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とある青年のレベル上げ ~グラド・サーガ~  作者: あいうえおさん
第7章 残り香は、ただ漂うままに 《エンブレム・ヘラウィザード》
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レベル88 融合 《エンブレム・ヘラウィザード》


“焔王妃” シル・ガイア ―――


姿を見るのはクルスオード帝国以来、しかしあの時醸し出ていたオーラは、決してここまで強力なモノではなかったはずだ・・・

しかし今のシル・ガイアから出る強力なオーラは、あの時よりも断然強いものであった。

さらに姿も悪魔の姿にかなり近づいている・・・



『・・・今日はベルディアくんいないんだね。ちょっとつまらないかも。』


「随分となめられたものだね・・・こっちには蒼騎士(フェンリル)までいるのに。」


『あら・・・ではあなた達だけで勝てるっていうの?言っとくけど私、かなり強くなったんだけど。』


「ッ・・・」



ミオンの言葉が詰まってしまうのは、やはりこの前よりも強力になったそのオーラからだろうか。



『まぁいいや、このチカラを試すいい機会かもしれないからね。』


「?・・・」



次の瞬間、シル・ガイアの胸部が紫色の光を放って輝き出した。何か覚醒状態にでもなるのだろうか。

しかしその紫色の光が、段々ととあるカタチを映し出していくのだ。


刻章(コクショウ)である。



「まずいわ・・・何かと融合したのかしら・・・!?」


リオナから漏れたこの言葉で、ミオンはとある事実に行きついた。


最悪だ。

もしそれが本当のことだとしたら。


クルスオードの時よりも断然強力となったそのパワー・・・当然だ。

あの時よりもはるかに強大なそのオーラ・・・そんなの当たり前だ。




なんせ今のシル・ガイアは、




――― あの芽衣さんと、融合してしまったのだから





ついに二人の“松嶋芽衣”が、“焔王妃”になってしまったのだ ―――







♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢


恐れていたことが、ついに起こってしまった。

二人の松嶋芽衣が、堕ちてしまったのだから。



「(まずい!でも言い伝えじゃ三人の獣騎士も召喚されるはず・・・!レイくんはともかく、フィルさんはどこなの・・!?)」


ミオンは必死にフィルの姿を探すが、その姿はどこにもない。

ここにいるのは蒼騎士(フェンリル)こと、このシェリーだけ ―――


「・・・大丈夫よ、言い伝えは本当だわ。」


横でリオナがそうつぶやく。


「あの言い伝えは本当よ。今はまだこちらの召喚が遅れているだけ、すぐにくるわ。現にシェリーちゃんはまだ騎士覚醒をしていないでしょ?」


「つまりそれって・・・」


「えぇ、耐久戦よ。」




『・・・あら、誰かと思えば“煉獄の魔女”さんまでいたのね・・・気が付かなかったよ。』


「・・・そんな昔の異名、知ってる方が驚きなのだけれど。」


“煉獄の魔女”とはリオナのかつての異名である。

かつてのリオナは炎の賢者であり、とある島に住み着いた凶悪なモンスターたちを島ごと焼き尽くしてしまったことから着いたこの名だ。これはまだアリナが生まれる前のことであるが。



『当然よ。ちょっと興味深い人は覚えるのが趣味なの。ちょっとは楽しめそうね・・・』



「・・・みんな、そろそろ準備よ。私達の目的は“時間稼ぎ”、出来るかしら?」


「「「はい(うん)!!」」」


「・・・そしてシェリーちゃん。」


「?」


「あなたは決して倒れちゃいけないわ。あなたが倒れたら終わりよ。」


「ッ・・・!!!頑張る・・・!!」ググッ




『・・・じゃあ始めようかしら?といっても次に残るのは一人だけだけどね。』



するとシル・ガイア、前に掲げた左手に魔力を現出させ、その魔力をさらに肥大化させる。

禍々しい漆黒の魔力がうなりを上げて膨張していく・・・

万物を凍らせる闇の氷結、


――― 魔氷波(デスケルビム) ―――



『ふふッ・・全員凍りなさいッ!』




!!!!!!




