20話 いざゆかんアルテミア!
「みなさん、悪のギルドを倒す準備はいいですか!? 根気とやる気そして憎しみさえあれば人は壁を打ち破れます! さぁ、いざ出発アルテミアへ!」
次の日俺達は朝早くに宿を出た。
なんでも、飛行船に乗って次の町に行くんだとか。
シャルルが言うには、歩いて行くと一日半かかるらしい。
町外れにある大きな滑走路に俺達は歩いた。
着いたら、滑走路近くに立てられてる小屋に入ってチケットを買おうとした。
「四人ですね、おひとり様3500テッサです」
「はーい」
財布を持ってるユエはガサゴソと財布をあさる。
3500ってことは四人で1万4000くらいか?
「……すいません、少々お待ちください」
ユエが青白い顔をしてこっちを首をサビたブリキのおもちゃの様に動かし振り返ってきた。
それを見て俺は嫌な予感がした。
「……お金が足りません!!」
信じ難い事実を突きつけてきた彼女。
……まさか! そんなはずがない! だって20万もあったんだぞ!
「シンジの死体入れ、なんかあれだからと言って結局あの店に5万置いてその場を去りました。二人の服代、シャルルが1万テッサ、シンジが2000テッサ。これで6万2000テッサです」
「ならまだあるはずだろ!」
「ところがどっこい! ホテル代10万テッサ! 誰ですかあそこの宿泊まろうって言ったの! あそこ割といい宿らしくてわりとお高かったんです! それと誰ですか! 夜にルームサービスでワインなんて頼んだ馬鹿は! そのワインで3万テッサなんですが!?」
……しまった、俺のせいだ。
昨日ミキと話した後眠れなくて頼んだったんだった、無料だと思ってたのんだら金かかってました、てへっ☆
つかなんでホテル代教えなかったんだよ! そのせいでついつい飲んじゃったじゃねーか!
「……私は早く寝たんで無実、シャルルも撃沈してたので同じく。ミキは年齢的に無実。つまり犯人はお前だ! シンジいいい!」
「すいません! 悪気はなかったんですううううう!」
鬼のような形相で指をさして睨んでくるユエに向かってスライディング土下座する俺。
「こうなりゃ仕方ないですね、シンジ歯を食いしばりなさい。バラバラにして遺骨として持ってきます。そうすれば3人分だけで済みますしね」
拳を用意して、笑顔でなぐりかかろうとしている彼女。
「ちょっとやめてよ! ユエちゃん! シンジをそんな風に扱ったらユエちゃん罰あたるよ!」
そんな彼女を羽交い締めするミキ。
小さなからだで頑張って暴走しかけている天使を止める。
「いーんですよ! 私天使ですし!」
「それでもダメっ!」
顔を赤くして怒る彼女をみてユエはぐぬぬと譲らない顔をしている。
だがミキも譲ってたまるかとユエを見つめる。
その熱意に折れてユエはため息をついて妥協案を出してきた。
「……仕方ありません。シンジは人間体で連れてきます。それじゃあシンジ骨1本貸してください」
そう言って、俺の腕の骨をポキッと取って、彼女はキョロキョロと周りを見始めた。
「おい、お前なにすんだよ」
「うーん、中々良さそうなのは、あっ! いい人がいました!」
彼女が指さした方向には、お金持ちそうなジェントルマンがいた。
シルクハットを被り白ひげを生やしたおじいさん。
そんな彼に彼女は狙いを定めて骨を勢いよく投げた。
「あいてっ! ……」
骨は彼の頭にクリティカルヒット、彼はそのままぶっ倒れた。
「よっしゃ、やってやりました!」
「おいいい!! なにやってんの!?」
「ふっ、忘れましたかシンジ? 勇者の村事件を!」
……忘れるわけねぇだろ!
まさか、あれを再現したのか!?
なんて非人道的なんだ!
この悪魔! 人でなし!
「……金がないなら、誰かに出してもらえばいいのです。強盗なんて真似は出来ませんからね」
充分これも強盗と同じくらい酷いことしてるんですけどね!
「さぁ、シンジ。自分のケツは自分で拭いなさい。貴方がやることは分かってますね?」
にこにこしながら俺を見つめてくる悪魔。
その圧に負け俺は彼を操る。
てくてく歩かせて、こっちに持ってきて彼の財布から5人分のお金を出して受付の人に渡した。
「……えーっと、お客様?」
「こちらの方達は私の連れでねぇ。さっきに行ってもらったんだがこの孫がうっかりをしてお金を忘れたんだ」
「えへへ、ごめんねおじーちゃん!」
一人二役をこなすユエにジトっとした目線を送る俺たち三人。
俺達は人の金で上手く、飛行船内に乗り込みこの街を後にした。