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第33話 レベリング 1日目

 次の日からさっそくアリッサたちのレベリングが始まった。

 特にやることのない俺は、イービルアイに見晴らせているその映像を肴に、人食堂で揚げポテトとシュワシュワの飲み物片手に観戦と洒落込むことにした。


「う~む……」


 アリッサたちの遁走を見守りながら、温くなったシュワシュワを口に運ぶ。

 ……どうにも上手くない。

 もちろん、シュワシュワのことではない。アリッサたちのことだ。


「たっ、大変~! アリッサさんたち殺されちゃうよ~!」


 隣で見守っていたミミルが悲鳴に近い声を上げる。


「ここまで弱いとは……誤算だったな」


 アリッサたち4人に対して、ゴブリン12体編成小隊が相手では、当然、数では不利だが、所詮はゴブリン、生なかの冒険者でもなんとかなるだろう、と思っていたのだ。


 しかし、蓋を開けてみればアリッサたちは手も足も出ずに逃げまくる始末。

 ……まあうちのゴブリンは野良の10倍は強いからしょうがないのかもしれないが。

 それでもだ。――1体も倒せないってどういうこと?! 


「しかも、あいつ……オーガスーツ着てねぇな」


 少なくとも装備面ではゴブリンを圧倒している……いや、できるはずなのに。


「1回負けるのも勉強か? どうせ、処女じゃないし、ゴブリンに――」


「じ~っ」


「――なん?」


 何で「じ~っ」って口で言いながら俺を見てくるん? ミミルは。


「なんとかしてください!」


「う~む……」


 初日にいきなり敗北というのも幸先が悪いな。


「ちょっと出てくる」


「アリッサさんたちは?!」


「大丈夫だ」


 ――小一時間後。


「ただいま~、ってまだ見てたのか?」


「さっきまでお仕事してました。今は休憩中です」


「さよか」


 どれどれ、アリッサたちは……湖畔で休憩中か。

 おっ、また森の入るのか? 心なしか足取りが重いようだが。


「大丈夫ですかね? あたしも行った方がいいんじゃないですかね?」


「お前が行ったら全部倒せちまうだろうが」


「た、倒せちまいますかね?」


「倒せちまうな。……おっ、早速会敵だ」


 例によってゴブリン。しかし、今度のゴブリンは5体編成で、装備も腰ワラと石斧。さっきまで相手にしていたゴブリンと比べると原始人と文明人くらいの差がある。


 案の定、多少は苦戦しながらもゴブリン5体編成を倒す。、

 アリッサは首を傾げている。大方、降参しなかったのを訝しんでいるのだろう。

 当然だ。今倒したのはさっき俺が捕まえてきた野良のゴブリンなのだから。


 アリッサたちがどんなにへぼくても、野良で、少数なら退治できると思って、外で捕まえてきた魔物を森に放ってきたのだ。これでいくらかは強くなることができるだろう。


 続けざまにゴブリン、オーク、コボルトを計20匹ほど倒してこの日は終了。

 全部、俺が捕まえてきた奴だ。

 元から森にいた奴らには「アリッサたちを襲うな」と布令を出してある。


 アリッサたちは日が暮れる前に森から出るようだ。

 賢明だ。夜に活動する魔物の凶暴性は昼間の魔物の比ではないからな。


 ほどなくして人食堂にアリッサたちが現れる。


「お疲れ~」


「……ふぅ」


 俺の労いに、シャロンは無愛想に、タバサとアリアンは無邪気に返してくれたが、アリッサは何も言わずに席に着く。酷くお疲れのご様子だ。


「一番強い酒をくれ」


 ミミルが持ってきたのを受け取り、アリッサのグラスに注いでやる。


「お疲れだな」


「逃げ疲れさ。何の誉れもない」


 一気にあおる。おっ、強いな。なら、もう一杯。


「自分の弱さが嫌になる」


 あおる。注ぐ。またあおる。


「オーガスーツは役に立たなかったのか?」


 良い機会なので意地悪で聞いてみた。

 途端にアリッサは苦い顔をした。母親に悪戯がばれた男の子みたいだ。


「自分達はもっと上等だと思っていた。けど、勘違いだったみたいだ。藁にでもすがりたい奴が、すがる藁を選んでいるんだから、……ははっ、酷い笑い話さ」


「まあ気にすんな」


 空いたグラスに酒を注いでやる。反省はしているようで何よりだ。


「今さらながらに知らしめられたよ、あたしらは本当の冒険をしてこなかったことを。身の丈に合った獲物ばかりを狩って……こつこつやっていればいつかはなんとかなると思っていたけど、……その結果がこのていたらくさ。こんなのでどうやってサタナキアを狩れるというのか、過去の自分に問いかけてみたい気分だよ」


 ぐびっ、と一気にあおる。

 良い飲みっぷりに、おかわりを注ごうとして、手で蓋をされた。


「すまないね、愚痴を聞いて貰って。今夜はこれくらいにしておくよ」


「まあ生き急いで死んじまったら元も甲もないがな」


 残った酒はありがたく俺が貰って、瓶をラッパ飲みでいただく。

 うん、強いな。五臓六腑に染み渡たら~♪

 ん? 視線を感じるとアリッサがぽかーんとしていた。


「どうした?」


「あんたを酔い潰すのはどうやら無理そうだと思ってね」

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