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とある青年のレベル上げ ~グラド・サーガ~  作者: あいうえおさん
第6章 『天』という世界で 《ヘブンズ・ウェイハザード》
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レベル73 風神 《ゴットウィンド・ナイト》


ここに来てデモンズカウザム、中にまだまだ眠っていた悪感情を解き放ち、いよいよ無双形態へと移行する。

大幅なステータス向上だけでなく、先程のように極大魔法をいくつも使ってくる厄介な敵へとグレードアップ。対するレイには、デモンズカウザムのように“解き放つ秘められたチカラ”なんて持っていない。よってレイはこれからも同じステータス状態で戦うというのだ。

事態は困難を極める。



『おいおい、もうちょっと楽しませてくれよぉ・・・!!!』



先程の鍔迫り合いで体力を結構消耗しているレイに対して、デモンズカウザムはようやく調子を出し始めたと言ったところだろうか。

フィルもレイと同じくらいにしか動けないだろう、よってかなり分が悪い。



『ちょっと本気出したらすぐ降参パターンは参るぜぇ・・・まだ動けんだろぉ?』



暗黒魔法『デスラグーン』のドーム状閉鎖空間はまだ続いている。ここに立つ今も、二人と二匹の身体にはダメージが蓄積されている。

出来るものなら今すぐにデモンズカウザムに斬りかかっていきたいが、中々動き出せないのはこの魔法がまだ続いているせいだ。


「クソッ・・・なぁどうすりゃいいんだコレ?」


――― ・・・蒼ヲ待ツシカ道ハナイ、集ッタ時ニ解放サレル技ヲ発動セヨ ―――


エヴィウスがそういうのでレイはステータスパネルを見てみる。すると現在発動中のスキル欄にそのスキルの名はなかった。

3人の獣騎士集結時に発動した一時的スキル『アウェイク』、そして蒼騎士と紅騎士が集った時に解放された一時的スキル『デュミローア』。

この二つのスキルがあれば、もしかしたら対抗できるかもしれない

そう思ったレイ、今度は耐久の術を必死に詮索する。


「・・・どうやら足止めが目的のようだな。なら私に任せてもらおう。」


「え・・・?お前なんで分かるの?」


「フンッ・・紅の表情を読むことなどリンゴの皮むきより簡単だ。」


「なんだそれ・・・でもそうだ、シェリーが来るまで足止めをしてほしい、3人そろわないと意味がないんだ。」


「生きたまま足止めをしてろと言うことか・・・大分のハードタスクを強いてくるものだな。」



天颯の鉾は何とか輝きを取り戻し、守護獣リモラを連れてデモンズカウザムの前に立ち憚る。

目の当たりにすると放つ悪感情のオーラがとてつもなく強力だ、取りつかれていても自分の仲間だとは考えられない。



「・・・元々は俺のミスだ、責任は取るべきであろう・・・」



『お、今度はアンタかフィルさんよぉ・・・まぁ相手してやっけどよ、簡単に死ぬんじゃねえぞ?』



「(ソリュー・・・待ってろ・・・!!)」



『ハハッ、そんなに身構えなくてもいいんじゃねぇかぁ?楽しく行こうぜ?』



「ッ・・・!!!」



――― ・・ル・・んッ・・ ―――



「(ッ!!感じる・・・!!)」


『まぁ呪文はつまんねーし、ここからは呪文無しで行こうか、なぁ?』


――― フィル・・・さん・・・!! ―――



「(ソリューの声かッ・・!?)」



デモンズカウザムが発する悍ましい声の中から、なぜか自分の仲間の助けが聞こえる ――― 

ソリューは、まだ完全に意識を支配されてはいない。



「(・・・今助けるッ、必ず助ける・・!!)」


『じゃまぁ、始めますかね。一発KOとか無しッすよぉ?』

――― 助けてくれッ ―――



「(すぐ助けるッ・・だから・・・!!!)」





――― 待ってろッ!! ―――



フィルは鉾先に魔力を召喚、集まる七色のスペルからランダムで属性が決定する。

次第に鉾全体が激しい雷のフォースを宿し、そしてさらに増強する。



“師弟”どうしの攻撃が、双方の間で大きく爆ぜる ―――



「 『七現嵐(コマンドブレス)』ッ!! 」

『 「炎龍閃(バハムディア)」ッ 』


!!!!!!!!!!!!



雷と焔が大衝突、雲上フィールドは一瞬にして火の海と化す。

多くの火の粉と爆炎が舞う中、双方はうろたえることなく次の戦闘態勢に。


「くッ・・!!」

『いいねぇいいねぇぇ!!!』



鉾先の魔力を、再び解き放つ。



「 『七現嵐(コマンドブレス)』ッ! 」


今度は荒れ狂う風刃を召喚。巨大な大時化のように暴れ回る嵐の姿は、

まるで“ドラゴン”のようだ・・・


『そういやこんなマルチ属性技覚えてたっけなぁ・・まぁカンケ―ねーや。』

「ッ・・!?何する気だ・・!!」



フィルは驚いていた。まさか自分が繰り出した風刃ごと一気に吸い込みだし、そして


闇の焔と共に、吐き出してくるとは



『~~~~~~~~!!!!!!!!!!』

「ッ!?」

「『焔球護(バーブレム)』!・・アイツ大丈夫か・・!?」



生気を奪う闇の焔に紛れるのは、自分が召喚した強靭な風の刃。


「ッ・・!!」



しかしお忘れだろうか?

