた。

「確かに甲陽鎮撫隊は烏合の衆さ、でもそれは新選組の大半もおンなじさ。その木偶の坊たちを、近藤さんが大言壮語かまして上から引っ張り上げて、土方さんが下から殺すと脅してカチ上げて、そうやってギリギリ戦って来たじゃないか。

 近藤さんは変わってねえよ、いつも通りなンも考えずに綺麗事並べてる、それでいいンだ、そこがいいンだ。

 だが土方さん、あんたは違った。怖気づくやつを受け入れて、挙句の果てに脱走する奴まで見逃してた。これじゃダメだ、上下で一個なのにかたっぽが壊れてる。新選組は誠の魂が壊れちまった」

「……勝ち目のない戦で、無駄に兵力を減らしてなにになる」

 辛うじて食い下がる土方に、永倉は眉一つ動かさずに返す。

「それだよ、そういうときあンたはさ「武士として死ね、討死は誉れだ」って言ってくれたじゃないか。その無茶な理屈、俺は好きだったよ。それで自分を奮い立たせて、死番を全うした隊士が何人いたと思う?」

「ぐっ……」

「ほら、そういうとこだよ。俺たちが恐れた鬼の副長は、こんな事言われた日にゃ「上役に逆らい侮辱するは士道不覚悟、切腹を申し付ける」つて言うンだよ」

 間違いなく言っていた。理屈を通り越した直感がそれを確信している。永倉の言葉……というよりも過去の自分に打ちのめされて呆然とする土方。その背に手を置いたのは近藤であった。

「俺たちの誠の魂が壊れたのなら、また作り直せばいい。それをお前達二人が覚えているじゃないか。何度だっていいさ、もう一度誠の旗を掲げようじゃないか」

近藤の言葉は強く温かい。だが、土方が壊れた今、もう機能しないのだ。

「残念だがそれは無理な相談だ……時間がねンだ、壊れたモンを直すくらいなら、新しく作った方が速い……俺たちは、自分でどうにかする。将軍の裏切りが効いてるのは、あんた一人じゃねンだぜ。じゃあ抜けるぜ。どうする?切腹、申しつけるかい?」

 俯いて首を左右に振る土方。舌打ちすると踵を返して出ていく永倉。左之はほんの少しだけ逡巡してみせたが、やがて「世話になった……達者で」と一言残して出て行った。

 遠ざかる二人の背中を呆然と見つめて、土方は新選組の壊滅を悟ったのであった。


 土方は両掌で顔を覆って項垂れた。この男がここまで打ちのめされる姿を初めて目の当たりにした近藤は、しばらく何も言えなかった。

 足音が近づいてくる。勢いよく扉を開けると同時に、聞き覚えのある声がした。

「土方さん!近藤さん!ここですかッ?」

「鉄……なのか?」

「いたいた!探しましたよ!こんなところにいらしたんですねッ!」

「お前……どうして江戸に?」


 鳥羽伏見の戦いのあと、大阪城にではなく屯所へ戻った鉄之助は、沖田の看病をしていた。幸い戦闘に巻き込まれることはなかったのだが、京都が新政府の勢力下になると、土地を貸している西本願寺から立ち退き要請を受けた。西本願寺にしてみれば、新政府の怨敵である新撰組を匿っていると思われれば、自分自身が危ないのだから必死だ。

