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元勇者だけど可愛くない後輩に振り回されてます。  作者: ルド
第2章:自重知らずの決闘と復活の魔王と勇者。
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魔王復活と勇者帰還 その6。

いきなり魔王戦突入です。

ちょっとややこしいスタートですが。

 かつて王女ミランダから聞かされた魔王とは、自然界で必ず発生する負の溜まり場――『害悪そのモノ』。


 召喚された異世界人が何度倒しても必ずまた蘇る。 

 姿を変えて災いの前兆として再び世界を闇に染めようとする絶対悪。


 しかし、その正体はかつて世界を救ったと言われる聖騎士。あるいは伝説級の魔法使いと言われている。他にも勇者の子孫、または王の隠し子などと色々な噂も書物として残されている。


 ――だが、そのすべてが真実には程遠いとも言われている。


 少なくとも実際に戦った俺は、アレが元人間だとはとても思えなかった。娘であるエミリアは魔族でも人間と変わらない性格をしていたが、父親である奴からは人間らしい感じはまったくしなかったのだ。


 龍崎は魔王を魔神の実験体と称した時、俺は魔神側の目的を理解した気がした。

 倒しても何度でも誕生しては世界を壊そうとする存在。……奴らは魔王という種族を一から育てている。

 

 わざと異世界人の召喚に手を貸して、神々の加護を強く受け継いだ異世界人と戦わせて経験を積ませる。

 召喚された異世界人がギリギリ勝てる程度に弱らせて、何百年も掛けてきた。その理由は……龍崎から聞かされた神々の戦いで納得した。



 やがて神々を圧倒する魔王を生み出すこと。

 それが魔神たちの狙いなんだと察した。

 



 ――だが!




「たとえ裏があったとしても、俺たちはまたお前を倒す! 亡霊はさっさと地に眠れ!」


「そういうことっ!」


『キィッ!?』


 視線の先で控えていた魔王に告げたのが合図だ。

 上空から狙った龍崎の巨大な岩拳が魔王を押し潰すように落ちる。激しい地響きで俺たちの体も揺れて地面が割れるほどだったが、潰された筈の魔王は健在。


『ギィィィィアアアアアアアアアアッ!』


「っ」


 潰しに来た巨大な岩拳を全身のオーラで粉々に破壊する。

 ゴリラのような剛腕が唸り赤黒い光を放つ。粉々になった岩が螺旋状に集まって魔王が腕を振るうと一斉に砲弾となって、空中の龍崎に向かって放たれた。


 森の奥にある霧の空間と奇妙で大きな遺跡がある。

 名は知らないが、魔力に似た力が集まっている溜まり場。魔王はここで漏れ出ている力を吸収していた。


 周囲にはモンスターがいないのは、間違いなくわざとであろう。

 俺たちがやって来たのにも気付いていたようだが、一切罠らしきものを張らずただ待っていた。



 此処での戦いも経験として次に引き継がせるつもりなんだ。



「……!」


 迫って来る岩の砲弾の大群を龍崎は両手から出した魔法陣の障壁で迎える。

 薄い障壁にしか見えないが、放たれている岩の系統を弱らせる効果でもあるのか、魔法陣に衝突した岩の砲弾は次々と砂に変化して宙に漂っていた。


『ッ!』


 両手を振るい龍崎は砂を操作すると砂塵の嵐を呼び出す。魔王を囲うように砂嵐で奴の視界を遮る。徐々に何重もの竜巻に変化させると竜巻の中心へ、バチンッと指を鳴らして生み出した火花を送り込んだ。


 そして内側から発生した大爆発が竜巻を吹き飛ばす。

 龍崎の指示で離れていた俺たちにも届くほどの強烈な衝撃。巨大な爆発は近くの遺跡の一部も破壊して魔王を爆炎の中に巻き込んだが。


『アアアィィィィ!』


 装着されている鎧の龍の顎門が爆炎を喰らって姿を現す。翼の砲身の全てが龍崎を標的にして、紅い光の球が一斉に発射される。全てが濃密な魔力の塊である、それらを――。


「ふっ!」


 前に出た零さんの無数の槍が撃ち消す。その隙に槍を持った零さんが魔王の背後に回って、後ろから膝へ鋭い突き攻撃をする。続けて背中から攻撃をしようとしたが、龍の鋼の尻尾が邪魔する。意思でもあるのか鞭のように零さんを弾いた。