フィルの傍にはもう一人・・・いや、“もう一匹”・・強力な仲間がいることを。




――― ッッ・・・・ ―――

「リモラッ・・!?」




リモラはフィルの前に立ちふさがると、迫りくる闇焔の刃を一気にはじき返した。

しかもたった一回の雄叫びで ―――




『ッ!!ヤベッ・・・!!』


まさかお跳ね返されたカウンター攻撃に、デモンズカウザムは少し態勢を崩す。

しかし跳ね返された紫焔のブレスをまともに食らってもあまりダメージあ与えられていないようだ。体力はデュラーデやギュオリヤなど比べ物にならない。


しかしそれ以上に、あの紫焔のブレスを雄叫びで返した事実が何よりも驚きである。

そう、三聖山バル・イデオ山守護獣リモラである。



「す、すげぇ・・・!!!」

――― ・・・フッ、今更ダガナ ―――



仲間を救いたいと強く思う気持ちに強く共鳴し、今まで閉ざされていた本来のチカラが目覚めようとしている。放つ翠のオーラは、どことなく先程よりも強く光っている・・・

リモラが放つその眩しい翠の光は、主であるフィルのチカラをも上げていくのだ。

ではお見せしよう、




『翠騎士』の、本当のチカラを ―――



「ッ」タタッ

『おぉ?いいねぇ・・!!』



守護獣リモラは聖山バル・イデオを護る守護獣であると同時に“風”を司る神獣でもある。リモラが召喚する風はたちまち暴れる大嵐へと瞬時に変化、真空の刃が幾度となく暴れ回る斬撃風に変わるのだ。その様はまるで神が躍っているかのようであることから、いつしかこのような名が付いた。



――― 『風神の舞(ゴットウィンド)』 ―――



――― ~~~~~~~!!!!!!! ―――

『うおッ』




!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!




『神が踊る様だ』とはよく言うモノだ。少なくともレイの眼には、神の逆鱗に触れたようにしか見えない。

荒れ狂う斬撃風の中で、覚醒を始めたフィルは再び魔力を召喚。両手にはリモラが放つのと同じ風のスペル。

フィルは風のフォースを纏い、デモンズカウザムの前から姿を消した。


『ッ!!・・・あれ、もう一人はッ・・・!?』


そして背後から、フィルは溜めた魔力を解き放つ。




「 『暴乱嵐(ダウンバースト)』ッ 」



解き放つ魔力は瞬時な強烈な圧力風に変化、押し潰すかの勢いでデモンズカウザムへのしかかるのだ。いくら重量級の巨体でも、こんな圧力風を喰らっては耐えることなどできない。

大きな圧力で抑えられるままに、デモンズカウザムは城壁までぶっ飛ばされた。



『ッ!!・・・チッ、いってぇなぁ・・・!!!!!!』



『翠騎士』が纏う風のフォースはさらに勢力を増し、闇の赤雲で閉ざされた陽の光をも吹き飛ばそうとしている。ただそこにいるだけであるのにだ。

グラド大陸では古来から『風は神が我々に降りかかる悪を払いのけるためにお創りになられた』と言われるほど神聖なものとして扱われている。特に神が起こした風は“神風”と呼ばれ、またそれが持つ威力は多大なものだという。


二人が纏うその風は、まさに“神風”のようだ ―――



『・・ざけやがってッ・・!!』


デモンズカウザム、城壁を破壊してめり込んで動けなかったのを対処。

両手に巨大な闇のスペルを召喚し、その二つを一つに融合。邪気を孕む漆黒の紫焔として、目の前に現出する。



『これをぶち込んでやr ―――』



しかしその瞬間、放つ先の敵を見失ってしまう。

フォースを纏って“神風”になった翠騎士など、いくら悪魔の魔王でも目で追うことなど出来はしない。



『ッ、どこ行ったんだアイツらぁぁぁ・・・・!!!!????』



苛立ちからさらに集中力を欠いたデモンズカウザムに、再び背後に回ったフィルの姿など見えるはずもない。

よって次の攻撃は、気持ちいいくらいにクリーンヒットしたのだ。




「 『神嵐(ガイアブレス)』ッ 」

『ッ!うしr ―――



!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!




『ッ!!何だ急に動き良くなりやがってッ・・・!!!』


デモンズカウザムが召喚した闇の魔力は、まだ潰えていない。


「ッ・・!!」



『 「闇竜の咆哮(ザ・ブラスター)」ぁぁぁ!!! 』

「『神隠(フェイド)』」スッ



!!!!!!!!!!!!!!



『ッ・・・!!!!クソォ!チョコチョコ動きやがってッ!!!すぐどっか行きやがるッ!!!』



怒りがさらにヒートアップするデモンズカウザムを下に、真上に回避する翠騎士は様子を伺っている。

しかしこのまま怒りをヒートアップさせると、デモンズカウザム自身が抱くフィルへの悪感情を増幅させてしまうために、ソリューの心身により侵食するようになる。怒りで撹乱するのは良いが、取りつかれているソリューのことも考えなければいけない。

どちらにせよこの状況を変えるには、もう一人の獣騎士がそろう他ないだろう。そのもう一人は、まだ塔中の階段を登り続けている。



「ハァハァ・・・もうちょっと頑張ってくださいシェリー!」

「ハァハァ・・・うん!分かってるッ!!」






『蒼騎士』到着まで、残り10分 ――――




次回投稿日;6月18日

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