 鉄之助は奉行所と掛け合い、幕臣が乗る船に総司と僅かな身の回りの品を滑り込ませ、なんとか江戸へやってきていたのだ。


「よくやった、それでこそ俺の小姓だ」

「光栄です」

「総司の容体は?」

 鉄之助は眉をひそめて首を左右に振った。

「良くありません。日に日に痩せていきます……無理して船に乗ったのが不味かったのかもしれません」

「いや、駕籠や馬ではもっと体力を使うし、街道には新政府軍もいる。一番賢い選択だ。しかし、なぜここが判った?沖田のいる場所が近いのか?」

「沖田さんは江戸の外れの長屋に、幕臣として匿って貰っています。しばらくは安全でしょう。ここが判ったのは、噂があったんです、ここで新撰組が調練してるって。

 それに土方さんが不逞浪士を探すときは船着き場も念入りに捜査してました、隠れやすいし、逃げやすいって」

「そうか……そうだったな」

 その言葉に土方は胸がいっぱいであった。まだ自分が折れるのは早いかもしれない。

「それにしても運が良かったな、鉄。良く見つけられたもんだ」

「斎藤さんが教えてくれたんです、ここにいるって」

「斎藤が?近くにいるのか」

「はいッ、ちょっと目を離した隙にどこかへ行ってしまいましたが……探してきますか?」

「いや、あいつなら大丈夫だ」

 確信がある。あの男は、どんな戦場に放り込まれても、絶対に死なない。勝沼からの間に逸れたものとばかり思っていたが、どうやら奴も大概不死身らしい。

「では……沖田さんのところへお連れしましょうか?」

「総司か……」

 会いたくないと言えばウソになる。しかし……ちらりと近藤を見ると、近藤も首を左右に振った。

「やめておこう。俺たちが行って悪目立ちすれば、今度こそ命が危ない」

「では……どこへ?」

 薄汚い倉庫の天井を眺めることしばらく……一つの案が浮かぶ。さて、これが元鬼の副長に相応しい考えなのか、答え合わせと行こうじゃないか。

「鉄、幕府が風前の灯火なのは知ってるな?」

「ハイッ!」

「そういうことをあんまり元気よく返事するな、まあいい。

 つまり俺たちは……俺たちの忠義は行く先を失った。あるいは失いつつあるわけだ……では鉄よ、俺たちは次、何を目指すと思う?」

「国ですッ、自分たちの国です」

 鉄之助の即答。それは、土方の胸中の案と完全に一致していた。

「そうだよなぁ、そうなんだよな」

 仕える先が虚構であったなら、仕えさせる側に回ればいいだけの話ではないか。何を今までくよくよしていたのか、全くバカバカしい。

「近藤さん、幕臣はやめだ。もっと上を目指そう、大名どころじゃない。ここからは国獲りだ。幕府がねえなら、新政府から国をもぎ取ってやりゃあいいんだ」

 近藤は一瞬呆気にとられた顔をしていたが、やがてその大口を開けて豪快に笑った。

「国獲りか!それは気分がいい!久しぶりに気が晴れた、爽快な気分だ!一体どうするつもりだ?」

「暫くは幕臣……旧幕臣の顔して新政府と戦うさ。北へ行けば、まだ新政府に靡かない連中もいるだろう。どこかで名を挙げて……いずれ乗っ取る」

 本気である。この本気の力が、新撰組をごろつきから幕府直属にまでのし上げたのだ。一度できたことが、もう一度できないはずがない。心の底からそう思った。気が付くと土方は不敵に笑っていた。それは、かつて京の街を肩で風切って歩いていたころの表情であった。

 そこに斎藤が入ってきた。引きずってきた何かを放り出す、それは、縛り上げられて白目をむいた流れ者であった。

「お話がまとまったようで何より、早速ですが移動しましょう」

「何かあったか?」

「近くの連中がお二人の正体に気付いています。新政府に情報を売れば金になるとも。私が見かけた連中はこうして黙らせましたが、他にいないとも限らない。もうここは、安全ではありません」

 斎藤が姿を消した理由はこれだったか。

「わかった、行こう」

「ハイッ!」

 いつもと同じ威勢のいい返事をする鉄之助であったが、土方は少し考え込んで「お前は総司といてやってくれ」と告げた。

「……自分が、弱いからですか?」

 鉄之助は噛み締めた歯の隙間からそう漏らした。なるほど、油小路や大阪城に同行させなかったのを「弱いから」だと思っていたようだ。

「そうじゃない。お前も随分強くなった」

 鉄之助の入隊はおよそ四年前、そのころと比べればぐっと手足が伸び、見違えるように逞しくなった。いまだ少々小柄だが度胸もあり、単純だが、少なくとも愚かではない。立派な戦力になり得るだろう。しかし、彼には他の三人と違う大きな利点があった。

「新政府軍に顔と名前が知られていないのはお前だけなんだ……お前がいなくなったら、総司は本当に死んじまう。連れていくわけにもいかない、頼まれてくれるな?」

「……ハイッ」

 いつもの調子を取り戻したのか、力強い返事をした鉄之助は、一礼して真っ直ぐ帰っていった。

「……行きましょう、船が用意してあります」

「斎藤、お前そんなことまで?」

「いえ、手配したのは市村君です。土方さんが港町にいるなら、絶対に水運で逃げるはずだ、と」

「そうか……」

 なるほど、過去の自分は随分丹念に鉄之助に仕込んだようである。なかなか誇らしい。



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