第26話 俺の海の家オレガ浜本店
こうして、俺たちの海への最初の遠征は終わった。
……のだが
それ以来、日を分けて何度も海へとやって来ることに。
一回来ただけでは、たいした量の塩は確保できずに、何度も来なくてはならなかったからだ。
海水から塩を取るって、結構大変な作業だったんだなぁ~
普段は湖に水を汲みに行ったり、畑を耕したり、山に入って木を切ったり、木の実や山菜を採ったりを繰り返す。
その合間をみて、定期的に海にやって来て塩を精製したり、魚を取ったりする生活がしばらく続いた。
そして今日も3回目の海。
目の前に広がる美しい海を目の前にし、テンションも上がり叫んでしまう!
「いつ来ても海はいいなー!」
「そうですか? なら、魚にでもなったらいかがですか?」
「よーし、これから頻繁に来るようになるから、まずは寝泊まりできる拠点を作るぞ!」
「そうですか。では、がんばってください」
「海の家、作んぞ! 俺の海の家!!」
「うみの……家?ですか?」
「おう! そんで、この浜は……俺が見つけたから“オレガ浜”と命名する!!」
「オレガ浜?? この浜は“ラッカの浜”という正式名称が……」
「海の家、オレガ浜本店!」
「カズヤ様は救世主ですので、どうぞご自由に、お好きな名称でお呼びください。世界が復興しましたら、それが正式名称となりますので」
こうして数週間かけて、俺は海の拠点作りを行った。
まずは近くの川岸を整備して、上流から流した船や物資が積み下ろしできるようにする。
毎回、馬で運んだり、自分で背負うのも辛いから。上流で荷物をまとめて送って、下流で受けとれば簡単に済む。
そして王都からここまでの道を歩きやすくするため、草を刈ったり瓦礫などを撤去して通りやすく整備する。
俺はこの道を“塩街道”と命名し、人馬が海まで往復しやすいように専用の道路を建設する。
まさか道路工事のバイトの経験が、ここで活かされるとは。
さらに海の見えるヤシの木の林の一角に、簡易宿泊施設、俺の家を建設し始める!
最初は工具も何にもないので、どうやって作ればいいか全く分からなかったのだが、俺はある大発見をしたのである。
「エリス、見てくれよ! すごいだろ!」
「どうしたんですか? その大きな丸太は?」
「この剣で切った!」
「…………」
「これ使えば、簡単に切れるんだよ。さすが伝説の剣!」
「無駄に木を切り倒すのは、やめてもらえませんか?」
「……すいません」
「どうしても必要なのでしたら、間引きするためなど、計画的に伐採していただきませんと」
「…………分かりました」
この剣を使えば、たいていの物が切れてしまうのだ。
家を建てるにあたって、まず周りの土を掘って、溝を作っていく。でないと、またヤシガニがやって来てしまうからだ。木の壁など簡単に壊されてしまうかもしれない。
そのため周囲に穴を掘る。その時に、この剣を使えば便利で助かる。
なんたって、ちょっと振り下ろすだけで、大地が裂けるんだから!
ヤシガニが溝に落ちたら登ってこれないような深さまで、剣でもって掘っていく。
さらに石垣みたいに斜面に石を埋め込んでいく。石なら滑って登れないだろうし、さすがにハサミで砕くことは出来ないだろう。
石を調達するのに近くの山から岩を砕いて運んでくるのだが、その岩もこの剣を使えば一撃で粉々になる!
そうして小さくなった石を積んでいくのだ。
あとは木材を運んで、家を建てればいいのだが……
家って、どうやって建てるんだ?
クラフトゲームだったら、材料さえ集めれば一瞬で組み立てられるんだけど?
木材と、あと何が必要なん?
建設現場でのバイトで、なんとなく見てきてはいるけど、釘とかネジとかは?
鉄筋コンクリート造りは無理だろうから、木造を目指すけど……
さっぱり分かんねえ。
とりあえず建設場所に資材を集めたものの……
大量の木材を目の前にして、立ち悩む。
「カズヤ様、どうしたのです? こんな量の丸太に囲まれて」
「ん? いや、どうすればいいのかなーって考えてたんだよ」
「犠牲になった木々への贖罪の仕方ですか?」
「……いや、違う。感謝はしてるけど、違う」
「小屋でも建てるおつもりですか?」
「まあ、そんな感じなんだけど。作り方が分かんねぇ」
「なるほど。この様子ですと、完成までに200年はかかりそうですね」
「……サグラダ・ファミリアかよ」
こうして定期的に海にやって来ては、少しずつ家を建てていく。
家を建てる敷地をきれいにならし、回りに穴を掘って木をぶっ刺して、それをいくつも連ねて壁にしていく。
板状に切った木は、床として敷き詰めていく。
そうしてなんとか家っぽいものが出来上がってきたものの……
屋根って、どうやって作るの?
木を横にして乗せとけばいいのかな?
数週間かけて、壁と床しか出来てない。
しかも窓とかドアがない。
……どうやって作るんだ?
「どうですか? 順調ですか?」
別の場所で海水を沸かして、塩を取り出していたエリスが、ひょっこり様子を見にやって来た。
「ん~ もう少しかな? あとは天井かな……」
「中に入ってもよろしいですか?」
「ああ、いいよ」
「では、失礼します」
「ちち、ちょっと待てって!!」
エリスがブーツを履いたまま、中に入ろうとしたので慌てて引き止める。
「靴を脱いでから上がってくれよ!」
「脱ぐの?ですか?」
俺の言葉を理解していないような、キョトンとした顔をエリスが向けてくる。
「そうなの! 中に入る時は靴を脱いで入るの! 汚いだろ!」
「それは失礼しました。意外とカズヤ様はきれい好きなのですね」
まったく、これだから外国人は。
……って、ここは異世界なのか。
生活習慣が日本と違うんだな。靴を履いたまま家に入るのか。
「さあ、みなさん。ちょっと狭くて堅苦しいところですが、お入りください」
……て!
ちょっと目を離したとたんに、ホンダさんとスズキさんを引き連れて中に入ろうとしてる――!!?
「おい、なにしてんだよ! なんで入れるんだよ!!
しかも土足――!!!」
「はい? ここは馬小屋ではないのですか?」
「ちげ――よ!!」
俺が苦労して建てた家(仮)を、なに勝手に馬小屋にしようとしてんだよ!
「では一体、何日もの時間をかけて、カズヤ様はなにを作っていたのですか?」
「これは、俺たちが寝泊まりする家だよ! 別荘だよ!!」
「これが…………
…………
…………ですか?」
なんだよ、その目は……
「そうだよ、まだ作ってる途中だけど、なんか文句あるのかよ!」
「天井が青空とは、また斬新なデザインの家ですね」
「これから作るんだよ」
「そうですか。それは失礼しました。ではホンダさん達の家はいつ頃完成するのでしょうか?」
「…………えっ?」
「毎日毎日、潮風にさらされて、かわいそうですので」
「…………これが……完成したら、すぐ作るよ」
「そうですか、それは楽しみですね。さあ行きましょう、ホンダさん、スズキさん」
マジかぁ……
馬小屋のことは考えてなかった。
ヤバイな。
早くしないと、本当に全部完成するまでに200年かかってしまうぞ。




