表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界終末旅行 ~救世主として召喚されたわけだが、一足遅く異世界は滅んでおりました~  作者: 夜狩仁志
第4章 異世界米騒動

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/53

第48話 森の賢者

「こうしておけば、二度と復活することはないでしょう」

「なにも、そこまでしなくても……」


 ゾンビらの襲撃を受けた俺たち。

 エリスは土地を清めると言って、付近一帯に油をまき火をつけ、夜空が赤く染まるほど燃やし尽くした。

 その後念入りに水を撒いて、今ようやく鎮火したところなのだった。


「さお、もう遅いので、休みましょう」

「お、おう……」


 そんな事があった翌朝。

 俺たちは湿地帯をぬけて、東の国への向かうため山を登ることに。


 エリスが言うには、ここを通る方が稲作の産地に着くのは早いとのことなので、昨夜の戦闘の疲れも残っている中、険しい山道を通るのだった。


 足取りも重く、息が切れる道中、この先の国の事など何も知らない俺は、不安に駆られエリスに聞いてみる。


「なあ、エリス? この先の国って、米作りが行われてたんだっけ?」

「そうですね。農業や畜産が盛んだったところです。米だけでなく、小麦や果樹園、畑なども多いですね」


「へ―」

「サトウキビや芋なども栽培してますので、砂糖の産地でもあります」


「おお、砂糖! そういえば最近、甘いお菓子食べてなかったな……」

「それ以外にも……そうですね、カズヤ様の世界の言葉で言いますと……

 畜産や放牧、酪農など……行われてました」


「畜産? 放牧? 酪農?」

「ええ。言葉は通じますか? 翻訳が間違ってますでしょうか?」


「いや、ちゃんと日本語なんだけど。………その、違いや意味が分からん」

「……意味? カズヤ様の世界の言葉なのですが?」


「なんとなく分かるよ! だけど細かい違いが……その……」

「なるほど、しょうがないですね。カズヤ様は学が無いので」

「…………」


「"学がない”を訳しますと、バカということです」

「分かるわ! それくらい!!」


「では説明しましょう。畜産はですね、罪作りな人間が、牛や豚や鶏を食料にするために育てることです」

「……はあ」


「放牧は強欲な人間が、牛や馬や羊を飼いならし増やすことです」

「…………へぇ」


「酪農は人間による動物の性搾取です。主に乳を取るために、牛や山羊を育てることです」

「…………なるほど」


 …………よく分かんねぇ。

 しかも、ところどころ、人間をデスってるし。


「どれもその国では盛んですので、もしかしたら生き残りの動物がいるかもしれません」

「ってことは! 肉が食えるってことか!?」


「そんなことさせませんよ、私が。無益な殺生をするようでしたら、まず先に私がカズヤ様を息の根を止めます」

「うっぐ……」


 結局米が食える保証もないし、肉も食えないとなると、ここまで来た意味ないじゃないか?

 ゾンビを倒し、この急な山道を抜けて、苦労して辿り着いた先には、なんにもなかったなんて……


「さあ、もう少しです。山を登り切った先の、向こう側の山肌が、水田になっているはずですので」

「そうなの? 山の中にあるの?」


「山の斜面を切り開いて、階段状に土地を耕しておりますので」

「ああ。棚田ってやつ? なんか学校で習ったような気がする」


「山脈からの湧き水が豊富で、標高の高い方が稲作の気温に適しているようです。この国の者たちの長年の英知の結果のようです」

「なるほどね」


 まあ、それもどうせ昔のことなんだろうな。

 モンスターに荒らされて、人の手から離れた田んぼなんて、ボロボロになってるに違いない。

 俺が今まで見てきた異世界の、あの荒廃した廃墟だらけの見慣れた景色が、どうせその先にも待っているだけだ。


 あーあ、米が食いたかったなぁ……


 どうせダメだと分かりきっているのに、山を登る必要があるのか?


 なんか面倒くさくなってきた……


 そんな足取りの重くなった俺を置いて、エリスは軽い身のこなして駆け上がっていく。


 そして先に頂上に辿り着いたエリスは、

「さあ、着きました。この下には水田が……」

 と、麓を見下ろしながら、言葉を飲み込んだ。


 どうやら目にしたあまりの光景に、驚きのあまり言葉を失ったようなエリス。


 どうせ予想以上に荒れ果てた田畑が見えてんだろう。


 俺もゆっくりとエリスの側に追いつくと、期待もせずに覗き込む。


「えっ!?」


 そこには……


 予想に反して、


 水の張った棚田が……!?


