レベル8 挑戦 《クエスト》
現在、二人はデルト街道を進んでいる。
デルト街道とは、東のイーストデルトと西のレントヴィンを結ぶ街道で、中央をデルト山脈が横断している。
今回のクエストとは、デルト街道のイーストデルト側に魔物が繁殖し始めたのでその駆除をするというものだ。
物資を運ぶ馬車などが度々襲われており、周辺民も困っているらしい。
「そういえばみお姉はステータス見なくて良かったのか?」
「うん、もうプリーストに転職してるからね。必要ないよ。」
「でもスキル誕生してるか~とかあるし・・・」
「いやいやまだだよ。むしろランク5未満でスキル誕生している方が凄いよ。」
「えッ、そうなのか?」
「うん。」
「そ、そうか・・・」
(やっぱり俺の中に凄いチカラがッ!?俺ってすげー奴だったり・・・!?)
「フフッ、フフフッ!・・・」プルプル
(・・・やっぱりこの反応だね~)
「その笑い方、他の人にやっちゃだめだからね?特に小さい子の前は絶対だよ?」
「なッ、俺は不審者じゃない。しかもやらねーよ。」
「いや~わかんないよ?だってこの前だって・・・
~~~~~
「迷子になったのか、大丈夫か?」
「うん・・・・・」グスッ
「じゃあお母さん、一緒に探そうか?」
「えッ、いいの・・・?」パァァ!
「あぁ、当たり前だ。」
「あ、ありがとうお兄ちゃん・・・!」
(弱者に手を差し伸べる俺、めっちゃかっこいい・・・!!)
「フフッ、フフフッ・・・!!!」プルプル
「お、おにいちゃん・・・?」
「フフフフッ!!ハハハ!!!」
「うぅ、ママぁ・・・・・!!」ガクブル
~~~~~
「それであの子のお母さんが誘拐犯と勘違いして、警官に職質されてたよね?」
「そ、そんなの知らねーしッ!!」
「え~あの後村人集まってきて、最終的にその場にいた村人全員に囲まれて職質受けてたのに?」
「な、何だそれは!?俺はそんなの知らねーなッ!!」
「そして本当に誘拐したのかッ!ってレイくんのお父さんからゲンコツ貰ってたのに?」
「ち、ちげーし!!それおれじゃねーし!?ってか何でそこまで知ってんだ!?」
「あはは!あんな面白いことなんてすぐ村中に広まるって!」(笑)
「くそッ・・・!不覚だった・・・!」
「でも最終的には勘違いが解けて、あの子のお母さんも感謝してたじゃん。まぁ若干引いてたけど・・・(笑)」
「も、もうやめろ・・・///」
~~~~~
しばらく街道を歩いていると、
「ねぇ、あれって魔物の群れじゃない?」
「え、どれ?」
レイは前方の高原をじっと見ると、そこには4~5体のカメラゼの集団が見えた。
その一体がこちらに気づくと、他の仲間たちに知らせ、そして一気にこちらへ走ってきた。
「お、こっちきたぞ!」
「えッ!?えっと・・・1,2,3,4・・5体もいるの!?」
カメラゼのスピードは速く、もうレイ達の近くまでやってきた。
「じゃあ戦闘開始するかッ!!」
~~~~~
『魔物の群れが現れた!』
レイは腰の剣を抜くと、まず一匹目の方に勢いよく駆け出していく。
「みお姉!補助魔法頼む!」
「分かったッ! 『キルディ』!!」
ミオンは呪文を唱えた。
赤色の燃え上がる炎のスペルが、レイの中へと吸収されていく。
「おぉ、強化呪文ッ!!」
『キルディ』とは、味方一人の攻撃力をある程度上げる呪文だ。
レイの攻撃力が上がっていく。
「よしッ、行くぞッ!!」
レイは一匹目に剣を振り下ろす、しかしカメラゼは手持ちの盾でガード。
「うおおおお!!!」
だがレイの力が盾に勝り、剣は縦を斬り裂いた。
『ウグッ!??』
盾を砕いた剣はそのままカメラゼを斬り裂く。
『!!!!????』
攻撃力が一時的に上がっているレイの一太刀で一匹目を撃破。
「お、早いッ!」
「あと四体ッ!!」
結果
レイ&ミオンの圧勝
『魔物の群れを討伐。それぞれ経験値75を獲得、100ゴールドを手に入れた。』
「転職するとここまで違うとは・・・!!」
「まぁ私の『キルディ』効果もあるだろうけど、素早さに関しては確かに上がってるね。」
前回のカメラゼ戦では、回り込むスピードを利用して相手を倒したが、カメラゼのそのスピードに追い付けた訳ではなかった。今回はカメラゼが回り込む前に剣を入れていたので、難なく倒すことが出来たのだ。
「確かにステータスも上がってるんだよな~」
レイの瞬発力のステータスは、転職によって17から23に上がっている。
「もうすぐでレベルも上がるんじゃない?だってレイくん早熟スキル持ってるでしょ?」
「あッ、そっか!確かに!」
