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とある青年のレベル上げ ~グラド・サーガ~  作者: あいうえおさん
第6章 『天』という世界で 《ヘブンズ・ウェイハザード》
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レベル71 魔王獣 《ソリュー=エルゴ》


自分のライバルかつ親友との再会がこんなにも残酷なことが、他にあるだろうか。

『悪魔』に取り付かれ、『悪魔』に囚われ、『悪魔』に支配された

『“魔王獣”デモンズカウザム』に豹変したソリュー=エルゴの姿が、何とも悍ましい姿で君臨する。


「そッソリュー・・・お前なのかッ・・・!?」


そう言うフィルの声は、明らかに震えている。



『・・・よぉフィルさん、俺ぁ強くなったぜぇ・・・!!』


「違うッ!お前は強くなったんじゃない!取りつかれたんだッ・・!!」


『でもこの通り強くなったんだよッ・・・今はアンタより強いかもなんだぜ・・・!!??』


ソリューの両眼が、急に怪しく光り出す。


ッッ!!!


「ッ!?くぅ・・・!!」

「紅ッ!ヤツの眼を見るなッ・・・!!」



『吸魔の光』 ―――

眼を見た者全てを深い眠りに誘う、悪魔のみに宿る不思議な能力の一つ。

レイの意識に強烈な睡魔が幾度となく刺激し続ける。


「ッ・・!!」


『ハハハッ、早く眠っちまえぇ!!ヒョロザコ騎士さんよぉ!!』


ソリューのムカつくいつもの煽りに沸き起こる反骨の意志が強く燃えているのに、それとは裏腹になぜこんなにも意識が遠のいていくのだろう・・・

あックソ、やべぇ・・・・

目が、とじ、て・・・




『・・・フフフ、ハハハ!!!!』


「」スー


『ホントに寝たぞコイツ!!さすがヒョロザコだわッ!!!ハハハハ!!』


ソリューの高笑いの前に、レイは『吸魔の光』にやられて眠ってしまった。


『・・・さて、やっぱり状態異常は効かないんスねフィルさん、厄介な相手だッ・・・』


フィルが持つ潜在能力とスキル『オベロンプレート』の相乗効果で、状態異常攻撃に対してかなりの耐性を持っているのだ。

それはこの『吸魔の光』も例外ではない。


「頼む・・・目を覚ましてくれッ・・!!」


フィルは背中に差す天颯の鉾を手に装備、強い翠のオーラを纏う鉾先はまっすぐと“デモンズカウザム”の心臓部へ。

鉾先の光は守護獣リモラと共鳴して、段々とその光を輝かせる。


そしてフィルは、特技を放つ。



「 『七現嵐(コマンドブレス)』ッッ 」



フィルの鉾先から放たれたのは七色のうち、赤。紅蓮の焔が荒れ狂う強嵐と相乗して大迫力の光景を生み出す。

強烈な焔乱嵐を前に、“魔王獣”は何やら魔力を召喚してため込んでいるようだ・・・


『そんな技はもう効かねぇよ・・・』


最大まで魔力が溜まり切ると、荒れ狂う乱嵐の前へ一気に解き放つ。

デモンズカウザム・伝説上の魔物が今、暴れ回る ―――



『 「シラエイジ」 』

「なッ」



呪文を唱えたその瞬間

この全域の大気がただちに凍て付き凝固し、強大な冷気を帯びてフィルたちに降り注いだのだ。

焔乱嵐に対抗して召喚したのは、全域を凍てつかせる氷凍嵐。規模を言うと、後者が圧倒的に高威力である。


『シラゼド』を超える最強の氷結魔法、

それがこの『シラエイジ』である。



「ッ、凍るッ・・・!!」



高ランカーでも習得が難しいこの魔法、威力は予想以上に強力だ。

フィルが召喚した大炎風など、今は目の前で氷漬け。


「・・・!!!」


『・・・おいおい、まだ呪文一個ぶっ放しただけだろーが・・まだくたばるには早えーだろ。』


『さぁもういっちょ行くぜ・・・もっと俺を楽しませてもらわねぇとなぁ・・・!!!』



そう言うとデモンズカウザム、再び両手に魔力を召喚し始める。

差し出す両手には渦状に風をスペルが溜まっていく、そのスペルの量も異常なまでに多すぎる。

風属性のフィルにとって、デモンズカウザムが何を唱えようとしているのか一発で分かった。これは風刃魔法最強呪文、



『 「ビシェグレビド」 』



真空の刃が数多に召喚、強烈に荒れ狂う大嵐に中で共に荒れ狂い

フィルたちの頭上から一気に降り注がれる。


「まずい紅ッ!!・・・・まだ起きないのかッ・・!!」


慌てふためくフィルの横で、『吸魔の光』にやられたレイは一向にその眼を開けてくれない。魔王獣が放った怪しい光は、想像以上に厄介なものであったようだ。

しかし真空の刃は、そんなフィルたちのことなどお構いなしで降り注がれていく。


「ッ、仕方ないッ!スキル発動!」


『スキル4;「ワンズゲート」を発動します。』


「退避空間形成!おい紅、一旦退避するぞッ!」



フィルは一時撤退、自分が構築する退避空間で態勢を整えるつもりだ。



『・・・させねーよ』



ピキッ


「ッ!!何だとッ・・!?」



ピキピキッ・・・!!!



