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第40話 戦い終わって

 いざ森に入ろうとしたところでルー・ルーと鉢合わせになった。


「あれ? 終わったのか?」


「へへへへ、奥様だって~♪」


 何があったのか、よくわからんが、事無きを得た……のか?


 念のため魔力を探ってみると、……うん、ブエルら3体の魔力は健在だ。


 どうやらフォルネウスが上手く取り仕切ってくれたようだ。


 ほっ、と一安心。


 あとでフォルネウスには礼を言って、ブエルには詫びを入れないとな。


「お疲れ~」



 ここまできたついでに湖畔で休んでいたアリッサパーティに声を掛ける。


 しかし、返事はない。


 手を上げたり、黙礼したりと応えてはくれるが、みんな疲れ果てた様子。


「どうだった?」


 知っているけど聞いてみた。


「死にかけた」


 アリッサの率直な一言。


「いつも通りだな」


「なあ、この森には何体、魔王がいるんだい?」


「魔王はいない」


「聞き方が悪かったね。――魔王級の魔物は何体いるんだい?」


「余所で魔王を僭称できるレベルのやつなら53体だ」


「ごっ、53体?!」


「あと、別任務でここにいないやつと、ハクア大森林の防衛のために置いてきた奴らを合わせると全部で67体だな」


「――なぁ!」


「ああ、安心してくれ。お前らには手を出さないように言ってるから」


「植物みたいなドラゴンに襲われたんだが? あれもそうなんだろ?」


「森を焼いたからだ。使うな、っていたのにな」


 俺のお小言に、リッシュの肩がぴくぅんと揺れる。


「そういう注意事項はちゃんと伝えておいて貰わないと困るんだけどね?」


「火を使うな、と言っておいたはずだが?」


「あんな化け物が出てくるなんて聞いてないよ!」


「そりゃ言ってないからな」


「このっ……いけしゃあしゃあと!」


 殴りかかってきた拳をぱしぃんと掌で受け止める。


「今度からは余計と思ってもちゃんと言っといておくれよ! 頼むから!」


「善処する」


「本当にね!」


 アリッサは捕まえられていた拳を引き抜く。


「今日は解散!」


「あん? もう止めちまうのか?」


「あんな化物がいると知ってしまったからね。今のままじゃ不安だから、チェルシーの姐さんに何か見繕って貰うさ。それに……リッシュの玩具が壊れてしまっただろ?」


「ああ、そうだったな」


 リッシュを見る。

 体育座りで、しょぼーん、という擬音が、今にも聞こえてきそうな案配だ。


「色々時間が必要だからね」


「わかった」


 ヴリトラ島に向かうアリッサ、シャロン、タバサを見送ってから、改めてリッシュを見る。

 このことがトラウマになって「冒険者、辞めるっす!」とか言い出さないといいが……。


「旦那~」


 リッシュがよろよろと近づいてくる。

 むっ、嫌な予感。まさか本当に?


「パンツァー・ラビットを回収したいので手伝って欲しいっす」


「……え? ああ、うん、いいぞ」


 よかった。辞めるとか言い出さなくて。


「じゃあ、さっそく――」


 と、そのとき。

 森の奥から、ずぅん、ずぅん、と足音が近づいてきた。

 ハティが反射的に大盾を構え、リッシュが俺を盾にする。

 果てして森の奥から現れたのは……鮫面の巨魚人『フォルネウス』だった。


「おいっす!」


「おおっ、我が主よ! 拝謁賜り恐悦至極!」


 フォルネウスは片膝をつき、頭を垂れる。


「あれから見てないんだが、ブエルはどうなった?」


「森を燃やされたことと、人にやられたことに怒り心頭でしたが、炎を消し、彼女が『殿の奥方』だと伝えると、何やら納得して去って行きました」


「……なぜ?」


「殿は何かとデタラメですからな、その殿の奥方なら、なるほど人であってもデタラメであるのもやむなし、ならば戦うだけ阿呆を見る、と納得したようです」


「……??」


 いまいち腑に落ちないが、……まあいい。


「まあ何にせよ、助かった。ありがとう」


「なんのなんの、もったいなきお言葉。ブエルと奥方が争ったところで殿の不利益しかならぬと浅慮を働かせただけにございます」


「何にせよ、お手柄だ。ブエルたちには『申し訳なかった』とひと言、言づてを頼む」


「必ずや伝えましょう。――時に、これを」


「ん?」


 フォルネウスは居住まいを正し、背後に控えていたものを差し出した。

 献上品……ではない。ただのガラクタ? いや、これは――


「うちのパンツァー・ラビットっす」


 正確には、その残骸だがな。


「兎よ!」


 しゃしゃり出ようとしたリッシュを、フォルネウスはぎろりと睨めつけた。


「――ひぃ!」


 リッシュは慌てて俺の背中に隠れた。


「ゆめゆめ忘れるな、兎よ! 殿に拾われたお主の体は、すでにお主の物ではない! お主が死んで良いときは、殿が『死ね』と命じたときだけだ! そのときまで血の一滴、けの一本まで無駄にすることは許されぬ! 無謀で主命に背くなど言語道断! よいな!」


「――ひぃぃ!」


「よいな!」


「わっ、わかったっす!」


「ならばよし! ――では、殿、某は失礼つかまつる」


「ああ、ご苦労だった」


 フォルネウスは立ち上がり背を向け、……ようとしてリッシュをまた睨めつけた。


「二度はない」


「き、肝に銘じるっす!」


「主のため、その命、無駄にするな」


「りょ、了解っす!」


 なぜか直立で見事な軍隊式の敬礼をするリッシュ。

 それから俺に一礼してフォルネウスは森に帰っていった。


「さて、倉庫に行くか」


「よろしく頼むっす」


 イービルアイに伝令を頼み、ハイオークを呼び寄せる。


「しかし、派手にやられたな……どうすんだ、こいつ?」


「もちろん、修理するっす」


「1から作り直した方が早くないか?」


「外装はまだしも内装はマキナさんの部品を使わせて貰っているので無駄にはできないっす」


「マキナさん? ……誰?」


 マキナ、マキナ……、

 確か倉庫に置いてある残骸の元となった種族の名前がそうだったような気が……。


「あ、あぅ……マキナっす」


「なぜ、敬称?」


「部品を使わせて貰っているから、……哀悼、っすかね?」


「まあ、好きに呼べばいい」


 折良く、森から3体のハイオークがやってきた。


「お前さんの工房でいいか?」


「お願いするっす」



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