それからしばらくの間街道周辺の魔物倒しを続け、イーストデルトに来てから一週間が経とうとしていた。
が・・・
「全然上がってないッ!!!」
今回のクエストでレイ達が討伐した魔物は全てで101体。まぁ全てカメラゼだったが、経験値1515・ゴールド2020を獲得している。
しかし、ステータスの変化と言うと、
『レイ=ベルディア ソルジャーLv5』
『ミオン=プルム プリーストLv5』
ミオンとほとんど同じである。
「何が早熟するんだ?何も急成長してる気がしないんだけど・・・」
・・・やはりスキルは『発動』して初めて効果を発揮することを知らなかったようだ。
「もしかして特殊な条件下で発動するんじゃない?」
ってお前も知らんのかいッ
「え?」
「そして名前の通り急成長する・・・とか?」
「・・・確かにその考え方もある・・・」
「街の中の図書館とかで明日調べてみない?レイくんのスキルの『プレ=ヴィローゼ』の意味がそこで分かるかもよ?」
「図書館か・・・でもギルドの辞書でもなかったものもあるし、確率は低いけどな。」
「まぁ行ってみようよ!ついでに明日で装備新調してこ!お金も溜まってきてるし、良い時期だよ!」
イーストデルトに来てから丁度一週間。
そろそろあの宿からもランクアップしたいレイ=ベルディア。
このままではもうすぐ違うものがランクアップしそうな“DT”レイは、もう少しいい条件の宿を探して、クエスト帰りから2時間が経とうとしている。
しかし、まだ見つからない。
「ねぇまだ~?もうあの宿でいいじゃ~ん?」
「いやダメだ。あそこじゃまったく休まらない。」
「え~・・・」
(何で見つからないッ!?条件は『ベッドが二つあること』と『部屋が比較的広い』だけだぞ!?なんで!?)
二人はそれからも歩き続け、気づいた時には図書館の前に漂着していた。
「結局未だ見つからない・・・なんでだ・・・」
「もうッ!あそこでいいじゃん!!」
「いやダメだ!!あそこじゃ寝れんッ!!」
「じゃあどうすッ・・・って図書館の隣にあるのって宿じゃない?」
「おおッ!!マジか!!」
そしてレイは自分の条件に合う宿を見つけたとさ。はいおしまい、ってかおわれ。
~~~~~
翌日。
レイは今図書館の個室の中。
ミオンは外で装備新調のための下見をしている。
「見つけるのに3時間もかかったが・・・やっとそれらしきもの見つけたぜ・・・」
本のタイトルは『己の技の真実』。確かにそれらしいと思えなくもない。
「えっと・・・『タカシは見た、己の技の真の姿を。とある日の真夜中、教会の中央で、今日も祈りをささげるタカシの後ろから、そいつは現れた』って、何だよこれ・・・?」
『ゆっくりと、ゆっくりと、でも確かに足音が聞こえる。いつも教会に出向くタカシにとって、その音は全く聞き覚えの無い妙な音。タカシの背中は突如震えだすッ・・・!』
『しかし音は強くなるばかり・・・!タカシの震えは止まらないッ!!』
『タカシは祈りをやめて、そっと後ろを振り返ると ―――!
――― コンニチワ ―――
「ギャアアアアアア!!!!!なんだこれホラーかよ!?」
「ちょっと君ッ!?図書館の中で騒がないでおくれ!!」
声のした方を振り返ると、そこには本に出てきた『そいつ』ではなく、ただのおじさんであった。ただのおじさんって何かひどくね?
「へッ!?誰だおっさん!?ってかその声もうるさくね?」
「な、失礼な・・、私はこの図書館の司書だよ。なんか震えていたからねぇ。」
そう言いながら、司書のおじさんはレイが読んでいた本を覗き見る。
「・・・あぁ、それね。『己の技』って書いてあるくせに一文字もスキルのこと書いてないただの駄作ホラー小説だよ。そんなのが読みたかったの?」
「なッ!タイトルに騙されたッ・・・!」
「ん・・・どうやら君はスキルについて書いてある本が見たいようだね。こんどこそ最適な本を見せてあげよう。こっちに来てくれ。」
レイは司書と共に、図書館の奥のスペースへと向かった。そこはどうやら司書室のようだ。
「ここには公の書庫では公開できないような機密内容が多くのせられた本が多くあるんだよ。」
司書室にはレイがいままで見たことの無いような伝記や神話本などが、とても大きな本棚に綺麗に保存されている。
「へぇ~、じゃあ俺もここにいちゃダメなんじゃないのか?俺もいわゆる“パンピー”の一人なんだけど。」
すると、その司書はこう言った。
「何をいっている。君は“獣騎士”の資格を持っているのに。」
次回投稿日;4月1日