第47話 ゾンビ軍団襲来
気がついたら投稿期間があきまくってました……
この二人、まだ米探しに行ってるんですね。今や日本も米不足だよ。
私の脳内ではこの二人、もう家畜も探し集めて、仲間も見つけてる頃なんですけどね……
俺とエリスは米を探し求めて、稲作が盛んだったと言う東の国『アイグッド首長国連邦』へと、朝早くから出発した。
さらにエリスが言うには、人類が滅亡したこの世界で米を見つけるのは、ほぼ不可能とのことだった。
どうしても米が食いたい俺は、たとえ望みが薄かったとしても、手がかりでもなんでも欲しいので、米の産地へと向かうのだった。
ホンダさんとスズキさんに跨り、川を渡り、草原を抜け、東へと向かう。
崩壊した街並み。
白骨化したモンスターの山。
散乱した兵士たちの武具。
それらを乗り越えて、荒れた街道を進んでいく。
……それにしても、
だんだん殺風景というか、いかにも世紀末っぽい景色が増えていくんだが?
この先、大丈夫なのか?
「なあ、エリス? この先、安全なのかなぁ?」
住み慣れた場所を離れ、まだ見ぬ土地へ向かうのは、やはり不安になってしまう。
先を進む、いつもと変わらぬエリスに、俺は思わず尋ねてしまう。
「特に大型のモンスターや、肉食動物の存在は確認されてませんので。大丈夫でしょう」
大丈夫でしょう……って、
そんな素っ気なく答えられても……
「なんかさぁ? 周囲がなんというのか、寂しいというのか、荒廃してるっていうのか……」
「ここは、東側から王都へと攻め込む魔王軍を堰き止める最終防衛ラインでしたので、両者多くの犠牲を出す激戦区でした」
「へぇ……」
「ので、建物はほとんど破壊され、私たちの歩いている大地には多くの遺体が眠っているのです」
……聞かなきゃよかった。
よけい不安になってくるじゃねーか。
出発してから半日経ったあたりだろうか、ぬかるんだ湿地帯が続くようになる。
街道もボロボロになり、地面がゆるゆるでうまく歩けない。
俺たちと重い荷物を背負ったホンダさんとスズキさんも、足がとられ苦しそうだ。
「カズヤ様、今日はこの辺で休みましょう。この足場だと、進むのに時間がかかります」
「そうみたいだな」
先を行くエリスも、どうやら同じことを思っていたようだ。
「さらにこの先、峠を越える必要がありますので。このままですと、山の中で夜を明かすことになります」
「夜中の山は……嫌だなぁ」
「手ごろな場所を見つけて、明日まで待ちましょう」
「そうだな。みんなも辛そうだし」
俺たちは、まだ日没には時間が早いが、寝るのに安全そうな場所を探しながら進むのだった。
そして、街道から少しそれた、数本の木が立ち並ぶ場所を見つける。
休むのにはちょうど良さそうな場所だったので、そこを今日の野営地とした。
疲れたであろう馬二匹を、木の脇で休ませてる。
俺たちも火を焚き、食事をして、特に異変も起きることなく夜に。
そのまま俺たちは就寝することに。
俺は相変わらずクマの着ぐるみパジャマを着て寝る準備をし、
エリスもやっぱり木の上に登り、寝仕度をする。
「では、カズヤ様、おやすみなさい。明日も早いので」
「おう、おやすみ」
さてと……
明日は山を越えて、田園地帯へ。
ここまで来た感じだと、きっと水田もこんな状態なんだろうな。
荒れ果てて、稲どころじゃないんだろうな……
言われてみれば、稲作は大変だって学校で教わった様な気もするし。
もう、米は期待できないのかもな。
俺はもう一生、ご飯茶碗いっぱいの米を口にすることは出来ないのか?
あぁ……米が食いたいよぉ……
……
…………とりあえず、明日行ってみるか。
…………そこからまた考えれば……
(……ゥ……)
(…………ゥ……ゥゥ…………)
(……ゥウ……ゥゥォ……ウオ………)
……??
なんか……聞こえない?
ちょうど、うとうとしてきた時に、なんか呻き声のようなものが、遠くの暗闇の中から聞こえてくる??
風の音!?
動物!?
(……ウウウォオオ)
(ウウウウウオオオ)
段々近くなってる!?
しかも全方位から!!
「エ! エリス!? エリス―!!」
「なにか聞こえますね。これは……」
さすがにエリスにも気が付いたようで、木の上から降りてきて身構える。
いつになく真剣な表情のエリス。
……ってことは、敵なの?
敵が近づいてんの!??
小さくくすぶっている焚き火の灯りを、大きく戻し周囲を明るくさせる。
……と、遠くから何かゆっくりと近づいてくるものが、おぼろげに確認できようになる。
動物ではない?
