第54話 ヤギの八木、矢木、屋宜さん
今日は、俺が丹精込めて作った塩を米と交換するために、ゴリパンの村へと向かっていた。
いつもより多く塩を積んでいるので、山を越えていくと馬に負担にかかってしまうため、山を回り込むように迂回して、草原を通っていくルートで向かっていた。
エリス曰く、
「こちらの地域の生態系も回復しているか確認したいです」
とのことで、途中一泊しながら調査を兼ねて遠回りすることに。
道中、周囲を見渡しても人の存在は確認できない。かわりに大小様々な動物や昆虫が駆け回っているのを目にすることができた。
そうして森を抜け見晴らしの良い草原へとやって来た俺達は、小高い丘の木々の下で休憩をとることに。
「近くの川で水を汲んできますので、カズヤ様はここで休んでいて下さい」
「よろしく」
荷物を降ろしたエリスがそう言うと、俺を置いて一人水を取りに向かっていった。
俺は腰を下ろし、木に寄りかかりながら、ぼんやりと青空を眺める。
平和だなぁ〜
今のところ危険な動物にも遭遇してないし、モンスターの類も見当たらない。
ぼけ〜っと、辺りを見渡すと、小さなネズミというかモルモットみたいな生き物がチョロチョロと駆け回り、ウサギみたいな小動物が駆け抜けていくのが見える。
こうして見ると順調に生態系は回復していっているようだ。
エリスに言わせれば、ちょっと前までは世紀末らしく骨と瓦礫と残骸が転がる荒野が広がるだけの世界だったと言うから、そう考えると随分と暮らしやすい世の中になったのかもしれない。
木の上から鳥のさえずりが聞こえる。
目の前の茂みから、小動物が飛び出し駆け抜けていく。
鳥も数が増えたような気がする。
あの走り回ってるの、ウサギ?だよな?
……両方、食べられるよな?
…………肉、食いてえなぁー
豚とか鶏とか、どこかに生き延びてないかな?
この調子なら、そのうち肉も食べれる日がやってくるかもしれないな……
……
…………
メーメー
メメーメーメー
メメ゛
メメーメーメー
me―――
ヌメメメ✘ー
メメーメメメメ〜
……やっべ、居眠りしてた。
ってか、さっきから、なんだか騒がしい。
メーメーメーと、何の動物の鳴き声だ?
うっかり居眠りしていた俺は、奇妙な鳴き声に起こされて、周囲を見渡すと……
「なんだコイツら!」
さっきまではいなかったのに!
どこに潜んでいてのか?
犬……よりも大きい。
馬よりも小さい、四つ足の……
白い鹿?みたいな……
メーメー鳴きわめく動物がワラワラとやって来て、馬と俺らはいつの間にか囲まれていた!
こいつら、もしかして……
ヤギなのか?
メーメメーメー
「って、おい! 勝手に塩、舐めるな!」
メメーメメメ
「お、おい!?」
メメメ゛メ☭ーメ
メメメメ〜
この動物は塩の入った袋に群がっていた。そして袋を食い破り、中の塩を舐め回していたのだ。
メ✕−✘メメ゛メメメメーメXメ
「やめろって! 貴重な塩を!!」
メーメメーメメーメ☭ーメメヌメー
俺は何度も追い返すが、何十匹もの群れで押し寄せるため、払いきれない。
メXヌ〜メメメ✘メーーメメ゛メメ☭ーメ
メーメXメ俺{うわー!囲まれたー!!)メヌメ
メメめ✕−✘ーメメーメメメメ〜メー
メメーメーメー
「なにをしてるんですか?」
「エリス!」
メメ゛ーメ
戻って来たエリスが、ご覧の有様に呆れた様子で聞いてくる。
「なんとかしてくれよ。こいつらなんなんだよ」
「ヤギですね」
メヌメ〜
メメーメ〜
メー
「やっぱ? メーメー鳴いてるから」
「珍しいですねこんな場所に生息しているなんて」
