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とある青年のレベル上げ ~グラド・サーガ~  作者: あいうえおさん
第6章 『天』という世界で 《ヘブンズ・ウェイハザード》
74/110

レベル68 打開 《ギミック・ウェイハザード》


戦闘、開始 ―――


『ッ!!』


「アリナちゃんはみんなに『ケミセリド』を!シェリーちゃんはどんどん射撃してって!!芽衣さんもどんどん攻撃しってて!!」


「分かりましたッ!!」

「うん!」

「了解ね!」


まずアリナ、杖先にスペルを召喚して呪文を唱える。


「 『ケミセリド』! 」


呪文属性魔法『ケミセリド』

味方に紫色の光膜(バリア)を形成、相手の呪文攻撃を跳ね返す上級魔法の一つである。かつて暗黒洞(ダークサイト)でベヒーモスが似たような技を使っていたが、持続時間を考えてもアリナの今の『ケミセリド』の方が圧倒的に使える。


味方全員の前に呪文攻撃を跳ね返す光膜(バリア)が形成された。


「行くよ~~!!!」


シェリーは上空へゲリュオンと飛び上がり、真上からギュオリヤに射撃を仕掛ける。

弓に収めた矢に蒼を纏って



「 『神蒼閃(グングニル)』ッ!! 」


上空から蒼の射撃。そしてそのギュオリヤの正面には、


『スキル2;「スフィロブースト」が発動しました。

 一定時間、対象者《松嶋芽衣》のテンション・能力値が上昇します。』


ブーストがかかりテンションが上がる、そして右手に気功弾を召喚する。

テンションが上がると、その間は能力や会心率が上昇する。芽衣はそのようなスキルを発動させたのだ。



「 『光神貫(セカンドレイド)』! 」



高速で放たれた気功弾は、まっすぐとギュオリヤの心中目掛けて直進。



『・・・フフフ』



しかし意外にもこのギュオリヤの様子はいたって冷静なようだ。結構なダメージを喰らいそうな上方前方二連撃を前に、ギュオリヤはただ前に右手を掲げるだけ。


「何する気なの・・・?」


ギュオリヤの右手には、段々と赤色のスペルが発動されている・・・

どうやら呪文を放つようだが、ミオンにはその呪が何なのかが分からない。さらにこちらには一切の呪文攻撃を跳ね返す『ケミセリド』効果まである、状態異常系呪文などは効かないはずだ。


しかしギュオリヤが発動しようとしているその呪文は、ミオンが想像した者よりはるかに恐ろしいモノであった。

それに最初に気づいたのは、ミオンの横で次の呪文詠唱を行っていたアリナであった。



「・・ウソ、あの呪文ッ・・・!?」


「え、アリナちゃん分かるの!?どんな呪文なの!?」


「お姉さまッ、あれは『ヴァルテナ』という呪文です!!この世の誰もが習得不可能と言われていた最上級魔法を何でこの敵がッ・・!!??」


無効魔法『ヴァルテナ』とは ―――

発動すると一定時間の間、発動者及び発動者が効果を付与した対象者に一切のダメージも与えられなくなるという、本当の『無敵』呪文。

今の魔導書の『最上級魔法』欄でも、この魔法の圧倒的不可能さからリスト削除までされたこの呪文がなぜこの伝説上の悪魔に・・・



『ほう、カラダは小さいのによく分かりましたねぇ・・・』

「だッ誰が小さいですかッ!!」


悪魔でもやはり『アリナ小さい』ネタは使ってくるようで・・・と、こんなこと言っている場合ではない。

発動されたらこちらがかなり不利に・・・

・・・いや、待って?


