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元勇者だけど可愛くない後輩に振り回されてます。  作者: ルド
第2章:自重知らずの決闘と復活の魔王と勇者。
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ハッキングは犯罪です!と荒れ狂う後輩の沈め方。

真似できないと思いますが、一応の注意喚起(汗)

「全く貴様という奴は! 反省という言葉を知らんのか!」


「いやぁ〜」


「照れるな戯け! 全く褒めてない!」


 大地のクラスメイトである時一久。

 彼は今、風紀委員会室に連れて来られていた。

 椅子に座らせて両脇を3年の先輩達が見張る中、副委員長でもある2年のBクラス―――


「サボって1年女子の体育を覗くとは……!」


 松井桃矢。

 見た目は小柄であるが、実力は風紀委員会でもナンバー2。

 自然系の氷系の能力を扱えて、さらに規律を重んじるAクラスにも匹敵する生徒だが……。


「いやいや、ちょっと腹痛くて気分転換に見学しただけで」


「そんな言い訳が通ると思っとんのかっ! 腹痛いなら保健室行け!」


「サーセーン」


「(ブチっ)――キィィィィサァァァァマァァァァ!?」


 問題児が多い時一や鷹宮など、Eクラスの生徒とは相性が最悪であった。


「ま、まぁまぁ松井君! 堪えて堪えて」


「幸いプールを覗いたとか更衣室を覗いたとかじゃないんだ。今回はサボっていた件だけで先生方も納得すると思うし」


「あんまりこっちが大事にすると……ね?」


「くっ」


 意外なことに先輩達はあまり騒がせたくないようだ。確かに着替えなど裸を見ていたわけではない。被害と言える被害もほぼない。


 しかし、理由はなんであれ覗いた事実。ならば注意や反省は当たり前の筈だが……


「分かりました……!」


 少しも納得などしてないが、彼もその事情は知っている。

 不満顔を隠そうとせず乱暴に反省文を彼の机に叩き付ける。ヒヤヒヤしている先輩達に頷くとそのまま出口の方へ早歩き。


「生憎と今はとても忙しいんだ。僕らが戻ってくる前にちゃんと書いておけ。でないと……どうなるか分かっているだろうな?」


「はぁーい、わっかりました」


「ふ、ふん! 行きましょう」


 他の先輩方を引き連れて部屋を出て行く。先輩達も決して納得している訳ではないが、3年という立場だからか余計な不利益を持ちたくはない。大半はエスカレーターの進学だと思われるが、時一と敵対して学園側や社会側との歪みを生むようなことは一番避けたいのだ。


「何が目的でいったいどんなコネがあるか知らないが、やり過ぎれば今後はお前が見放されて今までのツケを背負うことになるぞ?」


「忠告は素直に受け取るが、松井弟。それ以上踏み込めばお前や姉がよろしくない不都合を買うかもしれないぞ?」


「貴様……それは脅しか?」


 去り際になってここ一番の緊迫する室内。

 焦り始める先輩達を他所に松井の周囲から冷気が漏れ出す。室内が冷気で満たされそうになるが……


「どうかな?」


 しかし、冷気が満たされることはない。時一の周囲から漏れる何かが冷気を解かして、そのすべてを一切寄せ付けようとしなかった。


「……」


「……」


 無言で睨み合う2人。一方的に殺意を向けられているだけだが、時一は平然とした様子で笑顔で応えるだけ。

 最終的に松井が先輩達に外へ強引に連れてかれたが、一触即発だったのは明らかだった。


「さて、やるか」


 風紀委員達の足音が消えるまで笑顔を維持。

 そして完全に去ったのを感じ取ったところで、その笑みが真顔へと一変。静かに靴をトントンと鳴らした。


【……】


「ああ、5分だ。待機してろ」


 足元の影から出て来たのは黒い亀。ぼんやりとした目で時一の言葉に小さく頷く。すると亀を中心に部屋全体が何か覆われた。


「どれどれ?」


 亀の能力で室内が外部と遮断されたのを確認すると、時一まず委員長が利用するデスクに腰掛ける。慣れた感じで引き出しの鍵を解錠して、そこから専用のパソコンを取り出し机の上に置いて開いた。


「『ハッキング』」


 電源を入れると当然のようにパスワードに引っ掛かるが、パソコンに触れながら不穏な単語を口にした。

 すると画面でパスコードが自動で入力される。顔認証もあるが、なんでもない風に顔を寄せると認証が完了された。


 その他セキュリティも潜り抜けると教員用のアクセスサーバーに侵入。

 僅か1分足らずで学園が管理している生徒の個人情報サーバーに入り込んだ。


「それじゃ……まず1年Eクラスから調べてみるか」


 1人ずつ個人情報ページを開いていく。

 その中には大地の後輩である麻衣の情報ページも見ていた。





「【ドラゴンウィング】ッ!」


 大人より少し大きめの2メートルくらい『白き龍』となった麻衣は翼を広げる。構えている相手チームに向かってジェット機のように空から急降下。俺はあちゃーと顔を手で覆った。


「ウッラャァァァァ!」


 急接近したところで回転して急上昇。

 瞬間、発生したソニックブームが固まっていた敵チームを埃みたいに吹き飛ばした。俺は軽く目を閉じて静かにお祈りした。


「まだまだ〜!」


 さらに旋回して帰って来ると再び風圧を乗せて急接近から急上昇する。 

 発生したエゲツナイ風圧が武器を構えてる敵をさらに蹴散らしていく。俺は静かに移動して審判員と控えている他の2人にも目配せした。


「アハハハハ! どうしたんですか! どうしたんですか先輩方!?」


 わー、超テンション高ーい。

 龍姿だから笑っている絵なんて悪役の大怪獣映画にしか見えない。……さてと、審判から目で許可を貰えたので試合エリアに入る。


「さっきまで態度はご立派だったのに、まさかそんなもんですかぁ!?」


 もうやりたい放題である。余程ストレスが溜まりまくっていたか、殺しに行ってないけど遠慮が欠片もない。既に相手チーム全員が戦意喪失してるのにお構いなしだった。



「アハハハハハハハハハハ! さらに行きますよ? くらえ! 【ドラゴンファン――」


「【クリティカル・カウンター】」



 割り込むタイミングはここだと思った。

 自身の【マスター・ブック】から発動させた『剣士(ソード)』で出した長剣で、守りの型を取って高く跳躍した。


「え? センパイ?」


 急降下して突進した白龍の麻衣と衝突。

 デカい顎門を剣の腹でカードした―――次の瞬間。



「ブベバッ!?」



 衝撃をそのまま麻衣へ。繊細なスキルであるが、タイミングはバッチリ。良い具合に衝撃が鼻に入ったか、変な豚声を上げて場外まで飛んで行ってくれた。


「ふぅー上手くいった」


 ヒロインだったら一瞬で人気が下落しそうな豚声を発していたが……。

 まぁ、いいか? だってあの後輩だし。


「よっ……と」


 ゆっくりと着地した俺は相手の方へ振り返る。

 唖然としているのでちゃんと状況判断が出来ているか怪しいところだが、とりあえず尋ねてみる。



「どうする? まだ続けるか?」



 返事はなかった。

 全員が一斉に首を左右に振ったので、今回の試合も無事に終えることが出来た。



 後輩の名誉が幾分か損失した気がしたが……。


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