 美しい青い絨毯の様な水田が、山肌に沿って一面に広がっている!?


 おおー!!


 眼下を遥か先まで見渡せば、山の斜面を切り開いて平にした水田が、段々と階段状に山肌にそって平地まで広がっていた。


 水面が青い空を反射し、そこには美しい絵画の様な光景が広がる。

 まるで魚の鱗のように青く輝く水田が、果てしなく続く。

 しかも驚いたことに、その田んぼには、ちゃんとまだ青緑色の苗が規則正しく植わっているのだった。

 兵隊の様に整列した苗は、風にたなびき、水面と共に揺れている。


 これにはエリスも驚きの表情を隠せない。


「これは……まさか、このような事に……これは凄いです。このように、しっかりと手入れされ管理されているなんて。いったい誰が?」


 人類が滅亡して数年。

 人の手が加わることなく、自然のままでこのような状態になることは、決して無いことは俺にでも分かった。

 するとどこかで人類の生き残りが?

 しかもこの広さの棚田を管理するとなると、かなりの人数が?


 米が食べれるという期待以上に、人に会えるかもしれないという希望が、俺の胸を膨らませていた。


 しばらく俺たちは、この美しい日本の田舎のような風景を、唖然とし立ち尽くしながら眺めていると……


「あっ! カズヤ様! あそこに!!」


 何かを発見したエリスが指を刺す。


 目の良いエリス。

 俺がエリスの示す方向を目を凝らしてみると……


 遠くの……

 田と田の間の道を……?

 動く?人影??


「人!?」


 全身赤黒い服を着た……いや、そうじゃない。

 毛に覆われてる?


「いえ……あれは、人間ではないですね」

「人……じゃないのか?」


 よ~く目を凝らして辺りを見渡してみると、

 他にも動くものが数名? 田んぼの中に入って……田植えをしている?

 よく見ると、あっちにも?こっちにも??


「あれは……ゴリパンタン……です」

「……え? なんだって?」


 いきなりエリスが謎の単語を発する?


「"ゴリパンタン”という猿です。略して“ゴリパン”です」

「ゴリパン……だと? 猿?なの?」


 そう言われてみれば……大きな猿のような?

 全身、赤茶けた毛に覆われた、人間と同じくらいの背丈の?

 しかも、田植えをしているのかと思ったら、両手を突きながら歩いているようだ。


 ゴリラみたいな? いや、チンパンジー?

 ゴリパン?

 名前の響きが嫌すぎる……


「彼らは"森の賢者”と言われるほど賢い動物です。

 そうですか……なるほど。人類が滅亡した後、ゴリパンたちが水田の管理を引き継いでいたと言うわけですね」


 一人納得し、感心しているエリス。


「……ってことは、人間はいないってこと?」

「そのようですね。何らかの事情で、ゴリパンが稲作を引き付いでいたということで」


 そっか、米は食べられそうだが、人は相変わらずいないのね。


「ちょっと、話を聞いてきます」

「えっ? ちょ?」


 エリスがたまらず飛び出すと、俺たちを置いて一人勝手に風に乗って飛び降りるかのように、山を下って行ってしまった。


 エリスの姿が小さくなると、水田の合間を潜り抜け、近くにいたゴリパンタンと接触する。


 立ち話でもしてるのだろうか?

 ……っていうか、会話できるの?


 しばらくその場にとどまっていると、わらわらと周囲から他のゴリパンタンがやって来て、

 あっという間にエリスが囲まれる!?


 大丈夫か!?

 エリス、大丈夫なのか!?

 襲われたらひとたまりもないぞ!


 俺も向かおうかとした時、群れを掻き分けて戻ってくるエリスの姿を確認する。


 戻って来た……

 一体どんな話をしてたんだ?


「お待たせしました、カズヤ様」

「大丈夫か? 話せる相手なのか?」


「カズヤ様よりもよっぽど賢くて、寛大ですよ」

「…………そうですかぁ?」


「この水田は、やはり彼らが管理しているようです。人類がいなくなり、魔族によって田畑も荒らされ、食料が無くなった彼らは、かつて人間が行っていた事を思い出し、米を作るようにしたようです」

「なるほどねえ」


「この村の村長に会いに行きましょう。どうやら米を分けてもらえるようです」

「マジか!! よっしゃー!」


 一時は絶望視されていた米だが、ここに来てまさかの入手できる可能性が!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

こちらも↓スクールほのぼのラブコメ↓よろしく



僕は茶道部部長に弄ばれる



― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