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露出狂と全裸男

 散々裸体を見せつけられ、何とか愚息が反応しないよう抑えた後。


「さ、体を洗うわよ。」

「え?風呂あるのか?」


 まさかこんな辺境に風呂があるとは思わなかった。川で水浴びしてると思ってたよ。


「あるに決まってるじゃない。私のことなんだと思っているの?なに?臭うっていうの?乙女に対してそれはないんじゃないかしら。私相当傷ついたわ。この心の痛みは私が死ぬまで続くんでしょうね。ああ、かわいそうな私。これは貴方に責任を取ってもらわなきゃいけないわ。分かっているの?責任問題よ、責任問題。」


 何なんだコイツは…定期的にお経を読み上げる制約もあったのか。そうだよな、だって全知全能だぜ?才能あるやつがその才能を投げ出さないと無理なレベルのモンだろ。


「じゃ!風呂入ってくるわ!どこにあるか教えてくれ!」


 話をすり替えマジックする。こうでもしないと一生続くだろ、この般若心経。なに?南無阿弥陀仏じゃないって?スマンな日蓮宗じゃねえんだ。


「ついてきなさい。」


 そうして案内されたのは客間から三部屋ほど跨いだ一室の入り口。途中でローブを脱ぎながら案内されたのが少々気になったが、まあ気にしたら負けだろう。


「さ、入りなさい。」


 そうして手招きされるがまま中に入る。

 と、簡易的な脱衣所があった。宿でよくありそうな。


「脱ぎなさい。」

「おう。いや、おうじゃねえよ。出てけ。」

「は?なんで私が出ていかなきゃダメなの?」

「俺が服脱ぐからに決まってんだろ。」

「なんでよ、私は貴方と入るつもりでいたのだけれど。そもそも私は貴方に全裸を晒しているのだから貴方も私に全裸を見せるべきじゃないのかしら?違うっていうの?え?」


 それを言われてしまったらぐうの音も出ない。


「……分かったよ!脱げばいいんだろ!?脱げば!」

「最初からそうすれば良いのよ。」

「偉そうに…」

「偉いわよ。家主だもの。」


 ぐう。今回は出たな、ぐうの音。


 そこから程なくして、俺は全裸になった。下は隠してるけどね。

 分かるだろうか、この異常性が。

 恋仲でも、そういう関係でもない他人同然の男女二人が脱衣所で裸になっているのだ。おかしいよな。


「…下を隠すのが若干気に食わないところではあるけれど、今回は見逃してあげるわ。」

「アリガトウゴザイマス…」


 俺のメンタルはズタズタのボロ雑巾だZE(空元気)


「さ、入るわよ。」


 うーん、柔らかそうな尻だなあ。すっごい白い。すごい瑞々しい。


「…なに見惚れてんのよ、早くしなさい、背中洗い合うんだから。」

「はい…はい?」


 背中を洗い合う?ソレどこのラブコメ?


「なに?嫌だって言うの?ええ、知ってるわ、貴方が相当な奥手だということも、けれどそれはないんじゃないかしら、私だって乙女よ?傷つくのよ?分かるかしら、この痛み。」


 そうヘラりながら俺の手を掴み、胸に当ててくる。それ鼓動を確かめるときのじゃね?


「こんなことする奴が乙女なわけないだろ、せいぜい痴女だろお前。」

「っ!なんてことを言うのかしら、確かに乙女というのは嘘ね。けれど痴女というのは心外ね、確かに、確かに処女ではないわよ?けれどそれが何なのかしら、処女じゃない女なんてこの世にごまんといるわ、もしかして、貴方処女厨なの?だとしたらありえないんだけど、純潔の女の膜を破ることに快感を覚えているケダモノなの?ありえないわね、私というものがありながらそんな邪な感情を持っているなんて。まあそもそも貴方童貞でしょう?弱者男性とかいうものだものね、そりゃあ処女というものに夢を抱いてしまうのもわかるわ、けれどここに私がいるじゃない、裸の、それも食べごろの、いま手を出していないこと自体異常なのに、何?俺は処女でしか興奮できないからお前はムリ?ふざけるんじゃないわよ!だいたい貴方が──────」


 長いよ、ナニコレ、怪文書?お経と表現するには少し異質すぎるな、仏陀に袋叩きにされても文句言えないぞこれ。コレどちらかと言ったら長さ的にコーランだなコーラン。頑張れば五百ページくらいに出来そうだし。ムハンマドのターバンで絞め殺されなきゃいいけど。


「ステイステイ!俺は別に処女厨じゃねえし童貞でもねえよ!」

「は?貴方今なんて言ったかしら。もう一度言ってくれるかしら。」


 突然、とんでもないオーラを発しながら目元を暗くしてそんなことを聞いてくる。

 リーシャってあれかな、病気なのかな。情緒不安定病?安直すぎるか。


 俺は素直にリーシャに従い、先ほどの発言をリピートする。


「俺は別に処女厨じゃねえ!」

「そこじゃないわ。」

「え…?童貞じゃねえ…?」


 俺がそう言った途端にリーシャは右足を上げ、振り下ろす。

 轟音と共に床にはひびが入った。よく見たら抉れている。


 え?なんで?俺なんかやったか?非童貞アレルギーとか?

 っていうかちびりそうなんだけど、その白くてほっそい足のどこからそんなパワーが出るんだよ。


「──よ」


 わなわなと震えながら何かを言うリーシャ。


「え?」

「なんで私がいるのに童貞じゃないのよ。浮気かしら。」


 ウワキ?それは恋人間で言われる言葉じゃないのか?いつの間に俺たちはほぼ他人から恋仲の男女に格上げされたんだ、あとその理論だと非処女のお前も浮気した判定だぞ、バカ。


「ま、まあ!風呂入ろうぜ、そろそろ冷えてきたわ!」


 そうだよ、空気が冷たすぎるんだよ、風邪ひくぞ、っていうか凍え死ぬぞマジで。

 裸で凍え死んだ男。念なしでピエロの念を受けたのかな?


「…あとで詳しく聞いてあげるわ。」


 ヒエッ、何も悪いことしてないはずなのに罪悪感が…


「早く行きなさい、ぶち殺すわよ。」


 怖い、もうやだ帰りたいよ。なんで追放なんかしたんだよ、王女様ぁ…

 悲しいよ俺は、あんたの母性(むね)に惹かれたのに。


「ほかの女のことを考えるのをやめなさい。その下についている使用済みの棒を引きちぎられたいの?」


 俺の息子って今日で親離れするかもしんねえ。すまねえクラスのギャルの吉岡さん、あんたの誘い断ったきりだったよな。多分二度と受けれないよ。だって無くなるもんね。


「また考えたわよね、次はないわよ。」


 わあ!二回も見逃してくれるなんてなんて素敵な人なんだ!将来の旦那さんはさぞ苦労するだろうなあ!

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