探偵ロストバーン①
『輝くまで死ぬ夜』 亜ノ夜黄泉作 から抜粋
もしも貴方が死ぬまで1度も輝かなかった場合、僕は誰の光を受ければいいのだろうか。
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2022年4月7日 三山中学、始業式当日
「或斗〜!起きなさい!朝ごはんよ!」
俺は母の声で起きた。時刻は朝7時5分。
「やっべー!今日のズッキリに亜ノ夜先生出るんだった!!!」
亜ノ夜黄泉先生、俺が小学6年生の夏休みの読書感想文の宿題の際に出会った小説家。最近で言うと『ユートピアは明日から』『輝くまで死ぬ夜』が話題だ。でも亜ノ夜黄泉の小説の中でも少しマイナーな『幽霊探偵ロストバーン』は俺の人生に影響を与えた作品だ。
俺は階段を早足で降りて、テレビのチャンネルを変えた。
「あら、どうしたのそんなに急いで」
「10分から、亜ノ夜先生の最新作のインタビューがあるんだよ!」
俺は母に少し食い気味に言った。
そう、今日は亜ノ夜黄泉先生の最新作である『最弱宇宙人』の発売日。
「母さん、今日学校昼で帰るから!!」
「何言ってるの!?絶対にダメです。はぁ、やっぱり。或斗あんた、夢でも亜ノ夜先生出てきたでしょ?寝言が聞こえてきたし。」
「げっ!?なんて言ってたん?」
「やばい、早くしないと最新作発売日に間に合わなーいってね」
俺は少し照れながらもあと10秒ほどで10分になる事は意識から外さずにいた。
────7時10分
テレビに移るアナウンサーの声
「続いてはこちら!本日発売の最新作『最弱宇宙人』の作者、亜ノ夜黄泉先生へのインタビュー!」
始まったインタビューを俺は目を離さずに最後まで見た。
そんなこんなで、インタビューも終わり今日の運勢コーナー。
「或斗!遅刻するよ!早くご飯食べて歯磨きして用意して!!」
「わかったよ母さん。」
俺は言われた通り、朝食に歯磨きに、用意に…。
───約20分後
「行ってきやーーす!!」
俺はそそくさと、今年度初の制服にローファーを履き玄関を出た。
「行ってらっしゃい!『最弱宇宙人』はお昼休みに買っとくから、あんたはしっかり授業を受けなさいよ」
「わかったよ、そんじゃよろしく〜」
俺は母が見えなくなる角まで小走りで向かった。
そして、街の有名老舗、星宮製菓の前
「或斗、おはよー!」
「よっ!翔」
彼は星宮翔、おれの親友であり、俺の"探偵"を行う上での欠かせない相棒だ。頭が良くて顔も良くて、オマケに星宮製菓の社長の姉の息子。将来安定が約束されたハイスペック野郎だ。
「今日、発売日だね〜、或斗はもちろん買うでしょ?」
そんな話をしながら俺らは学校へ向かった。