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とある青年のレベル上げ ~グラド・サーガ~  作者: あいうえおさん
第7章 残り香は、ただ漂うままに 《エンブレム・ヘラウィザード》
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レベル91 導け 《パーフェクトリード》


「ハァハァ・・・やべぇな・・・!!」



『あら、先程の勢いがなくなってるわよ?あれはただの虚勢だったのかしら。』



タイムリミットの2分がもうすぐ過ぎようとする今、形勢は何とシル・ガイアの方に傾いている。

確かに補助魔法を封じた所までは良かった。しかしさすがにカイとシェリーの二人ではいくら補助魔法を封じたとしても無理があったようだ。

シル・ガイアは補助効果無しでも驚異的なステータスを誇っている。その対処が二人だけでは足りない、ということだ。


さらに最悪な事に、カイがもうすぐクールダウンに入ろうとしている。

そしてシェリーは、未だに通常通りの姿。



獣騎士は、未だ現れず ―――




『・・・どうやらあなたは限界のようね。しかもあなたは大きな墓穴を掘っているわよ。』



「・・・だろうな。」



シル・ガイアにはまだ『ケミックステル』の効果が残っている。つまりシル・ガイアは自他ともに魔法攻撃が通じない。

確かにこれでシル・ガイアは回復手段を封じられた。しかしそれ以上に、こちら側の攻撃手段を大きく封じられることにもなるのだ。

もしこのままカイがクールダウンに入ると、残りはシェリーとアリナとリオナ。しかしそのうち2人は攻撃手段を封じられたも同然、よって貴重な攻撃役を一人失ったわずか一人の状態で立ち向かわなければいけない。

さらにその攻撃役さえも失えば事実上のゲームオーバー。時間稼ぎの意味すら失うのだ。



そして、とうとう・・・



「・・・やべぇ、時間切れだわ。」





カイが再び、クールダウンに入ってしまった。




『ふふッ、これで本当にお終いのようね。一時は少し遅れを取ったけど、大したことなかったわ。』



「・・・本当にマズいわね。私達の場合、まずはあの『ケミックステル』を何とかしないと・・・」



『無駄よ。またかけなおせば良いだけだもの。回復なんてその合間にやればいいだけだわ。』



先程の戦闘で確かに『ケミックステル』はシル・ガイアの補助魔法を封じる役目を担っていたため、大いに活用が出来た。しかし現状況では、圧倒的な火力不足がそれ以上に浮き出てしまった。

あの時、少しでもカイに的確な指示を出せていたら ―――

あの時、少しでも他のメンバーを動かせていたら ―――



『・・・こうなったのも全てはあなたが原因のようなものね、リーダーさん?』


「ッ・・!!」


『あの時あなたはそこの彼に、まるで全てを委ねるかの如く指示をした。そんなの、指揮官がする指示とは大きくかけ離れているわ。』



その通りである。本来リーダー成る者は、他のメンバーの特性を踏まえたうえでそれに応じた指示をしなければならない。しかし先程のミオンはカイに戦闘の責任を譲った。なのであの時のリーダーはミオンではなくカイだったのだ。

『だから戦闘方法は自分の好きな形で大丈夫!』 ―――

このような指示を、すべきではなかった。



『・・・あなた、どうやら前にもこのような経験をしたかのような表情ね。』


『では今回は同じ失敗をしてしまったのかしら?』


「・・・」



何も言い返せない。



『リーダーの実力不足はパーティーの実力不足と同じ意味よ。どんなに優れた手駒があっても、使い手がダメなら結局その駒も役立たず。』


『その証拠に、私との戦闘であなたは今まで空気同然。居てもいなくても変わらない、ただの空気だったわ。』


「・・・ッ」




悔しい。しかも一切言い返せないことがもっと悔しい。

確かに全てシル・ガイアの言う通り。メンバーは全員それぞれの強さを持っていて、そして動かし様ではもっと化ける可能性を十分に秘めている、本当だ。

しかし、その使い手が何もしなかった。数少ない指示だってどれも抽象的なものばかり。


・・・あれ?わたし・・・



このパーティーの・・・  ―――




『今のあなたはまさに ―――



やめて



『このパーティーにとって ―――



言わないで



『私以上に厄介で ―――



やめてッ!!!



『最悪な敵でs ―――

「いい加減にしろぉぉぉおおおおお!!!!!!!!」




ふと自分の横を見ると、自分のパーティーメンバーの一人が涙目で魔力を召喚し始めている・・・



(アリナちゃん・・・)



ここまで言われているのは私なのに、そこまで私のために怒ってくれて

でもアリナちゃんの魔法は絶対に効かない まだケミックステルの効果は残ってる

この攻撃は、無駄撃ち・・・



意味のない、自分たちの首を絞める、無駄撃ち ―――




(ッ・・!!)



「『スーパーのv ―――

「アリナちゃんダメッ!!!!!!」




気付けばミオン、アリナの持つ杖をグッと握りしめていた。



「ダメよ・・・ダメよアリナちゃん・・これは無駄撃ちになっちゃう。相手は一切の呪文が効かないんだよ・・・」


「で、ですがッ・・あそこまでお姉さまを言われてッ・・・我慢できませんッ・・・!!!」


そんなアリナの表情は、本当に悔しそうで

自分が受けた以上の屈辱を受けたかのようで




♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢


何とかしなければいけない



この場を乗り切るために



彼女の涙を無駄にさせないように



しかしその方法が分からない




―――  どうやらお困りみたいだね  ―――



え、誰・・・



―――  そんなに悔しいかい  ―――



・・・悔しい



―――  ・・・では何がしたい  ―――



皆に的確な指示を出せるように、個人のパワーが欲しいんじゃない



―――  つまりは『リーダー』になりたいわけだ  ―――



そう・・・私は



・・・リーダーになりたい!!!




―――  しょうがないなぁ  ―――



―――  君にチカラを授けるよ  ―――



―――  これで戦いの流れは君のものさ  ―――



・・・うん、ありがとう



―――  さぁ、行っておいで  ―――



―――  その悔しさを糧にして  ―――



―――  仲間を 世界を  ―――




―――  救ってあげて  ―――







『スキル3;「パーフェクトリード」が発動しました。』





♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢



「アリナちゃん・・・もう大丈夫。」


「お、おねえさま・・・?」


「もう大丈夫、心配かけてゴメンね。」


「・・・?」



そういうミオンの目は、先程のような迷った目をしていない。

何かを考えるように、ただ一点をじっと見つめていた。




『(雰囲気が・・・変わった・・・・?)』





「・・・みんな。私の指示、聞いてくれるかな?」






『スキル3;「パーフェクトリード」が、発動します。』





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