第50話 ゾンビーンズ爆誕!!
念願の米を入手!!
ゴリパンの村を出発した俺たちは、来た道をたどりながら帰路につく。
俺はついに手に入れた念願の米を早く食べたい一心で、つい足早になってしまう。
ようやく米が手に入ったのだ。
これでついに米が食える!
米俵を担いだスズキさん達は峠道を歩くのにしんどそうだが、なんとか頑張ってもらいたい。
エリスも貴重な米が心配なのか、頻繁に様子を確認しながら歩いている。
……というよりエリスにとっては米よりか、それを入れている米俵のほうが気になっている様子。
中身の米よりも、それを包んでいる袋の方が貴重だという。
これは手先の器用なゴリパンが作ったものらしく、脱穀した稲を乾燥させて紐状にして、それを編んで俵にしたものだ。
この何もない世紀末においては、袋や布が貴重な存在らしく、さっきから活用法を楽しそうに思案している。
まあいいよ。
俺は米食うから、その袋は好きに使ってくれ。
そうこうしているうちに俺たちは、ぬかるみの湿地帯にやって来た。
ここはたしか、来る途中でゾンビに襲われたところだ。
あの時はヤバかったなぁ〜
なんて思い返していると……
「カズヤ様、ちょっと待ってください!」
何か異変を感じたエリスが、急に止まる?
そして一人前方に走り向かうと、泥の中から何かを拾い上げる?
「何してんだ?」
俺もすぐさま駆け寄り、エリスの手元を覗き込むと……
手にしていたものは、俺たちの危機を救ってくれた、あの薬草入りの枕だった。
泥まみれで、火で少し焦げてる。
しかもその後、水を撒いて消化したので、ヨレヨレで湿っている。
「そんなもの、もう使えないだろ?」
「なに言ってるんですか! カズヤ様! 中身は使えないでしょうが、この布が貴重なんです!」
未練がましく、それを抱きしめるエリス。
「だって、汚いぞ?」
「じゃあ、糸はどうするんです? どうやって布を作るんです?」
「それはぁ……」
「なら、カズヤ様の服を枕にしますので、脱いでください」
「分かった! 分かったって!」
布が貴重なのは分かったから。
もう好きなようにして!
「いちおう、念のために中身も確認しましょう」
そう言うとエリスは枕の中身を開ける。
ゾンビを遠ざけ、俺たちを救ってくれた薬草は、見るも無惨にぐちゃぐちゃに。
それ以外にも木の実や、豆のようなものも確認できる。
「この中に豆? 入れてたの?」
「はい。非常食のために」
「なるほどね。 ん~ でも、これも使えないか」
「ダメみたいですね。腐ってしまってます」
残念そうに中を覗き込むエリス。
きっと苦労して収集してきたのだろう。
そのまま捨てるのは忍びない様子だ。
どれどれ、俺も確認してみるか。
枕の中に手を突っ込んで、中身を一握り取り出す。
薬草も豆も、ふやけてシワシワになっちゃって、糸引いちゃってるわ、これ。
こりゃ、完全に腐って…………
……ん?
この豆の感じ、匂い……?
どこかで?
俺の知ってる何か……?
これって……
これって、もしかして、
納豆じゃね!!?
「エリス! これ納豆だろ!?」
水分とか火加減とかが、うまく重なり合って、奇跡的に納豆となったんだ、きっと!!
「なんですか、ナットオとは?」
「なんですかっていわれても……納豆知らないのかぁ。大豆を腐らせたんだっけ? 醗酵させたんだっけ?
え~っと、とにかく、食べ物だよ」
「これは元食べ物です。今は腐った豆です。もったいないですが捨てましょう」
と、枕を逆さまにして中身を捨てようとするエリス。
「ちょっと待って!!」
せっかく米が手に入ったんだ。米に合うおかずが欲しいところ。
ゴリパンに食わされた、あの虫ばっかじゃ嫌だ。
それに異世界で、まさか納豆が食べれるなんて。
「ちょっと味見させて」
「な!? なにを言ってるんですか!!」
「いや、これ、もしかしたら納豆になってるかも」
「だから、なんなんですか! ナットウとは! お腹壊しますよ!」
「そしたら魔法で治してよ」
「この豆はゾンビに汚染されてるかもしれないんですよ! これはゾンビのビーンズ…………そう、ゾンビーンズです!!」
「なんだよ……ゾンビーンズって? いいから、醤油あっただろ? それかけて…………」
「やめてください! こんな腐ったもの食べないでください!」
「エリスはエルフだもんな、しょうがないよ。日本人以外はみんなそういうんだよ。でも意外と美味いんだよ」
「ダメです。絶対に。なにかあったらどうするんですか!」
珍しく険しい表情をしなから、声を荒げるエリス。俺が納豆を食べることに、全力で抵抗してみせる。
「そんな……大げさなぁ。大丈夫だって」
「見てください! こんなネバネバでぶよぶよで! 完全に腐ってるじゃないですか!」
「こういうもんなんだよ」
「臭いだって! どう見たってゾンビです。 食べたら感染しますって!」
「ちょっとだけ。ほんのちょっとだけ味見させて」
「やめてください! こんな汚物を口にするのは!」
「お、汚物って…………」
「なんでですか? 私が毎日食事を作ってるじゃないですか? 何が不満なんですか? こんなもの食べようとして!」
「一口だけ……」
エリスの必死の制止を振り切って、俺はそれを口にする。
おっ! やっぱり納豆になってる!
偶然の産物なのか、ちゃんと納豆の味がする!
「あぁ、なんてことを…………
カズヤ様がゾンビの餌食に…………」
俺の行いを見て、その場にうずくまるエリス。
「ゾンビの餌食というより、俺が好き好んで食ってるわけで……」
「喋りかけないでください! 汚らわしい!!」
「え、ちょっと?」
「カズヤ様! それを口にしたら、私に話しかけないでください!」
「なんで……」
「近寄らないで!! もう、その口で息をしないでください!!」
息するなって?
それって、死ねってことかよ?
「私のことよりも、腐った豆を選ぶなんで! 最低です!」
激怒のエリスは俺に枕を投げつけて、一人怒って先を歩いて行ってしまった。
なんだよ。
なにもそこまで毛嫌いしなくったって。
納豆、美味しいのに……
どうやら異世界のエルフには、納豆は受け入れてくれないようだ。




