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とある青年のレベル上げ ~グラド・サーガ~  作者: あいうえおさん
第6章 『天』という世界で 《ヘブンズ・ウェイハザード》
80/110

レベル74 魔力覚醒 《ザ・リベレイション》


「ッ!!」!!!

「はぁッ!!」!!

『クソがッ・・!!!』!!!



!!!!!!!!!!!!!!!!



2騎VS一体の激しい攻防はまだまだ終わらない。戦場は『闇』と『風』と『炎』が互いに混ざり込みカオス状態、天候は闇炎時々大嵐というハチャメチャなものなのに天空城がほとんど崩れていないのはどうしてだろうか。

伝説曰く神の居城は神が生きている限りその姿を崩すことはないのだそうだ、よってまだ神グラダは生きているのかもしれない。一刻も早く神をこの場所に戻さないと、この居城の前に下界が大きくゆがんでしまうのだ。

しかしフィルの場合はついに風の神のチカラを一定時間自分に宿し、今は『風神の化身』として今この場所にいるのだ。神のチカラをそのまま宿して具現化する、そんな破天荒な所業をやってのけたのは広い世界でもフィルただ一人であろう。

なので今は、フィルがデモンズカウザムと一対一でやっているようなものだ。



「 『神嵐(ガイアブレス)』ッ 」



神のチカラを宿したことで、放つ特技は先程のを桁外れで越えている。

身に纏う風のフォースは、今ではもはや台風並みのチカラを秘めている。



「ッ!!・・・ハァハァハァハァ」



しかしその多大過ぎるチカラを授かった分、その代価もやはり高いようだ。先程からフィルの体力消耗が物凄い勢いで進んでいる。

少しでも気を緩ませるとマインドダウン、今のフィルはおそらくそこまで追い込まれているはずだ。

そして対するデモンズカウザムは・・・最悪だ、



『・・・もう終わりかぁ?・・・フゥ、まぁ少しはやるみてぇじゃん。』



予想以上に攻撃が効いていない。


「ッ・・!!シェリーはまだか・・!?今どこにいるんだ・・!?」


レイはスキル『ルート』を発動して、今のシェリーの居場所を確認する。

・・・が、



『スキル2;「ルート」は一周期における使用限度を超えたために使用不可。』



レイのステータスパネルにも、最悪な文面が。

2個目のスキル『ルート』は、1周期に最大5回までという制限付きのものである。この場合の1周期とは一日に換算される、それもただの1日ではなく睡眠で体力を回復するという過程も含まれる。よって『一日終わり、そこでしっかりとした睡眠で体力を回復する』ことでスキルの使用回数がリセットされるという仕組みだ。

(詳しくは番外編その4を見てね!)


しかしこんな長ったらしい説明はどうでもいい。シェリーの現在地が分からない以上、後々のためにどれくらい体力を残していけばいいのかなど色々な事を考える余地が無くなってしまう。


「・・・!!やるしかねぇ!!」ダダッ




一方、階段を登るシェリーとアリナ、そして守護獣ゲリュオン。


「ハァハァ・・!!まだかなッ・・・!?」

――― 目的地ハ近イ・・!! ―――


階層で言うと24階フロアを駆ける二人、先程より結構距離は縮まってきている。正直デモンズカウザムを倒せるかは今のシェリーに掛かっていると言ってもいい、むしろそう言うべきだろう。シェリーも何となくそのような事を理解しているのだろうか、ここら辺からもう攻撃態勢を整え始める。

なぜ戦場に一度も踏み入れていないのにこんなことが分かるのか、不思議ではあるがどうせ“神がかったチカラ”とかだろう。


しかし今行く戦場に気を引き締める一方、ある一人はとある葛藤を抱えていた。


アリナである ―――





「(私って、このパーティーで何をしてるんだろう・・・・・)」


「(レイさんはあんなに強くなって、お姉さまも回復魔法をたくさん覚えました・・・シェリーも頑張ってたくさんの特技を覚えています)」


「(でも、私は?)」


「(ただ呪文を覚えているだけではないでしょうか?)」


「(今では強力な呪文まで使える芽衣さんまで入りましたし・・・パーティーとしては大歓迎ですが・・・)」




「(私は、果たしてこのパーティーに必要でしょうか・・・!?)」





「・・・ん、アリナさんどしたのッ!?なんか暗い顔してるよ!?」ダダダダダ


「えぇッ!?あ、いや・・・なんでもないですよ。」タッタッタ・・


「え、そなの・・・?」ダダダダダ


――― ・・・・・ ―――


「はい、そうですよ。さぁ早く駆け付けますよ!」タッタッタ

「うんッ!!」



「・・・」


「・・・ハァ」




「(必要、でしょうか・・・?)」





アリナはよほど追い込まれているのか、動かす両脚はしだいに力が抜けていく・・・


アリナは今まで大きな活躍を成すことが出来ずにいた。

このパーティーに入ってからは自分が持つ本来のチカラが出始めていた、レイやミオンもそんなアリナを認め、

レイの幼女いじりもあるが、そんな些細な要素も含めたうえで自分たちのパーティーに歓迎してくれた。スキル発動やレベルアップなど、自分がここまで成長できたのはほとんどこのパーティーのお陰である。


アリナは絶えず思っていた、そして絶えず励んでいた


『自分を成長させてくれたこのパーティーに、何か確かな恩を返したい』


入団初期からずっと有ったこの“思い”、それが今“重圧”になり始めたのだ。


自分はこのパーティーに、何か返せただろうか?


自分がいて、パーティーの状況を何か救うことが出来たか?



