レベル87 降臨 《クイーンデビル・アピア》
カイの能力は現在のレイとほぼ同じくらいである、戦闘に差し掛かる前にカイがそんなことを言っていた気がするミオンの心情。
さらに先程のスキルとレイ程の判断能力が彼にもある程度備わっているなら、勝ち目は前回より見えてくる。というのも、今のギアボロスにはカイの行動パターンやある程度の能力値、そして弱点が一切不明な状態だ。ところでなぜレイたちの能力などが分かったのかは未だ不明なのだが。
とにかく、現在カイの方へ高速進撃を仕掛けるギアボロス。
『 「抑制」ッ 』
「そう来ると思ってたぜ。」
カイは本当にギアボロスの行動が読めているみたいだ、ギアボロスが突撃している時にひそかにブースト状態にしていたのはこのためのようだ。
先程のギアボロスの技・『抑制』、あれは一定時間敵の動きをかなり下げる制限属性の特技である。
カイはブーストが掛かった己の身体を使いこなし、いとも簡単にギアボロスの前をすり抜ける。
「ッ」ススッ・・
その動き、まるで風になびく一枚の布地のようになめらか。
『ッ!!』
「ほらもっと来いよ?」
すり抜けた先で、カイはギアボロスの背中に挑発をかます。
『フザケンナッ!』
ギアボロスは方向転換、真後ろのカイへ再び足を踏み出した、
が次の瞬間、
ドボッ
『ハァ!!??』
状況を説明すると、ギアボロスが振り返って足を踏み出した瞬間にギアボロス真下の地面が崩れたのか、そのままずり落ちて沼にはまっている所だ。
本来そこには沼などなかったはずだが・・・?
「『ボトムレススワンプ』。すり抜ける時に罠を仕掛けたんだよ。」
『クソがッ・・・・!!!!』
カイが横をすり抜ける時間、コンマ1秒もないくらいだったのにだ。
神レベルの早わざ炸裂、ギアボロスは現在下半身が沼の中に埋まっている。
「ほれ次、『シラザイラ』。」
カイは今度、ギアボロスが埋まっているその地面に氷魔法を撃ち出した。
ギアボロスに直接的なダメージは来なかったが、ギアボロスが埋まる地面は氷でさらに強固に固まっている。
『動けねぇ・・・!!!』
「さて、てめぇの動きはこれでかなり封じられたはずだ。じゃあこんくらいで聞いてこうか。」
『ッ!!・・・なにを聞くつもりだ・・?』
「俺の親父にかけた古代魔法とやらの解除法についてに決まってんだろ。それ以外でてめぇに興味なんてねーよ。」
『はぁ・・・!?おやじ・・?誰だそりゃあ・・・』
ギアボロスがこう聞くのも仕方がない。なぜなら自分が古代魔法を掛けたレイを、ギアボロスはどう見ても子持ちの父親に見えないからだ。
ピンチ状態の敵キャラお馴染みのすっとぼけパターンなのではない、ギアボロスは本当に分からないのだ。
「・・・ほう、どうやら誰なのかが分かってねーみてーだな。じゃあ古代魔法の解除法だけでも聞かせろや。」
『は、はぁ?そんなんの知るわk ―――
「『術者を倒すこと』・・・で、間違いないか?」
カイは相手の表情から心情や考えを把握できるスキルを持っていることをお覚えだろうか?
いくらギアボロスがすっとぼけをかまし続けても、カイにはそれが見えてしまう。
『ッ、クソがッ!!なぜ分かるんだ!!この前のヤツと同じ風なスキルなのは分かってるのにッ!!』
「これが『実力差』ってヤツだ、観念しな。」
とどめの一撃の準備、カイは再び持つ剣をギアボロスの前に構える。
そんなカイが持つその剣は、どことなくレイが持つ剣より強力なオーラを放っているのは気のせいだろうか・・・
しかし、まさにこの瞬間
とある出来事が起こっていた。それは
戦闘開始から、3分が経ったことである。
「ッ!!やべ・・」
『クソッ!!・・・ん・・・?』
カイが先程ギアボロスを挑発した形で言った言葉、『3分で片付けてやる』。
これはただの挑戦状ではない、カイは3分間かなり強力になる代わりに10分間のインターバルが必要になるスキルを持っている。
つまりこの3分間が終わると今までのチート的能力の効果は終わり、10分間のクールタイムに切り替わってしまうのだ。
そしてこれは、形勢が逆転することになる ―――
『!!おいおいお前の弱点が急激に見えてくるんだが・・・!!!』
ギアボロスは効力を失った氷漬けの沼地を難なく抜け出し、クールダウン状態のカイに反撃を仕掛ける。
が、またその次の瞬間
「 『輝空閃』!! 」
カイのクールダウン突入により意識がそちらに大きく傾いたギアボロスに、一瞬の隙が生まれたのを見逃さない。
シェリーはギアボロスにヘッドショット。
『ッ!!!!!???』
『ギアボロスを討伐。それぞれ経験値6500、0ゴールドを獲得。
スキル発動;レイ=ベルディア、シェリー=クラシアは経験値26000を獲得。』
ギアボロスを倒した4人、しかし不穏な空気が漂い続けるのはどうしてだろうか。
戸惑う4人、目の前の神殿は突如邪気を爆発させる・・・
「え・・これ危ないんじゃない・・・!?」
するとなぜかアリナの母・リオナが移動魔法で4人の元に。
「あれ!?お母さんなんで?」
「今すぐ逃げなさい!!ここは危ないわよ!!」
今から起こる事を説明する。
焔王妃、降臨 ―――
「早く!!アリナ移動魔法を掛けるのよ!!」
「わッ分かった!!」
アリナはリオナと共に移動魔法『トレイフ』の詠唱を始める。
いくら急かすとはいえ、詠唱はしっかりと唱えていかねばならない。早口の詠唱は効果を発動しないからだ。
この点がネックとなり、次の瞬間には発動を妨害されてしまう。
『・・・逃げちゃ、ダメじゃない・・・・・!!』
「ッ!?」
移動魔法のスペルがいとも簡単にかき消される。5人は簡単に脱出手段を奪われる。
しかしあそこまで簡単に妨害されることはよっぽどの強敵でない限りありえない。
しかしそれ以上にある3人は、妨害したその者の存在にただ驚くだけであった。
『さぁ、楽しみましょ・・・!!!』
クルスオード帝国の時よりもはるかに鋭い眼光とあふれ出る程の量のオーラを放つ。
『“焔王妃”シル・ガイアが現れた。』
次回投稿日;未定