うっすらと二本の足が見える、人?
でも動きが不自然だ。
おぼつかない足取りで、しかも一人だけじゃない?
これ、なんか映画とかで見たことあるシチュエーション!!
あれだよ、あれ!!
「これは……アンデット系のモンスターですね」
「アンデット!!」
「カズヤ様の世界の言葉では、ゾンビと言うのでしょうか? 死霊とでも言いますか……」
あっ! よく見ると向こうからやってくるやつ! 骨だけじゃん!
人間の骨だけがヨタヨタと近づいてくる!
人間だけじゃない!
動物のも!!
あれは!? 博物館とかで見たことある、恐竜の化石みたいのまで!!
もしかしてドラゴンの!!
「ち、ちょっとエリス! 怖いんですけど!!」
か、数が凄い!
周囲一面に!?
振り返ってみれば後ろからも!!
いつの間にか大勢のゾンビに囲まれてる!
「エリス! どうすんの!! エリス!!」
「落ち着いてください。数は多くても、所詮、死体なので、耐久度は全然ありませんので」
「そ、そうかもしんねえけど! 見た目がもう、気持ち悪い!!」
「ここは、カズヤ様の剣の一振りで瞬殺です」
「そ、そうか!?」
「ホンダさん達がカズヤ様の一撃で巻き込まれないように、先に逃がしておきましょう」
そう言い、馬と木を結んでいた紐をほどくと、
「安全な所に行っておいで」
とエリスがホンダさん達を逃がした。
「う、うあー!! 大丈夫なのか!? どんどん増えてきてるぞ!」
いつの間にか周囲は、隙間なく並ばれたゾンビどもに囲まれてる!!
こいつら、かつての戦闘で死んでいった者たちなのか!
凄い犠牲者だ!
「まだ距離がありますので。私が魔法で足止めしておきますので、その間にカズヤ様は蹴散らしてください」
「怖え! すげー怖いんですけど! だって骨が動いてるんだぜ!」
「数こそは多いですが、アンデット系は耐久力が低いので、すぐに倒せます」
「ホントかよ、大丈夫なのかよ!」
俺は迫りくる骨軍団との間合いを計る。
と、不意に足元の地面が盛り上がる?
なになに!?
モゴモゴ、地中を動き回るような……
「カズヤ様下がってください」
「え?」
地面から何か突き出してきた!!
腕だ!
どろっどろの!
泥だか腐った筋肉か分からない!腕が生えてきた!!
その手で俺を掴もうとしてる!!
「下がってください。引きずり込まれるかもしれません」
「ええ!? それは嫌だー!!」
さらに泥の腕は、妙にモコモコ盛り上がって……??
そのまま立ち上がって、ドロドロの人間みたいに!!
「うわ――!!」
「早くカズヤ様! その剣の一振りでゾンビなど蹴散らしてください!」
「そ、そうだな! 相手は骨と泥のモンスター。俺の伝説の剣で…………ぇ?」
「近くの敵は私が魔法で何とか凌いでおきますので、その間に!」
「…………」
「くれぐれも振り回す時、私も巻き込まないでください!」
「あの、その……エリス?」
「どうしたのですか?」
「その、大変申し訳ないんですけど……」
「私も大変なんです!!」
「……
……持って
……ないんだ」
「カズヤ様が? モテない? ゾンビにも? 分かってますよ! それくらい!」
「違うんだよ……
その……
……剣、
……持ってないんだよ」
「…………は?」
「よく考えたら、スズキさんの背中に載せたままだったんだよ」
「……」
「……」
「…………」
「…………」
「なんでいつも携帯してないのですか!!?」
「いや、その、だって、重いし……」
「じゃあ、どうすればいいのですか!? この状況!!」
「えーっと、その、どうすれば、いいんでしょうかね?」
うっかり俺は、就寝ということで剣をスズキさんに預けたままにしてしまっていた。
そしてそのスズキさんは、先にどこかへ逃がしてしまった。
ということは俺たちは……
「いや!! 近づかないで!!」
あぁ!!
いつの間にか!
エリスが囲まれて!
泥人間に、全身しがみ付かれて!!
「さ、触らないで!! 助けて! カズヤ様!!」
エリスが顔をしかめる。
エリスに覆いかぶさる泥人間たちを、俺はクマの着ぐるみパンチで撃退する!
「お前ら!! こんにゃろ!!」
クマの着ぐるみの爪でぶん殴る!
……が、殴った頭がポロっと取れるだけで動きは止まらない。
「このやろ! このやろ――ぉ!!」
いくら殴っても手ごたえがない!
骨人間も、崩しても崩しても迫ってくるし!
