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とある青年のレベル上げ   作者: あいうえおさん
第7章 残り香は、ただ漂うままに 《エンブレム・ヘラウィザード》
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レベル84 救世主 《ミライジン》


「んんッ・・・」



ふと目を覚ます、まず視界に入ってきたのは今日と同じ宿屋の天井。そして横には自分の容態を心配するパーティーメンバーたち。

小さい頃から良く知る幼馴染もいればロリガキロリガキといじってきた幼女賢者もいて、またその横にはお転婆な性格の妖精アーチャーもいる。

・・・しかし、パーティー最強疑惑がかかる最後のパーティーメンバーの姿はそこにない。


それを認識したと時、視界の横から声が聞こえ出した。



「レイくん!!調子はどう!?大丈夫なら今すぐに芽衣さんを助けに行かなきゃ!」

「芽衣さんがさらわれてしまいました!早く行きましょう!」

「はやくはやく!」



3人の声が入り混じる中、それを聞く側のレイは何も思うことが無く、

次の瞬間、こんなことを言い出すのだ。





「・・・どーでもいいや、それ。」




部屋の空気が、一瞬で凍り付いた瞬間だった ―――




♢ ♢ ♢ ♢ ♢


「え・・・レイくん今なんて ―――

「だからッ・・・もうどーでもいいっつったんだよ。聞こえてなかったか?」


本人の口からそんな台詞が出てくるなんて、パーティーメンバーの全員とも予想していなかっただろう。

今まであれほど自分大好きで負けず嫌いだった我らのリーダーが、弱気を通り越して諦めを吐き出しているのだ。


「ハァ・・・ったく、伝説級のバケモノ倒した次には芽衣さんの正体ばれかけて、逃げる先でやべぇ悪魔参上かよ。俺はいつ休息できるんだっつーの。」

「・・・そんなッ・・・・!!」


それからも次々と愚痴をこぼし続けるリーダーの姿に、ついにしびれを切らした者が一人。



――― “副リーダー”こと、ミオンである。



「ふざけないでッ!!芽衣さんがさらわれたんだよッ!!!『仲間』の芽衣さんがさらわれたんだよッッ!!!!!!!」


宿屋中に聞こえていそうな怒声をぶつけるが、そのぶつけ先にいる者の眼は変わらず暗いままだ。眼が死んでいる、光が感じられない。

そして口調も低いトーン。


「・・・じゃあどうすんだよ。チートレベルの悪魔に今やられたっつーのにまたそこに行くのかよ?またやられに行くのか?」


「ッ・・!!??うそでしょ・・・・!!!!????なんでそんなことが言えるのッ・・・!!!!!!今までは頑張って乗り越えて来たじゃない!!!」

「お姉さまッ・・一回落ち着いてくださいッ・・・!!」


怒りで身を乗り出すミオンを必死につかんで抑えるアリナ。しかしそんなアリナにミオンは気づかない。

そして今のレイがどのような状況にあるかも、ミオンは分かっていない。


ギアボロスから最後に喰らった古代魔法術『パウザーリ』。この魔法の本質は、『相手の活力を崩壊させ、自律神経をも支配し破壊する。』というもの。恐ろしいことこの上ない。