自分が作った自分だけの空間に、なんとデモンズカウザムが難なく侵入してきたのだ。

そしてたった今造ったフィルの退避空間は次の瞬間、




!!!!!!!!!!!


『・・・あんな場所じゃなくてココでやろーぜおい?』




先程の雲上フィールドに、戻されてしまった。


「クソッ・・!!」


『おいおい、忘れてねぇか?』


「・・・何をだ!?」


フィルの問いかけに対し、デモンズカウザムは視線を上に逸らす。

フィルも同じく上方を見やると、そこには『ビシェグレビド』で召喚した無数の真空刃が降り注がれてくるのだ。


「ッ!!??」

「任せろッ!!」


『ハハハ!!いい気味だぜッ!!』


そして刃がフィルに達する瞬間、とある技名がフィールド全体に響き渡る。



「『焔球護(バーブレム)』!!」


叫ぶと同時にフィルの身体を包み込む、焔属性の結界召喚。

無数に注がれる真空の刃は、焔の結界膜にぶち当たってはそのまま燃えて消え去る、無数の刃なのでその光景の繰り返しだ。



『チッ・・・起きるの意外と早かったなぁ・・・!!!』




レイ=ベルディア、『吸魔の光』の睡魔から回復。

先程の退避空間形成時、一旦戦闘フィールドから脱出したことで状態異常が解除されて、今こうしてレイの眠りが解けているのだ。

RPGの戦闘シーンでも、戦いが終われば『眠り』状態は強制解除されるであろう。まさに今このことが起こっていたのだ、理由は知らないが。


「・・・ちょっと寝てて遅れたわ。おいフィル、今北産業。」


「・・・なんだそれは?」


注;『今北産業』・・・『今来た(今北)ところ、状況を3行(産業)以内で説明しろ。』

なぜこんな用語をレイが知っているのか、理解は不能である。


「・・・ま、状況は見るだけでもつかめてきた感じだな。まぁ多分アイツがかなりヤバめなんだろ?」


対するデモンズカウザム、次の呪文詠唱を済ませて今にも呪文を放って来そうな勢いだ。


「・・・ここから俺も参加させてもらう。経験値横取りなんて俺の目の前でさせねぇぞ?」


「・・・俺はレベル上げのつもりなど毛頭ない。勝手なことを言うな。」


「ハッ、まぁなんでもいいや・・・おい、ソリュー!」


レイはフィルの一歩前に出て、その口調はベルトディア村にいた時の恒例口喧嘩のように。

あの時はいつもこんな感じだった、ソリューとレイの意地っ張りケンカ。


「・・・!?まさか紅ッ、対マン張るつもりか!?」



「(ははッ、やべぇなこれ・・・)」


「(目の前にいんのは最凶悪魔だっつーのに、相手がソリューと思ったらなんかムカついてきたわこれ。)」


「(やべぇ・・・やべぇ・・・!!!コイツなんかに負けたくねぇんだッ・・・!!!!!!)」



『おいおい久しぶりだなぁ!!こういう対マン勝負はいつもお前の敗北で終わってた気がすんだけどまさか忘れてんのかぁ?』


「調子乗んなッバーカ・・・お前俺がどんだけ強くなったか知らねーだろ?言っとくけどよ、今のお前よりぜってー強え自信あんだけどいいのか?」


『あぁッ!?てめぇどの口がほざき回してんだコラぁああ!!!!????』



デモンズカウザムが放つオーラが、より一層凄みを増して暴発する。



「じゃあ決着つけよーぜ?まぁ俺の勝利は確実だが、お前に俺が強いって分からせるいい機会だコラ・・・!!」


『おいおい認識間違ってるぜぇ?ココで俺にボコられてもう俺に逆らわないように俺弱ぇって自覚するため、だろ?・・だろッ!!!!』



今のレイは、目の前の敵が伝説上最凶の悪魔などとは考えていない。

今ここで繰り広げられようとしているのは、子供の頃によく見かけたコレである。



――― ガキ同士のケンカ ―――



「うらぁ!!!」

『ぶっ飛ばしてやるッ!!!』




次の瞬間、二人は一斉に前へ駆け出した。




次回投稿日;6月16日

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