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異世界終末旅行 ~救世主として召喚されたわけだが、一足遅く異世界は滅んでおりました~  作者: 夜狩仁志
第4章 異世界米騒動

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第50話 ゾンビーンズ爆誕!!

 念願の米を入手!!


 ゴリパンの村を出発した俺たちは、来た道をたどりながら帰路につく。


 俺はついに手に入れた念願の米を早く食べたい一心で、つい足早になってしまう。


 ようやく米が手に入ったのだ。

 これでついに米が食える!


 米俵を担いだスズキさん達は峠道を歩くのにしんどそうだが、なんとか頑張ってもらいたい。

 エリスも貴重な米が心配なのか、頻繁に様子を確認しながら歩いている。


 ……というよりエリスにとっては米よりか、それを入れている米俵のほうが気になっている様子。

 中身の米よりも、それを包んでいる袋の方が貴重だという。

 これは手先の器用なゴリパンが作ったものらしく、脱穀した稲を乾燥させて紐状にして、それを編んで俵にしたものだ。

 この何もない世紀末においては、袋や布が貴重な存在らしく、さっきから活用法を楽しそうに思案している。


 まあいいよ。

 俺は米食うから、その袋は好きに使ってくれ。


 そうこうしているうちに俺たちは、ぬかるみの湿地帯にやって来た。

 ここはたしか、来る途中でゾンビに襲われたところだ。


 あの時はヤバかったなぁ〜

 なんて思い返していると……


「カズヤ様、ちょっと待ってください!」


 何か異変を感じたエリスが、急に止まる?

 そして一人前方に走り向かうと、泥の中から何かを拾い上げる?


「何してんだ?」


 俺もすぐさま駆け寄り、エリスの手元を覗き込むと……


 手にしていたものは、俺たちの危機を救ってくれた、あの薬草入りの枕だった。


 泥まみれで、火で少し焦げてる。

 しかもその後、水を撒いて消化したので、ヨレヨレで湿っている。


「そんなもの、もう使えないだろ?」

「なに言ってるんですか! カズヤ様! 中身は使えないでしょうが、この布が貴重なんです!」


 未練がましく、それを抱きしめるエリス。


「だって、汚いぞ?」

「じゃあ、糸はどうするんです? どうやって布を作るんです?」


「それはぁ……」

「なら、カズヤ様の服を枕にしますので、脱いでください」


「分かった! 分かったって!」


 布が貴重なのは分かったから。

 もう好きなようにして!


「いちおう、念のために中身も確認しましょう」


 そう言うとエリスは枕の中身を開ける。


 ゾンビを遠ざけ、俺たちを救ってくれた薬草は、見るも無惨にぐちゃぐちゃに。

 それ以外にも木の実や、豆のようなものも確認できる。


「この中に豆? 入れてたの?」

「はい。非常食のために」


「なるほどね。 ん~ でも、これも使えないか」

「ダメみたいですね。腐ってしまってます」


 残念そうに中を覗き込むエリス。


 きっと苦労して収集してきたのだろう。

 そのまま捨てるのは忍びない様子だ。


 どれどれ、俺も確認してみるか。


 枕の中に手を突っ込んで、中身を一握り取り出す。


 薬草も豆も、ふやけてシワシワになっちゃって、糸引いちゃってるわ、これ。

 こりゃ、完全に腐って…………


 ……ん?


 この豆の感じ、匂い……?


 どこかで?


 俺の知ってる何か……?


 これって……


 これって、もしかして、



 納豆じゃね!!?



「エリス! これ納豆だろ!?」


 水分とか火加減とかが、うまく重なり合って、奇跡的に納豆となったんだ、きっと!!


「なんですか、ナットオとは?」

「なんですかっていわれても……納豆知らないのかぁ。大豆を腐らせたんだっけ? 醗酵させたんだっけ?

 え~っと、とにかく、食べ物だよ」


「これは元食べ物です。今は腐った豆です。もったいないですが捨てましょう」


 と、枕を逆さまにして中身を捨てようとするエリス。


「ちょっと待って!!」


 せっかく米が手に入ったんだ。米に合うおかずが欲しいところ。

 ゴリパンに食わされた、あの虫ばっかじゃ嫌だ。

 それに異世界で、まさか納豆が食べれるなんて。


「ちょっと味見させて」

「な!? なにを言ってるんですか!!」


「いや、これ、もしかしたら納豆になってるかも」

「だから、なんなんですか! ナットウとは! お腹壊しますよ!」 


「そしたら魔法で治してよ」

「この豆はゾンビに汚染されてるかもしれないんですよ! これはゾンビのビーンズ…………そう、ゾンビーンズです!!」


「なんだよ……ゾンビーンズって? いいから、醤油あっただろ? それかけて…………」

「やめてください! こんな腐ったもの食べないでください!」


「エリスはエルフだもんな、しょうがないよ。日本人以外はみんなそういうんだよ。でも意外と美味いんだよ」

「ダメです。絶対に。なにかあったらどうするんですか!」


 珍しく険しい表情をしなから、声を荒げるエリス。俺が納豆を食べることに、全力で抵抗してみせる。


「そんな……大げさなぁ。大丈夫だって」

「見てください! こんなネバネバでぶよぶよで! 完全に腐ってるじゃないですか!」


「こういうもんなんだよ」

「臭いだって! どう見たってゾンビです。 食べたら感染しますって!」


「ちょっとだけ。ほんのちょっとだけ味見させて」

「やめてください! こんな汚物を口にするのは!」


「お、汚物って…………」

「なんでですか? 私が毎日食事を作ってるじゃないですか? 何が不満なんですか? こんなもの食べようとして!」


「一口だけ……」


 エリスの必死の制止を振り切って、俺はそれを口にする。


 おっ! やっぱり納豆になってる!

 偶然の産物なのか、ちゃんと納豆の味がする!


「あぁ、なんてことを…………

 カズヤ様がゾンビの餌食に…………」


 俺の行いを見て、その場にうずくまるエリス。


「ゾンビの餌食というより、俺が好き好んで食ってるわけで……」

「喋りかけないでください! 汚らわしい!!」


「え、ちょっと?」

「カズヤ様! それを口にしたら、私に話しかけないでください!」


「なんで……」

「近寄らないで!! もう、その口で息をしないでください!!」


 息するなって?

 それって、死ねってことかよ?


「私のことよりも、腐った豆を選ぶなんで! 最低です!」


 激怒のエリスは俺に枕を投げつけて、一人怒って先を歩いて行ってしまった。


 なんだよ。

 なにもそこまで毛嫌いしなくったって。

 納豆、美味しいのに……


 どうやら異世界のエルフには、納豆は受け入れてくれないようだ。



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