第4話 冒険の始まり
「さぁ、シンジ! 職業も決まったことですし早速旅にいきますよ!」
「おう! さぁ、輝かしい旅の第1歩を踏み出そうぜ!」
始まりの街のゲートに俺達は走り出した。
ゲートをあと一歩で超えるところにつくと俺達は手を握り一緒にジャンプした。
「「俺達の冒険はこれからだ!」」
着地すると二人でこう叫んだ。
最終回感あるけど気にしない。
……勢いで出てきたはいいけどこの先どうするんだ?
テンションぶち上がってたから聞きそこねたけど、彼女なんか考えていらっしゃるのかしら。
そう思ったので聞いてみた。
「何言ってるんですか、冒険者なんですよ! 旅の途中でハンティングしてたら何とかなりますよ!」
「それもそうだな! いやー冒険者だしな!」
「そうそう、冒険者なんですよ!」
二人で機嫌よく笑いながら、道を歩く。
「モンスターとかでちゃったりしたら、どうします?」
「倒すに決まってんだろ! 冒険者だしな!」
「ですよねー!」
そんな話をしたもんだから、俺らが歩いていた目の前にモンスターが飛び出してきた。
「キシャアアアアアアアアアア!」
緑色の鬼みたいなモンスターの群れが俺達に襲いかかってきた。
「シンジこれはゴブリンです! さぁ私達の力を見せてやりましょう!」
「おう!……ところでどうやって戦うんだ?」
「それはですね……冒険者カードに書いてます!」
「そうか! なら安心だな!……っておい! 敵に囲まれてんのに見てられっか!」
襲いかかってきてるのに悠長に見てられんわ!
そんな馬鹿みたいなやり取りをしている間にもゴブリンは攻撃をしてくる。
「えーっと、なになに。 冒険者カードに書かれているスキル名を叫ぶ。武器を持ってるならそれで攻撃……シンジー! 弓ありますか!?」
「ある訳ねえだろ!? つかなんでお前まったり読んでんだよ!」
ゴブリンに襲われながら彼女はひたすらカードを読んでいる。
ひょいひょいと身をかわし、ゴブリンのことなどお構い無しに自分に集中してる。
俺はゴブリンに追いかけられて必死で逃げているのに……。
「よし! わかりました! ……っていやああああ!! 敵に囲まれてるんですけど!」
「お前馬鹿だろ! つかさっきまで攻撃避けてただろうが! って痛い! うわあああ! ユエ助けてえええ!」
「うわーん! シンジー! 助けてええ!」
ボコボコにされる俺らの悲鳴がこだまする。
そもそもなんで何もしないで旅に出てんだよ俺ら!
馬鹿だろ! なにが冒険者だから大丈夫だ!
全然大丈夫じゃねーじゃん!
「……雑魚相手に何やってんだか」
冷たい声がした方向を見てみるとそこには、金髪のポニーテールの女性が剣を持って立っていた。
その女性は剣をかまえ颯爽とゴブリンを切り刻んでいった。
「……大丈夫? 駆け出し冒険者達。雑魚相手にあんなんなら冒険者やめて二人で仲良く村で農家でもやってろよ」
そして、そう言って去っていった。
助けてくれたのはありがたいけど初対面なのにあんなこと言うことないだろ!
最低な女だ、美人でスタイルいいのに性格があれじゃブスに等しい!
「なんなんですか! あの女は! 私達のことバカにしちゃって! シンジ天使の呪い発動していいですか」
ユエが怒りながら言ってきた。
だよな、お前も俺も同じ気持ちだよな!
よし、その呪いやってくれ!
……ちょっとまて、今お前呪いって言ったよな。
「お前! その呪いゴブリンにかけろよ!?」
「はっ! あまりにも怖すぎて忘れてました! そういえば私スキル以外にも色々魔法が使えました! 天使ですし!」
「馬鹿野郎! お前絶対戦えたじゃねーか! 転生したてのペーペーの俺はともかくお前は天使! しかも自称超有能だろ!?」
そう言うと涙目で俺のことをポカポカ叩いてきた。
「うわーん! そんな事言わないでよ! だってしょうがないじゃないかぁ!」
……こいつ、都合が悪くなるとすぐこうなる……。
天使といえどもまだガキンチョ、俺の冒険生活は小学生のおもり生活なのかよ……。
「あーわかったわかった。ごめんって、ほらユエ見てみろこの先に村があるってよ」
俺は目の前に見えた看板を指さす。
その看板にはこの先勇者の村と書いている。
「とりあえず、ここで休ませてもらって装備品整えてまた旅に出ようなっ! そして戦いの仕方とか学んで、あの女やモンスターどもを見返してやろうぜ!」
そう言うと機嫌を直して、彼女は歩き出した。
「そうですね! シンジ! さぁ勇者の村へGO! その勇者を仲間にして私たちの戦力もアップです!」
ニコニコしながら俺の手を引っ張る彼女。
勇者の村かぁ、強い勇者が俺らの仲間になる訳ない……とは言えず彼女にうんうんと頷く俺。
村に入って宿を見つけたので今晩はここに泊まることにした。
「二名さまですね、1泊二万テッサです」
……ここにきて俺は思い出した。
『俺達ここの世界の金なくね?』と。
ユエも思い出したみたいでぷるぷると震えながら俺の方を見る。
俺は首を横に振った。
彼女は泣きそうになりながらも俺の手を取りそのまま無言で外へ出ていった。
「お客様ー!? どうしたんですか!?」
俺達に響く店員の声が虚しくこだまする。
結局俺達はその日、泣きながら近くの森に野宿した。