探偵ロストバーン③
「お前ら席につけ!挨拶すんぞ!オラァ!」
始業式が終わり教室へ戻った2年5組。
そう俺は今日から5組だ。担任は…あの例の熱血だ。
「俺は前年度1年6組の担任をしていた、郷本純だ!みんな知ってる通り、体育の担当をしている。部活は野球部じゃ!」
自己紹介までも暑い。教室の温度が2度ほど上がったような気分だ。
そんな時に
「えー、また暑苦しいじゃんか。ちょっと声量下げてくんない?」
そう言ったのは、
「なんじゃとおらぁぁ!!優!!!先生に向かってそんな口を聞いていいと思ってんのかぁ??」
星宮優。俺の親友兼相棒の翔の双子の姉である。なんというか、俗に言うギャルだ。物腰やらわかでニコニコな翔とは違って、気が強く髪の毛の色も明らかに地毛ではない茶色で眉毛も描いている。大人びた奴だ。
「いやさぁ〜、郷本の事は嫌いじゃないんだけど、うるさいんだよね。うちさ、このクラスのことも別に嫌ってわけじゃないんだけどさ、なんでうちと、祈ちゃんが同じクラスなわけ?」
その時だ、クラス全体の温度が急に下がった気がした。
あの熱血教師も冷や汗をかいているようだ。
「はぁ?なんなの?あたしこそお前なんかと同じクラスなの無理なんですけど。」
そう言い返したのは、満田祈。
優とは中学1年の頃から犬猿の仲だ。そして祈はこの三山中学で代々受け継がれているという、三山一家という不良グループのメンバーだ。怖い先輩や強い先輩がいるので、誰も逆らえない。だが唯一、優は
「お前なんか、うちなんにも怖くないんだけど?」
「お前ら!!!いい加減にしろ!!!!別室へ来い!!!!!」
郷本は優と祈を連れて、生徒指導室へ向かうようだ。
「お前ら!チャイムが鳴ったらちゃんとトイレ行っとけよ!わかったな」
そう言うと3人で教室から消えた
────キーンコーンカーンコーン
噂を聞き付けた、というより郷本の怒声が響き渡ったせいで教室へ別のクラスからみんなが来ていた。
「ねぇ或斗、このクラス大丈夫そう?」
翔も来ていたようで、俺に聞いてきた。
「大丈夫もなにも、お前の姉が…」
「優ちゃんは正しいことしかしないから大丈夫だよ!それは或斗も知ってるでしょ?」
「た、正しい…事かぁ…」
そんな中またもや、別のやっかいな奴が現れた
「おいおいおい、うちのメンバーのやつにいちゃもんつけた奴ってのは誰や?」
中学3年のヤバい奴、三山一家の番長で有名な、望富健二だ。
いつもは学校にすら来ていないが、始業式という事で来ていたらしい。そしてその隣には
「どーでもいいんじゃない?どうせまた星宮の鬼娘でしょ。」
三山一家の女番長で有名な羽野秋。
「あぁん?星宮の鬼娘ってのは、いつも俺等にいちゃもんつけてくんなぁ」
「どーでもいいんじゃない?弱いやつに喧嘩売ってんじゃないし」
「関係ねぇだろ?秋はわけわかんねぇなあ」
「良いから、私もう帰るから、ごめんね2年生達。」
そう言って半ば強引に望富先輩を連れて直ぐに去っていった。
それから、2人は戻ってくることは無く、疲弊した郷本だけが教室に戻ってきた。始業式が終わりクラス挨拶も終わり、下校の時間だ。翔と俺は他愛もない会話をして、下校した。
────放課後、帰り道にて
「とりあえず、善岩寺の件はどうする?鐘の音なんて聞いたことないんだけど」
翔は依頼のことを俺に言ってきた。
「あー、そうだな、とりあえず善岩寺まで今日行ってみるか
。鐘の音確かに聞こえるけど、翔の家までは聞こえないのか?」
「聞こえるの?僕の家と或斗の家までそんなに距離ないんだけどね」
「聞こえてるけど、あんま気にしてないか、優の声がデカすぎて聞こえてねぇんじゃねーか?」
俺は翔がシスコンであることを知っているからこそ、からかってみた。本人はシスコンであることを否定しているが。
「優ちゃんは、家ではとっても優しいんだから!とりあえず!今日15時に僕の家の前で集合ね!!」
そう言って、そそくさと流石星宮製菓だと言わんばかりのデカい門をくぐり抜けて、玄関に入り15時からの約束をつけて翔と俺はわかれた。