レイの『芽衣を救う』という精神エネルギーは、その気持ちが頂点に達する直前で破壊されてしまったのだ。相手は無論、術者のギアボロスである。

一種の呪いともいえるこの現象に、レイは今侵されているのだ。その現象の最大の特徴として、今のレイのように自分の『弱さ』を露呈してしまう点がある。


「ッ・・・やべぇ、目が重くなって・・・・」

「ッ!!!!!まだ話終わってないよッ!!!!ちゃんと聞きなさいよッ!!!!!!」


ヒートアップするミオンを横目に、レイの両目はついに閉じてしまう。

先程までミオンがレイに言った言葉の数々の何一つともレイに響いているものはない、断言できる。

なぜなら、あんなに熱がこもった主張をこんなにもスルー出来る理由がそれしか考えられないからである。



「ッ・・・そんなッ・・・ホントなの・・レイくんッ・・・!?」



そしてついに涙がこぼれだす。こぼれた涙は無意識にレイの頬に落ちるが、その雫は瞬く間に消え去っていく。

『何も響かない』という事実を、見せつけているかのように。


大粒の涙を流すミオンの姿を、二人はただ黙ってみるだけであった。

・・・いや、二人はこの時なんて声をかけたらいいかが分からなかったのだ。


二人は薄々気づいている、ミオンが好意を寄せる相手のことを。そしてその相手の何処にミオンが惚れたのかも、大体予想できる。

ではもしその相手が今、自分が描いてきた理想を粉々に粉砕する行動をとっていたなら?大半の人は幻滅するか怒りに変わる。

そしてその行動が人ならざるものと感じる場合だと、より強い怒りとなるだろう。


しかしアリナは同時にこんな事実にも気づいていた。それはギアボロスがレイに放ったあの魔法である。

アリナはその魔法について詳しくはないが、かじった程度の事は知っていた。

アリナはミオンをただ見ている間に、その魔法のことについて思い出したり考えたりしていたのかもしれない。ここで事実無根な知識を教えれば、ミオンの怒りの矛先が自分にも来るのではないかと考えてしまうからだ。

ミオンはそんなことは絶対にしない。しないが、それでも今のミオンを見ていると、『絶対にしない』とは思えない・・・



「・・・お姉さま。」


涙を流し崩れ出すミオンの名をつぶやく。アリナの中で考えがまとまったのか、アリナは自身が無いようなか細い声で呼びかけた。


「・・・どうしたのアリナちゃん・・・でもゴメンね・・今はあまりいい返答できないかもッ・・・・!!」


アリナに顔を向けるミオンの両目は、見たことの無いほどまで赤く腫れていた。

・・・そんなにレイの変貌ぶりが悲しかったのだろう。アリナの前ではこらえようとしているのが分かる、しかしその意思に反して涙は全く止まっていない。

アリナはそんなミオンにある事実を伝えるのだ、アリナがしばらくの時間を費やして得た、確かな『事実』を。




「レイさんは、今呪われています。」



アリナが出した答えである。


「え・・・」


「あのギアボロスは最後、レイさんにとある魔法を放ちました。ギアボロスはその魔法を詠唱した後、放つ直前にその魔法の名を口にしていました。名を『パウザーリ』、古代魔法の一つです。」


「こだい、まほう・・・?」


「その古代魔法『パウザーリ』に掛かった者は、その者が持つ全てのプラス思考を破壊されるとほぼ同義。要するに、『活力を失う』のです。」



アリナはさらに伝えた。レイがその魔法にかかっている証拠を、先程こぼしていたレイの愚痴は本当の気持ちではないことを。

アリナはこの説明を小1時間程続けた効果が出たのか、ようやくミオンはレイの現状態を認識できた。しかし問題はここからだ。



「ねぇアリナちゃん・・・じゃあこの呪いはどうすれば治るの?」



古代魔法の解き方などこの3人に知る由もない、なぜならこの3人のうち誰も古代魔法を使えないからである。

そもそもつい最近まで古代魔法自体存在しないと認識していたのに、その解き方など知るわけがないだろう・・・・と思っていたが、



「・・・おそらくそれは私の家の書物庫に行けば分かるかもです。」


と言ったのは、ここの賢者幼女である。

アリナの実家は魔道具屋であり、様々な魔法を道具に内包するのが主な生業の家業である。つまりその内包する魔法をなるべく多く熟知していなければならない。

よって多くの魔法を詠唱できるように、アリナの実家には多くの魔法の発動法が書かれた魔導書なるものが多数あるのだそう。


「なるほどね、そこに行けばあるいはってことだね・・・」


「はい。しかし古代魔法の魔導書なんてある自信がほとんどないので、正直不安です・・・」


「でもここでただ立ってるより何百倍もいいよ、ありがとうアリナちゃん。じゃあ早速アリナちゃんの実家にお邪魔させてもらおうかな。」

「アリナさんの家行くの?行きた~い!」





そしてアリナの実家、アリナの母にレイの容態を診てもらうと


「・・・『パウザーリ』ね。あなたのお仲間さんは厄介な状態よ。」


アリナの母はアリナ以上に魔法に詳しい。なんせ魔道具屋の副店主である、大方の魔法は熟知しているらしい。魔道具屋になる前はイーストデルト屈指の魔導士だったらしいが、その時入っていたパーティーで後に夫になる男賢者と出会ってその翌年に結婚して引退、今は夫婦で魔道具屋を営んでいるそうだ。

