レベル7 転職 《クラスチェンジ》
あれからイーストデルトまでの道のりで数回程戦闘があり、レイの体力は半分を切り、ミオンのMPは0になったが、
「つ、ついた・・・!!」ハァハァ
「一番近くてこんなに距離あるの・・・・?」ハァハァ
二人は何とかして城下町にたどり着いた。
二人はここまでの戦闘でランクアップ。レイとミオンは同時にランク2に上がり、ミオンの場合新しく強化呪文『キルディ』を覚えた。味方一人の攻撃力を一時的にある程度まで上げる補助呪文の一つだ。
「さぁ、着いたのは良いけど・・・何すればいいんだ?」
「そういえば何するか考えてなかったね・・・」
「・・・にしても、やっぱここって大きいなぁ・・・」スゲー
――― 清水の都 イーストデルト城
多くの文化がまじりあう、東グラド地方最大の都市。
獣人、鳥人、緑人など多くの亜人種が生活し、人口が大陸でもっとも多い街である。
様々な文化がうまく調合し、生活に程よいバランスを生み出している。
またここは大陸有数の大きな冒険者ギルドがあり、多くの冒険者が集う場所でもあるのだ。
「とりあえずギルドに行こうよ。確かそこでクエストを受けるらしいから。」
「ギルドかぁ・・・なんか冒険者っぽいなその響き!」
ギルドは正門から西の方角にある。徒歩で5分とそこまでかからない距離だが・・・
「・・・でもやっぱり先にそこの宿で休憩しない?おれマジ疲れた・・・」
「・・・確かに疲れたね、私MP0だし。安い部屋でも取ろうか。」
そして門近くの宿で一番安価な部屋を借りることにした、が・・・・
「部屋ってこれかよッッッ!!??」
ドアを開けた先にあるのは一つのベットとテーブル一つあるだけの5畳ほどの小部屋だった。ベッドとかもう何もしなくてもどこかしら当たっちゃうほど小さいんですけどッ!?
「まぁ二人で50ゴールドだしね・・・まぁ空いててよかったっていうしかないよ。」
一応この世界の宿について触れておくと、普通の冒険者一人が泊まる宿部屋は食事付きベッドありの8畳ほどで金額は200ゴールドが平均である。
対して二人が取った部屋は食事なし、ベッドは二人で一つ、そしてたったの5畳ほどで50ゴールド。
確かに安いが、二人では窮屈すぎるのだ。
しかしレイは、他のことを心配していた。
(こんな狭い部屋で寝るんだったらもしかして・・・・!!!!////)
結論
「んッ・・・んんッ・・・」スースー
「」ドキドキドキドキドキドキ/////
レイは一晩中ミオンに抱き着かれていたせいで、一睡もできなかったのであった。(これだから精神DTは・・・)ハア
~~~~~
そして翌朝。
二人はギルドに向かっていた。
「レイくん寝不足なの?まぁあの狭い部屋じゃ仕方ないよね。」
「ハァ・・・」
みお姉の鈍感ぶりはもうデフォルトである。どうしようもない。
「あ、ついたよ。」
宿から歩いて6分程、二人はギルドに到着した。
ここイーストデルトの冒険者ギルドは世界でも指折りの規模の大きさを誇る場所であり、その規模の大きさから各地の冒険者がこの場所に集うのだ。なので世界の情報を知りたいときはここが最も集めやすいと言われている。
また情報の中には有益なモノももちろんあり、その情報を売買する情報屋という職業も生まれているが、それはここが発祥地である。
バタンッ・・・
「おじゃましま~す・・・」
二人は恐る恐る入っていくと、中には冒険者がてんこ盛り。
ゴリマッチョな戦士系もいれば、高そうなローブを纏った魔導士、神官など、職種はさまざまだ。
「へぇ~色々いんなぁ~」
「ねぇレイくん、あそこに『転職場所』って書いてあるよ?」
「『転職』?何それ?」
「文字通り職種を変えられる場所だよ。例えば私がプリーストからソルジャーにジョブチェンジ、みたいな。」
職種とは、その冒険者の性質を表す一つの尺度のことである。
例えばミオンのようにプリーストを職とする場合、職業効果でMPと回復魔力と知力が他より上がる、または上がりやすい・・・など。職種によって様々な特徴があるのが大きな点である。
また職業にもランクがあり、条件なしに転職できる簡易なものを基本職、とある条件を満たすと転職できる上級職、そしてさらに上の最上級職の三つだ。
それら全てを総じて、現在ある職種は全部で12種類である。
「それって適性とかあるの?」
「あるみたいだよ。なんか手をかざすと適性が分かる魔道具があるらしいし。」
「ほ~、ちなみに今の俺って何の職業なんだ・・・?」
レイはまた右方に意識を集中させ、ステータスパネルを呼び出した。
「え~っと・・えッ?何もない・・・」
「何もないってことは無職ってことになるね。特に伸びるステータスもないし、最弱職だよ。まぁ職じゃないけど。」
「それってザコってことじゃんッ!!今すぐ転職するッ!!」
「いらっしゃいませ。ご用件は何でございましょうか?」
「あ~、転職を希望してまして~・・・」
「あぁ、でしたらそこのステータスサークルに手をかざしてください。」
ステータスサークルとは先程ミオンも言った通り、個人のステータスから適性を見極めるための魔道具である。ちなみに一台400万ゴールド。たっけえ。
「えと・・・こう?」
「はい、では検査を開始します。」
ギルドの職員さんの案内と共に、ステータスサークルが緑の光を放ち始め、レイのステータスを読み込み始めた!