「っ! 硬いか!」


「大丈夫! 私が!」


 すかさず入れ替わるように鷹宮が光の剣を振るった。零さんが攻撃した膝へ力一杯の横薙ぎを叩き込む。斬れるどころかヒビも入っていないが、着実に魔王の行動範囲を制限させていた。


『ギィッ!』


「――動く前に止めるッ!」


「はぁァァァァァ!」


 身体能力を強化した龍崎が剛腕を振おうとした魔王の腕を押さえる。見た目通りとんでもない力である為に長くは拘束出来ない。

 すぐに魔王も『魔力吸収』をしようとする。装着している機械兵のスキルも合わさって吸収量は格段に跳ね上がっているが、読んでいた鷹宮の光の剣が剛腕の赤い球が付いている箇所を攻撃。


「ここでしょう!?」


『ッ!?』


「ウォォォォォ!」


 衝撃で球体がバチバチと火花を散らして、捕まっている剛腕がビクリと震える。振り解こうとする力も弱まると龍崎が土で生み出した鉄のような太い鎖が絡まってくる。気合を入れた龍崎の雄叫びと共に締め上がって長い剛腕が反るように伸ばされた。


「逃がさないわ!」


 鷹宮も続いて2本の光の剣を生み出す。振られた尻尾を躱しながら攻撃した片膝を2本の剣で押さえ込んだ。限界まで押し込んで無理やり片膝を付かせる。

 振り返った魔王が空いている腕で鷹宮を攻撃をしようとする。手のひらに付いている発射口が光り始めたが、零さんがその攻撃を許さない。


「大人しくしていろ」


 零さんが持っていた槍の先が無数の鎖になる。攻撃を仕掛けた魔王の腕を縛ると龍崎とは反対方向へ引っ張ると、そこでとうとう暴れていた魔王に変化が生まれた。


『ギィィィィアアアアアアアアッ!』


 全身の装備が禍々しい光を発する。それは会場で二度見せた反応である。

 1度目は会場の全員のスキルを封じた時と、2度目は会場を崩壊させた全方位の攻撃の時、3度目は零さんの乱入で一時的に追い詰めれた時だ。


 二度とも機械兵が全方位から攻撃を仕掛けられそうになったか、追い詰められた時である。

 普段は1体1体識別するように対処するが、一定以上の負荷が掛かるか包囲された際のみ機械兵は全方位へ攻撃を仕掛ける。


「大地! 今だ行けっ!」


「はい!」


 それが鷹宮が言っていた弱点を突くことができる時。

 ゾンビのような魔王の思考がほぼ機械よりであるのなら、そこを突けれると零さんたちも頷いた。


「急いでッ! 発動まで五秒もない!」


「取り返してみせろ! 幸村君!」


 無数の魔法対策を搭載する機械兵ドレッド・レイダーには2パターンの戦闘方法がある。それが先ほど説明した1体1体の識別して戦うのと、追い詰められた際の超範囲攻撃。


 弱点とは切り替わる時だ。

 追い詰められて超範囲攻撃をしようとした瞬間である。そこを狙われると龍崎が攻撃したように一時的に魔法対策の吸収や耐性が麻痺を起こす。



「――結集せよッ! 魂まで繋がった六つの戦士たちよッ!」



 さらに超範囲攻撃を仕掛けようとする瞬間だけ、吸収が出来なくなり耐性も弱まる!

 つまり体内に入り込もうとするなら、そこを狙うしかない!

 ――麻衣の力は必ず返して貰う!


「『戦神(バトルマスター)』ァァァァァァァァッ!!」


『ギァァァァァァァァァァッッ!?』


 鎧を纏った俺は赤黒い光を解放する魔王へ拳を撃ち放った。

 胸元の龍の顎門に喰らわせるかのように。


ちょっと説明です。

鷹宮の世界では弱点を見つけても追い詰めれるほどの戦力が既に壊滅しており、滅ぼされるのを待つしかありませんでした。


弱点を突くことができたのは、知性まで戻っていない不完全な魔王だったからです。

機械に補助される形でしたが、それが仇となった感じです。



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