第3話 ネクロマンサー俺!
「シンジこの世界に来た人がやる初めのことはなんだと思いますか?」
歩き出した俺に、そんな何気ない質問をしてくるユエ。
ふっ、そんなの分かっている。
ゲームでよくあるあれだろ?
「ジョブを獲得するだ、教会に行ってジョブを決めるんだろ?」
「分かってるじゃないですか、そんなわけで着きましたよ! この世界の冒険の入口! 正教会に!」
建物の前で大きく腕を広げ彼女は得意げに俺に紹介してくる。
「さぁ、冒険の始まりですよ! たのもー! 冒険者の登録に来ましたー!」
扉を勢いよく開けノリノリで入っていくユエ。
……彼女なんだかんだ言って楽しんでないか?
「ようこそ、ここは正教会。本日はどのようなご要件で? ……あら貴方は骨ですか。浄化ですねお任せを!」
……浄化だって!?
そんなのされたら消えてしまうんじゃ!?
「すいません! 違います! この人魔王の呪いで骨にされてしまったんです、魔王を倒す為に冒険者になると誓ったんです彼は!」
あわててフォローするユエ。
助かった、シスターの人も落ち着いてくれてよかった。
「なんだ、冒険者の登録ですか。若いのに可哀想にあなたが元の姿に戻れることを祈ります。それでは貴方にぴったりなジョブを……」
そう言うと、シスターは神に祈りを捧げた。
「神よ、この新たなる冒険者に力を与えください」
すると祭壇の真ん中にカードが出てきた。
そのカードに次々と浮かび上がる文字。
すげぇ、本当にファンタジーの世界だ……。
「お待たせしました……ヤマガミシンジさんですね。貴方は……ネクロマンサーになりました」
ネクロマンサー?
それってあの、死体とか操るやつだっけ。
俺のカードを見ると、シスターとユエはワナワナと震えていた。
「ネクロマンサー!? なんで魔王族のジョブが!? 彼本当は魔王族なんじゃ! 本部と各ギルドに連絡しなくちゃ!」
「ネクロマンサー!? 天使である私のパートナーがなんで死人を武器に扱う最低な職業についているんですか! 神様のばかやろー! 祭壇荒らしてやる!」
そう言って、彼女は祭壇を荒らし始めた。
おい、ばか、やめろ!
そんなことしたらまたお咎めをくらうぞ!
それより、シスター止めろ!
「違います! 俺は違います! ほら、この子が証明してくれますから!」
「はぁ!? シンジ何言ってるのですか!? 私が証明出来るわけないでしょう!」
「ほら、シスターにジョブ貰えよ。お前がまともなジョブなら俺の疑いも晴れるってもんだ、すいませーん! シスター彼女もお願いします!」
俺は大声で電話するシスターに頼んだ。
怯えた顔のシスターは恐る恐る祈りを捧げる。
「ちょっとぉ! 何してんですかバカシンジ! 私は天使ですよ! 天使というジョブなんです! それ以外ぴったんこなものはありません!」
「お連れ様は、アーチャーとなりました」
「なんですとぉおと!?」
唯一無二の職業じゃなかったのかよ……。
でもそんなことは言えなかった。
「人間の、職業。神聖なるこの、私が……」
だって、滅茶苦茶落ち込んでるんだもの。
「まっまあ、天使らしい職業じゃね? それにアーチャーってかっこいいし! 格好よくて可愛い天使様とかめっちゃ憧れの的だろうなぁ」
そう言っておだててみると、ユエは照れながら、
『そんなに言うなら、頑張ってみようかなぁ』
とデレデレしながら言ってきた。
よし、この天使小学生並に扱いやすいぞ。