「ちょっと追い払ってくれよ。大事な塩が無くなる」
「動物にとって塩は重要ですから。
しかし、普段なら岩塩を求めて山肌の険しい所に生息したりするのですが」
「そういうもんなの」
メXメメーー
メ✘〜メーメ☭ー
「せっかくなので連れて帰りますか」
「はあ? ヤギを?」
「種の保護目的で」
「飼うの? ヤギなんて飼ったことないけど」
「ミルクとか取れますよ」
「ヤギから?」
メーメメーメ
メメヌメー
「人間はよくそれをもとにチーズなど作ってきましたね。私は生臭くて嫌いですが」
「へ〜 チーズってヤギのミルクから作るもんなのか?」
「別に温めれば、そのまま飲んでも大丈夫ですよ。私は飲まないですが」
「ミルクって言ったら牛じゃないの?」
メーメXメめー
メ✕−ーメメメメ〜
「あぁ、乳牛のことですか? もちろんこの世界がまだ健全な時には存在してましたよ。本来そういった牛は自然界にはいないのですが、長年人間が乳の出がよい牛を掛け合わせ、品種改良して作り出したものが乳牛ですね。
本当に人間のすることは、罪深く、ろくでもないことばかりです」
「そうなの? ってことは野生の乳牛っていないんだ」
「自力では乳を出すことができない、人に作られし哀れな乳牛は、人類が滅んだら共に消える定めなのです」
メXヌ✘メーー
メメ゛メメ☭ーメー
メメめ✕メ乂乂〆ーー
「そうなのか。じゃあ俺は一生牛乳が飲めないんだな」
「牛乳が無いなら山羊乳でも飲めばよろしいではないですか」
「飲んだことねーし、どんな味なんだよ」
Xヌ✘メーー!
メメ☭メー!!
メメ✕メ乂メ〆!!
メメ゛メメ☭ーメー!
メメメ乂乂ーー!!
「しかし、うるせーな! こいつら!
さっきからメーメーと……」
……
……よく聞いたら、言葉にならない鳴き声している奴もいる!?
メーって鳴いてない!
✕✕−−−✕−−
「こ、こいつ?
✕と−だ!!」
✘✘ー
「✘✕だ! バツって言ってる!」
☭ー☭ー
「お前! ソビエトの記号、鎌と槌じゃねえか!」
乂乂ーー乂ッ乂ーーッ!
「こいつに至っては、“乂”って、なんて読むんだよ!?」
「翻訳魔法によりますと、カズヤ様の国の言葉で乂る、と言うらしいですよ。草をかるという、意味があるようです」
「まさかの日本語!?」
Xヌ✘メーー
メメ゛メメ☭ーメー
メメめ✕メ乂乂〆ーー
もうだめだ。
“メ”がゲシュタルト崩壊してゆく。
「ではカズヤ様、雄雌の何組か、若い個体数匹を連れて帰りましょう」
「はあ!? こんなうるせーやつらを?」
「ヤギの毛も利用できますし、放し飼いにしておけば雑草も食べてくれます」
「そ、そうなのか? 雑草取りは分かるけど、毛なんて使うの?」
「カズヤ様の世界では……とあるヤギの毛はカシミヤと言われているようですよ」
「えっ? カシミヤって、ヤギの毛だったの?」
というわけで塩もすっかり舐め取られ、半分以下になってしまったため、一度引き返すことに。
そして雄雌ペアの数匹のヤギを連れて帰ることに。
メーメー
「ところでさ、エリス?」
「どうしましたか?」
「コイツら、さっきから頭突きしてくんだけど?」
メーメーめー
ヤギが俺の足に、引っ切り無しに頭をぶつけてくるのだ。
「ヤギ同士のコミュニケーションの一つですね。または威嚇のためや、ストレス発散の意味もあったりします」
「地味に位置的に股間辺りにぶつかってくるんですけど?」
メ゛ーメーメー
「気をつけて下さい。壁に穴があくほど強力な事もありますので」
「やめてくれよ! 俺の股間に穴があいたらどうするんだよ!」
メ〜メメメーメ〜〜!!