という説明は後にして、今はレイの容態の解決策を探していかねばならない。


「・・でお母さん、何か対処法はないの?」


アリナが聞く、アリナの母の表情は一見焦っているようにも見える。


「・・・結構危ないところまで来ているのよ・・持って2日が限度ね。2日後にはこの状態がこの方のスタンダードになってしまうわ。」


何と2日後にはこのネガティブな状態がそのまま定着していくのだそうだ、何とも恐ろしい。


「じゃ、じゃあどうすればいいのッ・・!?」


「それはね・・・彼の『後継者』に救ってもらうことよ。」



アリナの母はこのように説明した。

『後継者』というのは、レイの血縁関係に携わる者を指す。この者を召喚し、レイの代わりにその呪いを解く作業をしてもらうというのが大まかなものだ。

しかしその後継者に選ばれる者の第一条件として、レイの持つ性質を8割程度持ち合わせていることである。その中には無論、『獣騎士の素質』というのも含まれる。つまりこの3人では無理・・・(まぁ血縁関係も満たしていないのでそもそも当てはまらないのだが。)


しかしアリナ母は、次のこんなことを言い出した。



「・・・どうやら彼の息子さんが、その条件を満たしているようね・・・」

「「「!?」」」



アリナ母は先程からレイの前に水晶を置いて占いのようなことをしていたが、それはまさにこの条件に見合う者を探し当てるため。しかしその条件を見たすのが、未だ生まれてきていないレイの息子であるとは・・・


この3人、特にミオンが驚くのは当然である。



「それってどうやって呼び出すの・・・!?」


アリナも驚きながらその方法を尋ねる。


「・・・確証はないけれど、決して当てがないわけでもないの。私も今解明中だけど、少し頑張ってみるわ。」



レイの未来、そしてこの世界の命運は何とアリナ母と現在生まれてもいないレイの息子に託されたのだ。こんなにでたらめな話、他の世界では全く通用しないだろう。

しかし後継者の条件にレイの息子は合っていると言っていた。とすれば、その息子なる者も獣騎士の資質を持ち合わせているということになる。獣騎士の資質が、親子という血縁関係で受け継がれるものであるのにも驚きだが、それ以上にこの3人は、



詠唱一つで未来人を召喚できることに、驚きを隠せない ―――





「ㇷゥ・・・」


どうやら準備が整ったようだ、アリナ母は眼をゆっくりと閉じで詠唱を始めた。

それは小さい声で良く聞こえないが、ちらほらと聞こえたその詠唱文は全て初耳のものだった。


詠唱は長い、アリナ母の額には汗がしたたり落ちる。よほどの集中力を費やしているのだろう・・・



「ッ!!!」



アリナ母は詠唱終了と同時に目を大きく開き、召喚魔法を唱えた。


目の前の光景が全て蒼い光で染められる、光の強さを見るに相当の魔力が使われている。

そして、結果は・・・・






???『・・・あれッ、ここドコだよ・・・?』




竜人族の最大の特徴と言える両耳に、上半身はほどよく付いた筋肉。どことなくそれはレイの身体つきと似ている気がするのだ・・・



「・・・さて。急で申し訳ないけれど、お名前を訊いてもいいかしら?」



アリナ母は確認のため、目の前に現れた青年に名を尋ねた。

そしてその答えは、




『・・・おい、名を名乗る時はまず自分からじゃないのか?』




何とこのような面まで同じと来た、レイもこのような感じの冷静さやふてぶてしさを持っている。



「・・そうね、私はリオナ=メルド。あなたをここに召喚した張本人よ。あなたに用があってね。」


『・・・なるほど、じゃあ次は俺が名乗る番だな・・・』





青年の名は、






『俺はカイ=ベルディア、竜人族の冒険者だ。』





引いたのは、当たりくじである ―――




次回投稿日;7月8日

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