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忠告  作者: 紳士
2/14

戦況

この城塞を中心に、山間に僅かに開けた盆地がある。西側には本国に通じる山道と山を上流とし、南へ抜ける川、相手方の分厚い陣がある。恐らくここだけで五千以上の兵が詰めているであろう。


南には手勢が少ないものの、山々が連なり、川も余程の達人でなければくだれない。少なくとも極少数の人員がくだるだけの船しか用意できない以上退路としては論外だ。


東は相手方の本陣と多くの攻城兵器の群れがあり、その背には彼等の祖国に通じる道がある。


北は比較的平地部分が多いが、陣を抜けた先が深い森であり、祖国に帰還するにはリスクが高過ぎる。


私は静かに相手の布陣を思い返し、また同じ結論へと帰る。


裏切りか、心中か、突破か、、、


仮に裏切るとして、見返りを提示するだけの資源はなく、本国に厚い忠誠を誓ってる部下達に悟られればそれで終わり。


城塞、部下との心中は、一時的に本国ではその忠誠心を讃えられるかもしれないが、所謂生き抜くことの放棄でしかない。


突破するためには、意気軒昂で重厚な包囲網を800しかない満身創痍の兵で突き抜けるしかない。


その八百で仮に突破をしたとして、真っ先に狙われるであろう兵糧の事、追撃してくるであろう騎兵の矛、机上で想定しうる全てを想定し、顔を上げた。


「指揮官殿、お呼びと聞いて参りました。」

扉を叩く音に続いて、力のある声が私を呼ぶ。


「殿は止せよ。入ってくれオルランド。」


オルランドは私を一瞥し、私の部屋に入ってくるなりエリアを見てため息一つ。


「この戦局でいつの間に女を囲ってやがったんだ?ずいぶん余裕だなぁ。」


詫びれもなくいつもの口調で上官である私にまくし立ててきた。


「この女性については俺も分からん。今日の昼過ぎに栄光を授けに来たと言われたがね。素性が知れんが、今はすがれるなら何にでもすがるさ。」


オルランドはふーんほーんと唸りながらエリアをまじまじと観察していた。


「ところで、だ。指示したものの確認は済ませたか?」

彼はエリアの事を気にかけながらも、私の問いに胸を打って答えた。

「おうよ、お前の読み通りだったぜ。」


私は少し安堵し、オルランドに話し掛ける。


「お前に任せたい役目がある。」



「そいつは随分攻めるねぇ。だが、どこかミスれば全滅だぜ?」

密案を聞き終わった彼は、しかめっ面で煙草に火を灯す。


「何もしなくても全滅だ。いいか?私の案は確かに失敗したらお仕舞いだが、生き残りうる可能性がある。お前も、俺も、みんなも!

今動かなければ兵糧が尽きて死ぬ。寄せ手に崩され死ぬ。後々動こうとしても兵糧や士気が今以下でこんなことやれるわけがない。


だから、その経験を、その命を私に預けてくれ。」


私は熱く、熱く、熱く、しかし静かに友に語りかける。


「あー、まあ俺はお前と違って馬鹿だからな。難しい事は分からん。


だが、みんな死んじまうのは、良くない。それは、良くない。

だから、お前を信じるよ。」


彼は私の顔を見て、熱苦しい笑顔を作って手を伸ばしてきた。

私は自分の倍はあろうかという大きな手を取り、誰より信頼できる友人と互いの無事を祈った。

登場人物紹介

オルランド

30歳

レオの悪友。幼い頃からレオと行動を共にした人物であり、レオの父に気に入られ軍に入った。父が船頭であったために、その手伝いをしており、その経験から高い身体能力とバランス感覚を誇る。

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