ピピピ・・・・
ピロンッ!
「あ、結果が出ましたね。見てみましょうか。」
レイのステータスが空間上に表示された。
『冒険者 レイ=ベルディア 15歳
攻撃力;25 守備力;18 最大HP;32 最大MP;14 知力;16 瞬発力;17
最適装備;剣、槍』
「え~っと・・・普通ですかね。」
「ふッ、ふつう・・・」ナンダト・・・!?
「まぁ攻撃力が比較的高いので、転職は基本職のソルジャーをおすすめしますよ。」
「き、きほんしょくッ・・・!!」ガーン
「あはは!!レイくん夢見過ぎだよ~。始めから凄いステータスの人なんてほとんどいないよ?」
「そ、そんなモンなのか・・・?」
「ええ、でも一昨日来られた女性の冒険者で、低ランカーとは思えないステータスの人がいましたよ。中でも知力が凄く高くてなんと398でした。彼女はそのまま上級職に転職したみたいですけど。」
「知力398!?それってランク80以上にならないと上がらない数値ですよね!?しかもいきなり上級職って考えられない・・・!?」
「えぇ、世の中には凄い人がいるものですよ。」
レイは自分のステータス表示を見ていくと、
「あれ、この下に書いてあるのって・・・?」
「えッ?なんかありました?」
ギルドの職員さんはレイのステータス表示に目を近づけてみると・・・
「ん?・・・おぉ、これは!」
「何かあるよな?」
「えぇ、おめでとうございます!『スキル』が誕生しました!」
『スキル』とは、その冒険者が持つ特殊能力のことである。
スキルはその冒険者個人の環境から気まぐれに誕生するものであり、全ての冒険者が努力で習得できるものではない。
スキルの種類は色々あり、多くの冒険者が習得しているものもあるが、基本的にはスキルを習得した人の分だけ存在すると言われている。
またこれは大きな点だが、スキルの『誕生』=『発動』ではない。『誕生』したうえでまたさらに条件を満たしたとき、そのスキルが初めて『発動』するのだ。
「おぉ、自分大好きでよかったじゃんレイくん!スキル誕生だって!」
「ま、まぁ?こんなの当たり前だしぃ?普通だしッ?」ドヤァ
「えっと、『プレ=ヴィローゼ』って書いてありますね。ちょっと調べますね。」
職員さんは横の本棚から分厚い本を取り出すと、『P』のページを開いて目を通し始めた。
「それって辞書ですか?」
「えぇ、スキルの名前はたくさんありますが意味までは分からないんです。なので最近出来た解読辞書で調べようと。」
そして職員さんは何か見つけたようだ。
「これですかね。『プレ』は早熟という意味です。しかし『ヴィローゼ』は・・・ないですね。」
「へぇ、早熟だって。早く成長するってことだよ。良かったね!」
「それで、やっぱり俺は『ソルジャー』に転職するのが良いってことですかね?」
「そうですね。適性がある職の方が早熟しやすいと思います。では『ソルジャー』に転職でよろしいですか?」
そして転職作業は、一瞬で終わった。
「・・・これでおれもソルジャー・・・?なんか転職した気がしない。」
「そんなモンだよ。だって職業変えただけだし。八百屋が電気屋に変わったって感じ?」
「それちょっと意味違くないか?」
「あ、ちなみに転職すると、ランクは変わりませんが職業レベルは変わります。レイさんの場合ですと、無職Lv2からソルジャーLv1になったということです。」
「なるほど。」
(無職Lv2って言い方・・・)
「ちなみに無職に転職する場合ですと、ソルジャーLv1から無職Lv2になります。」
「転職するたびに初期化するわけじゃないってことか。このレベルで行けるクエストってどこかあったりとかは・・・?」
「このレベルですと・・・このクエストはどうですか?」
そのクエストとは・・・
「「『デルト街道周辺の魔物駆除』?」」
次回投稿日;3月31日