そして次の瞬間、シェリーの視界は闇の氷たちで埋め尽くされた。



『ふふッ、煉獄の魔女って言ってもこれは溶かせないのね・・』



シル・ガイアは段々とシェリーと距離を詰めていく・・・


「ッッ・・・!!!」



シル・ガイアが近づくにつれ、シェリーの身体は震えが止まらない。

先程リオナに言われた、『あなたが倒れたら終わりよ』。それは文字通りに意味で、本当の事なのだ。

リオナやミオン、アリナが戦闘不能になってもまだ大丈夫なのだが、シェリーは蒼騎士(フェンリル)である。

3騎士の一人でも欠けると、もう歯が立たないのだ。



しかし、これはその状態まで一歩手前まで来ているのだ。




『ふふッ・・・さぁシェリーちゃん、私と一緒に来てもらおうかな?』


「ッ!・・い、いやだッ!!」


『あらどうして?今までずっと旅してきたじゃない。』


「・・えッ?」


「私は松嶋芽衣、あなたが“芽衣お姉ちゃん”って呼ぶその人なんだよ?」


「・・・そうなの?」


違う、今のシル・ガイアにあの芽衣の意識は飲み込まれている。


『そうよ、だから一緒に行きましょ。楽しいわよ・・・!!!』


「ッ・・・!!」




「分かったよ・・・・・!!!」



シェリーは、今のシル・ガイアがメンバーだった芽衣とクルスオードのシル・ガイアの融合体であることを知っている。しかしそれが仇となってしまった。

シェリーは仲間と認識すると、ガードを緩めてしまう習性がある。融合体だと知っていたので、今のシル・ガイアをあの“芽衣お姉ちゃん”と認識してしまったのだ。

“芽衣お姉ちゃん”は、もういないというのに。


シェリーもゆっくりと、しかし確かにシル・ガイアの居る方へ。



『ふふッ、いいわよシェリーちゃん・・・こっちに来てぇ・・・!!!!』



シル・ガイア、後ろに隠した右手に暗黒魔法のスペルを召喚している ――



「うんッ・・・お姉ちゃんッ・・・!!!」



『(来なさいッ・・もっと来なさいッ!その身を摘んであげる・・・!!!!)』





そして二人の距離が1メートルを切った、



その瞬間 ――


「 輝空閃(シェロスパーダ)ッ!!! 」

『ッ!?』




シェリー、シル・ガイアの胸中に光矢を放ったのだ。





『ッ!!・・・よくもやってくれたね・・・・!!!』


「ふんッ!あんたがお姉ちゃんな訳ないじゃんッ!!お姉ちゃんを返して!!」



結果的に言うと、見事なフェイントである。

シェリーは純粋無垢な性格ゆえに、他人にウソがあまりつけない。その性質、芽衣を取り込んだシル・ガイアは当然認知済み。

それを利用した口説きを、シェリーが逆手に取ったのだ。

といっても、最初からそうしようと思っていたわけではない。シェリーは途中まで本当に芽衣だと思っていたのだ。

しかし近づくにつれて見えてきたのは、段々と狂気をあらわにしてくるシル・ガイアのその表情だ。

自分が知る芽衣は、そんな表情を見せていなかった。



『・・・甘く見てたわあなたのこと、口調もそれなりに似せたんだけどね。』


「もうだまされないよッ!」


『・・・でも、ここにはあなたと私しかいないわ。つまりあなたと私の一騎打ちってわけ。』


「うぅッ・・・!!」


『他のみんなは私が全て氷漬けにしたわ。もう二度と動かないただの ―――

「残念だったわね。」



『・・・?』




そして次の瞬間には、氷漬けで一臂たりとも動かなかったリオナが、氷を砕いてシェリーの横に並んでいるのだ。


「私、この攻撃結構受けてるのよね。だから対策なんていくらでもあるわ。」


『・・・』


「そして、他人のそれを解除する方法も、ね。」





そしてシル・ガイアの前には、氷漬けにしたはずの3人が武器を構えてこちらを伺っている。



『・・・少しは倒しがいがありそうね。いいわ、相手してあげる。』




『あなたたちの最期を、残酷な形で見届けてあげるわ・・・フフフッ』





そして4人は、動き出した。







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