泥人間も、ドロドロのゼリーを殴ってるみたいに手ごたえがなく、致命傷にならない!!
「この!この!!この――!!」
殴っても殴って……
数が多すぎるし……
全然、倒れないし……
俺の方の体力が……
うっ!?
突然!
俺の足が掴まれて??
地面から這い出た無数の腕によって、下半身が取りつかれて!?
……うっ、ぐっ!!
背中から仰向けに倒れてしまった!!
「うわ――!! ち、ちょっと!! まっ……!!」
その上に次から次へとゾンビが!
覆いかぶさりっ!!
「わ――――!!!」
う、動けない!!
そこにゾンビたちが、容赦なく襲ってくる!!
ああ!
嘘だろ!!
こんな所で!!
俺は!!
死ぬのか……!?
「カズヤ様!! カズヤ様!!」
ゾンビたちの群れで塞がれた視界から、微かにエリスが俺を助けようと奮戦してくれる様子が垣間見えるが……
ダメだ……
もう……
ここはエリスだけでも逃げて……
(……ゥゥゥゥ)
(ゥウ…………)
(ゥッ……)
……ん?
体が急に軽く?
俺に取り付いていたゾンビどもが?
いつの間にかいなくなって?
視界の目の前には、エリスが……
物凄い剣幕で立っていた。
手には愛用の枕を手にして……?
「あっちへ行きなさい!!」
がむしゃらに枕を振り回すエリス。
果敢にも、そんな枕一つで……
でも何故かゾンビたちは寄ってこない。
むしろ、その枕を近づけると、避けるように後ずさりしていく?
「カズヤ様! 大丈夫ですか!?」
「あ、ああ。なんとか。で、その枕、なに?」
今にも泣きだしそうなエリスに、体を起こしてもらう。
「これしか武器らしい武器はありませんので」
「……でも、なんか? ゾンビがそれを避けてるように見えるんだけど?」
「……この枕をですか?」
「…………臭いんじゃない?」
バシッ!!
痛えっ!
「枕で叩くな……って、そういえば……その枕の中身って、なんだっけ?」
「こんな時になんなんですか! 中身は非常食や薬草や毒消しなど……」
「それだ!!」
「はい?」
「きっとアンデットだから、薬草とかが苦手なんだよ!」
「……なるほど」
試しに枕を近づけると、嫌がる素振りを見せ後ずさりする。
よし!
これで何とかなるかもしれない!
とりあえず枕を抱えたエリスの周辺には、寄って来なくなったゾンビたち。
ただ、これからどうしたものか……
「そういえばカズヤ様、この枕の中に、スズキさんの好物の葉も入っていたと思います」
「スズキさんの?」
「それを取り出せば、匂いでスズキさんがここまで来てくれるかもしれないです」
「おお!!」
エリスは大事な枕を裂くと、中から数枚の葉を取り出した。
それを高くかざして、風に当てると……
……パカパッァ……
……パカパカパッカ……
スズキさんの蹄の音だ!!
予想通りスズキさんが餌につられてやって来た。
しかも背中に担いだ剣で、周囲のゾンビをなぎ倒しながら、やって来る!
「ナイス! スズキさん!!」
「よしよし。偉いですよ、スズキさん」
エリスから好物の葉を食べながら、頭を撫でられご機嫌のスズキさん。
周囲のゾンビには目もくれず、一心不乱に餌を頬張ってる。
「さあ、カズヤ様、早く!」
「おう!」
スズキさんの背中から剣を取ると、周囲のゾンビ目掛けて横一線に振り回す。
俺の渾身の一振りで、衝撃波と共にゾンビたちは粉砕され、あっという間に消えていく。
それを数回繰り返しただけで、あんだけ苦しめられたゾンビ軍団は一匹も残らず、土へと還っていったのだった。
「ふぅ……危ないところだった。なあ、エリス……」
バシッ!!
「痛っ!!」
「なんで剣を持ってないんですか!!」
見るからにお怒りのエリスは、執拗に枕で俺の頭を殴り続ける。
「す、すんませんって。痛いから! やめてって! ほら、中身が出てるから!」
枕で叩くたびに、中に詰まっていた豆やら草が周囲に飛び散る。
「どうしてくれるんですか!! 泥だらけじゃないですか!!」
「本当に、すみません」
「少しは救世主としての自覚を持ってください!!」
「……はい」
エリスはご立腹のご様子だが、無事なようでなによりだ。
しかし、まだこの世界には危険が残っているようだし……
気を緩めちゃ、ダメだな。
エリスの言う通りに、剣は常に持ち歩かないと。
今回は何とかなったけど、これからはどうなることか。
この先向かう水田も、この様子だとどんな状態か分からないぞ?