今のアリナには、その答えが全く見つからない。



――― ・・・・・ ―――



背中に圧し掛かる『思いの重圧』

そしてその思いと隣り合わせで浮かんでくるのは、以前のパーティーで味わった『邪魔扱い』というトラウマ。

一人で背負いきれないほどの重圧で、アリナは今にも押し潰されようとしていた。



「(うぅ・・!!)」





「(このパーティー・・抜けようかなッ・・・!!)」





目に涙が滲む・・・すると、




――― 悩ム賢者ノ少女ヨ、ナゼ悩ム ―――




語り掛けてくるのは、右横で共に階段を駆け上がる守護獣ゲリュオン。



「え・・?悩むって・・・?」



――― ・・・ナゼ悩ム? ―――



――― 自分ハ必要ナイト思ウノハナゼダ ―――

「ッ!!・・・」




ゲリュオンは見えない重圧で苦しむアリナの心情を、なんと読み取っているのだ。



「えぇ・・!?なんで分かるんですか・・・!?」


――― オ前ハ悪感情ニ支配サレ始メテイル・・・ ―――


――― 悪感情ガ募ルト、オ前ハ悪魔ヘト豹変スル ――― 


「ッ!?」



この空間はデモンズカウザムと近い距離だ。それはすなわち、デモンズカウザムの影響を受けやすいということになる。

今までずっと抱いてきた“思い”が“重圧”に変わったのはなぜ?・・・そう、これがデモンズカウザムの『洗脳効果』である。

デモンズカウザムの残り香が充満するこの塔では、この『洗脳効果』の思う壺である。


ゲリュオンはそんなアリナを救うために ―――




――― 汝、ナラバ想像セヨ ―――



「ッ!!・・・」



――― 汝ガ抱ク本当ノ思イハナンダ? ―――



「・・・」



――― 汝ガシタイ本当ノ事ハナンダ? ―――




「私が、したい事・・・」




――― 汝ハ夜明ケ前ヲ彷徨ウ者 ―――



――― 最モ暗イ、夜明ケ前ヲ彷徨ウ者 ―――



「・・・」



――― ・・・ダガ ―――



――― 明ケナイ夜ナドナイ、汝ガ思ウ事デ陽ハ直チニ姿ヲ現ス ―――




――― ソシテソノ時、 ―――


「・・・!!」






――― 汝ハ、光ヲ持ッテ覚醒スル ―――




「・・・!!!!」


「(私の、思い・・・!!)」


「(それは・・・それはッ・・・)」



「(それはッ!!!)」




アリナの前に、一つの光明が見え始める。







――― 君なら出来るよ ―――



「・・・うん、出来る。」



――― 今まで溜めてきた思いを、今ここで解き放とう ―――



「うん・・・!!!」



――― さぁ、君にチカラを授けるよ ――― 



――― 君の思いは、まだまだ光輝いているよ ―――



――― さぁ、見せてあげようよ ―――






――― 君にしか出来ない、『恩返し』を! ―――










「ハァハァ・・・や、やべぇ・・!!」

「ハァハァハァハァ・・・ウッ・・!!」


ガタッ・・

「フィルッ!!お前ッ大丈夫かよッ・・・!!」


大きすぎるチカラを宿したフィルの身体が、最悪な場面で悲鳴を上げた。フィルはそのまま膝から崩れ落ち、過度なダメージから立つことも出来ない。

今のフィルは、マインドダウン手前の状態である。レイもかなり消耗し、一対一などしたら数分も持たない。


二人は、ついに片隅にまで追い込まれた ―――



≪チェックメイト≫



『ハァハァ・・フゥ、まぁ楽しかったぜ。だから最期は二人で仲良く死んでもらうからなぁ・・・!!!!!!!』

「ッ・・!!」

「」



あれからも必死に応戦し、ダメージもかなり与えたはずだが・・・

デモンズカウザムは、一体どれだけのチカラを有しているのだろうか。相手の残り体力も確認したいが、『ルート』スキルはもう使えない。

フィルはほとんど瀕死状態、レイにも戦うチカラなどほとんどない。


召喚した闇のスペルが、エネルギーを吸収して肥大化する。



『フフフ・・・ハハハハハ!!!!これでキサマラも終わりだぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!』



そしてついに、攻撃を二人へ。




『 「闇竜の咆哮(ザ・ブラスター)」ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!! 』





「(あぁ、クソッ・・・!!)」



ゴゴゴゴ・・・!!!!!!!!!



「(頼む、誰かッ・・・!!)」



ゴゴゴゴゴゴ・・・!!!!!!!!!




「(どうにか、してくれッ・・・!!!)」





レイが闇に呑まれる、


 


そんな時だった








「 『ダラディトス』ッッ!!!!! 」







光魔法の名が響き渡ると同時に、目の前にあった『漆黒の闇』が一瞬にして消えた。

そして次の瞬間、





『クッ!!ウゥッ・・!!ウゥァァァァァァァァアアアア!!!!!!』



灼熱を帯びた無数の熱線がデモンズカウザムの身体を次々と貫通し、そして常軌を逸した熱がその巨体を焦がしていく ―――



「ッ!!この呪文って・・・!?」



レイには見覚えがあった。

灼熱を帯びた熱線を放つ、とある少女の姿を。


レイには聞き覚えがあった。

幼いながらも覇気を持った、とある少女の『ダラディトス』という掛け声を。



しかし今見たこの光魔法『ダラディトス』は、一度も見たことがない





――― 闇色の空を、一瞬で青白に変えたのだ ―――





「ウソだろッ・・・アリナ・・・!?」









『スキル2;「魔力覚醒」が発動しました。』






次回投稿日;6月19日

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