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とある青年のレベル上げ ~グラド・サーガ~  作者: あいうえおさん
第7章 残り香は、ただ漂うままに 《エンブレム・ヘラウィザード》
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レベル90 奇策 《ケミックステル》


リオナのダウンとカイの復活で、何とか耐久戦はもう少し続けられそうだ。


しかしミオンは思い知った、シル・ガイアの底など見えないほどのその体力に。

リオナの魔法攻撃は域を越えて強力なものであった。証拠は先程まで自分の目に映っていたあの光景。


その攻撃を少なからず受けているはずが、今では自分たちに攻撃を仕掛けてきているというのだ。

そしてまたさらにミオンは不安を募らせている。それは言うまでもない、レイのことだ。


先程のギアボロス戦でカイが言っていた古代魔法『パウザーリ』の解除方法、



『「術者を倒すこと」・・・で、間違いないか?』



ギアボロスは確かにカイが倒した。討伐の通知だって来ていた。しかし現在レイはまだ来ていない。

レイだって先程でおそらく本来の意識が復活したはずだ、レイならば瞬時に他のメンバーがいないことに気づくだろう。そしてスキル『ルート』でも使って居場所を特定し、魔道具かなんかですぐに飛んできそうなものだが。

それとも解除より先にタイムオーバーを迎えてっしまったのだろうか。


しかし、そんなことを考えている余裕はないようだ。



「・・・母さん、そろそろなんか指示した方がいいぜ。今のリーダーって母さんなんだろ?」


「あ、うん・・・そうだね!」



というものの、カイ自身はミオンが指示する前に攻撃態勢に入っていたようだ。おそらくシル・ガイアの特性や攻撃パターンなどをスキルを使って見定めているのだろう。

カイもこのブースト的な状態にはタイムリミットがある。よってそのモードに入ってしまえば時間的な面も考えなければいけない。

なので、


「カイくんは今重要な戦闘員だよ。だから戦闘方法は自分の好きな形で大丈夫!」


「・・うしやるかッ!」




『・・・どうやら本当に厄介そうね、あなた。どことなくあのベルディアくんに似てるわ。』


「・・・へぇ、久々に強ぇヤツが来たモンだぜ。あまり読めない敵は久しぶりなんでね。」


『あら、それは褒められているのかしら?でもイマイチ嬉しくないわね。』


「・・・ふぅ」


『・・その生意気な態度、癪に障るのだけれど?』


「それさっきのヤツにも言われたわ。まぁ自覚あるから別に何とも思わんけど。」


『へぇ、図太いのね。でも“ヒートアップ”って言葉、知ってるかしら?』


「何のことだ?」



『怒りでチカラがアップするってことよッ!!!』



そしてシル・ガイアの急進撃 


『その生意気なプライド、へし折ってやるわッ!!!』



シル・ガイアは両手に暗黒の魔力を召喚すると、そのままカイに向かって振り下ろした。



『 魔光弾(デスブレット)ッ 』



!!!!!!!!!!



地に大きな衝撃が走り、衝撃風がまるで波紋のように広がっていく。




「・・・へぇ、やっぱさっきのやつとはケタが違ぇんだな。」


カイはそんな攻撃を、なんと剣一本で受け止めているのだ。


『・・・あなたも、少しはマシに楽しませてくれるようね。』


「生憎他人から評価されるのあんま好きじゃねぇんだわ。特に悪魔からとか、正直ムリ。」



カイは持つ剣でシル・ガイアを振り払う。



『あら、それはごめんなさいね。でも、最初はあなたのその態度から来たものよ?』


「・・・まぁ、だいぶ分かってきたわ。じゃ、今度は俺のターンだな。」



そういうとカイ、今度は剣を背中に戻し、両手に魔力を召喚し始めた。



『・・・あら、その強そうな剣は使わないのかしら?また随分となめられたものね。』


「『武器を持つ=強くなる』っていう考え、やめた方がいいぜ。」

『うるさいッ!!!!!』



そしてシル・ガイア、再び進撃を。



「・・・これだから血が上るタイプはやりやすいんだよ。」




シル・ガイアは、呪文を唱えた。


『 「デスラグーン」ッ!! 』




暗黒のチカラがあたり全体を包み込む、暗黒魔法最強呪文。

ドーム状の空間でカイを包み込むと、暗黒のスペルが豪快に爆ぜる。

・・・が、



「・・・あんたは血が上ると呪文攻撃になりがちなタイプか。だったら対策はいくらでも立てられる。」


『・・・何する気?』



カイは両手の魔力を自分に向けて、そしてそのまま呪文を唱えた。



「 『ケミックステル』っと。」



ケミックステルとは特殊魔法の一つである。自分周囲に透明の霧を発生させることにより、一切の呪文効果を消し去る効果を持つ。

これは敵からの呪文攻撃だけでなく、味方の補助魔法も対象に入る。よって今のカイにはミオンなどからの治癒魔法は届かない。

しかしこの魔法、特殊魔法ではあるがそこまで習得の難しいモノでもない。というのも、基本職の狩人レベル35で習得できる職業魔法の一つだ。

といっても味方の補助効果まで届かないせいで、ほとんどの冒険者はこの魔法を習得したがらないのだが。



カイの周りに透明な霧が形成される、と同時に『デスラグーン』のスペルはカイの辺りで次々とただの霧に変わっていく。



『ッ・・・小賢しいマネしてくれるじゃない。でもいいの?これで回復手段はなくなったのではないかしら?』


「・・・ホントバカだな。あんたにとって回復手段は魔法しかねーのかよ。」


『ッッ!!!!』


「・・・じゃあ次も俺から行くわ。ほれ、『ルジェベリ』。」



次にカイ、今度は敵の防御力を下げる『ルジェベリ』を発動。ちなみに一切の呪文効果が届かなくなったところで、何せ自分が魔法を使えなくなるわけではない。

ケミックステルは、他方から呪文効果と自分への呪文効果が届かなくなるだけだ。


ならば、と考えたのだろう。シル・ガイアは呪文を唱えた。



『 「ケミックステル」!!どう?これでその呪文も届かないわ!! 』



そして透明の霧がシル・ガイアにも形成され、ルジェベリのスペルは霧へと化した。

シル・ガイア、もとい松嶋芽衣の職業は上級職のアークレンジャー。よってアークレンジャーになるには基本職である狩人をある程度習得する必要がある。なのでシル・ガイアもケミックステルを使えるのはそこまで意外ではない。

さらに言えば、カイはこの時を待っていたのだ。



「・・・ハハッ、ホントにバカだなあんたは。」


そしてカイ、次は・・・



「よしッ、そこのキューピットちゃん!一緒に戦おーぜ!!」

「え?あ、うん!」



シェリーを自分の横に呼び、そして次にはシル・ガイアに進撃する。



「おら喰らえッ!『竜閃炎(イグナイトソウル)(カイ)』ッ!」

光雷雨(ホーリーシャワー)ぁぁ!!」



烈火の軌跡と閃光の嵐が、同時にシル・ガイアへと放たれる。

カイが放った斬撃はともかく、シェリーが放った無数の矢は四方から向かってくる。



『ッ!こんなの全部避けてやるわッッ!!!』


シル・ガイアは素早さを上げるため、呪文を唱えた。



『 「レランデ」ッ!! 』



しかし、



『素早さが、上がらない・・・!!??』




そして次の瞬間、



二つの攻撃が、諸に直撃した。




!!!!!!!!





『ハァハァ・・・クソッ・・・!!』



「ハハッ、どうだ?魔法を使えない気分は?」




シル・ガイアは先程発動したケミックステルの効果で、レランデ発動による素早さ向上の効果が届かなくなった。

しかしそのようなことは少し考えれば無駄撃ちを避けられたはずだ。でもなぜしなかったのか?

それは、その冷静な判断をさせないようにするためにやってきた、カイのあの態度が効いたのである。


怒りが先行すると呪文攻撃になりやすい、そしてシル・ガイアは多くの補助魔法を習得している。

確かに多種多様な補助魔法を使われるとかなり厄介。これを封じたかったのだ。

さらに、




「・・・んであんた、回復できんの?」



『ッ・・!!』



「・・・だよなぁ、出来ねぇはずだ。」



『・・・!!』



「だってあんたが言ったんだもんなぁ、『呪文が届かなくなったら、回復手段がなくなるんじゃねーか』って。」



カイは、回復手段まで封じたのだ。



「・・・よし、これで少しはやりやすくなるわ。ま、増強効果だけ消しただけでも良かったんだけどな。」



『ッ!!・・・まぁいいわ、呪文が出来ないならひたすらあなたたちを叩き落とすまでよ。』




シル・ガイアは一呼吸を置くと、再び拳を握りしめて軽快なステップを踏み出す。今ので頭が冷えたのだろうか、怒りで開いた瞳孔が今は落ち着いている。



「・・・こっから本番みてーだな。そこの小さい人(←アリナ)、見せ場奪っちまって悪ィな!」

「なッ!あなた先程も私のことそう呼びましたよね!?やめてくれません?!」




「(・・・クールダウンまであと2分ちょいか。)」





「(そこまで持てばいいけどなぁ・・・)」





獣騎士は、未だ来ていない。




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