「シェリーちゃん!ゲリュオンくんに『蒼天の波動』撃つように言ってくれる!?」


『蒼天の波動』は相手に付与する一切の効果をかき消す効果を持つ万能技。この攻撃はこのような時に最も効果を発揮するのだ。

しかしそのような大技、それほどになるとやはり発動する条件のハードルも上がってくるようで・・・


「ミオン!なんか『たいむらぐ』ってゆーのでまだ撃てないって!!まだ5分くらいかかるって!!」


先程のデュラーデ戦、ゲリュオンは一度『蒼天の波動』を使っている。この技は短時間に何発も撃つことが出来ないため、次の発動までに少しのラグが発生。しかし本来そのラグは短いもので、普段ならば今すぐに打てるはずだが、

デュラーデからもらった『魔将の吐息』、毒に侵されたことでそのラグが伸びているというのだ。


「(5分は厳しいなぁ・・!!)アリナちゃんのスキルって通用するかな!?」


アリナのスキル『フィドゥーティア』、信頼する心が共鳴して極まれに相手に掛かる全ての効果を無視できるというスキル。


「私のスキルは確率発動なので望みは薄いです・・・!!」


アリナも少し不足、芽衣の場合は『ヴァルテナ』に似た感じのスキルは持っていても相手に掛かったそれを無効にする技はなかった(と思う)。



(このまま5分間耐久・・・!!!)

「お姉さま来ますよッ!!」


顔を上げるミオンの目の前には、『ヴァルテナ』効果と同時に『キルディ』効果まで発動したギュオリヤがこちらに向かって進撃を始めている。

シェリーにしかデュラーデの強さは分からないが、今目の前にいるギュオリヤはそのデュラーデの倍は強いらしい。

『蒼天の波動』がまだ発動出来ないこの5分間。同じ5分間でも、デュラーデの時とギュオリヤのときとでは感じる長さが異なってくる。


(このまま逃げ切るしか・・!!)

「お姉さま目の前に来てますよッ!!」


気付けば目の前に、うでを振り上げる“魔神官”の姿が。


「ッ!!!」

『・・最初はお前だ。楽に逝かせてやる。』


闇を纏った右拳が、うなりを上げる。



『 邪神撃(カースブレッド) 』

「ミオンちゃんこっちッ ―――



次の瞬間、塔全体が大きく震えた。




!!!!!!!!!



『・・・チッ、邪魔入ったかよッ・・・』


「ミオンちゃん大丈夫!?」

「う、うん。少し考え事してて見えてなかったよ・・・」


「よ、よくもお姉さまをッ!」


杖先に爆発のスペルを召喚し、ギュオリヤに向けて一気に放出する。


(アリナちゃんダメッ・・)

「 『スーパーノヴァ』ァァ!!! 」



空気中を漂う核たちが熱とエネルギーを帯びて超大爆発を引き起こす、しかしギュオリヤには全く効かない。さらに爆発魔法『スーパーノヴァ』は結構な魔力を使う大技。アリナのこの攻撃は貴重な魔力を無駄にするだけになってしまった。

一方そのころ、上を行くレイとフィル。



グラグラグラ・・・・!!!


「おいおい!めちゃめちゃ塔揺れてるぞおい!」

「案ずるな!すぐおさまる!・・・多分!」

「多分かよ・・・っておい、この先は7階だから俺達生物はいけないゾーンだぞ!?行くのか!?」


階段横の吹き抜けから外を見ると、そこには一回目の遠征にも見た大気圏外の上空が。段々と息苦しくなってくる・・・


「任せろッ!スキル発動!」


『スキル2;「オベロンプレート」が発動します。』


このスキルの本質は『現実世界と異変が起こった場合に発動され、その異変を修正する。』というもの。しかしこの大気圏外の酸素は薄い、この事はれっきとした事実だ。

しかしこのスキルの種とは、『発動者が異変と捉えた』時に発動するという条件付きだ。

何が言いたいのか?・・・そう、


――― 『大気圏外でも息が出来ないのはおかしい』、そう思えばいいだけだ。



「・・・あれ?なんか楽になった感じが・・・?」

「これでマシになったはずだ!まだまだ行くぞ!」

「え?お、おうッ!」




そしてミオンたちの方へと戻る。

4人はあれからも無敵状態となったギュオリヤの攻撃を何とか避けるか捌いているが、段々とそれも苦しくなってくる。ギュオリヤの異常なまでの攻撃力に加味して、その攻撃ペースの速さに4人は一方的にペースを握られている。


「やッ! 『神蒼閃(グングニル)』!! 」


蒼い光を強く放つ射撃は、無敵状態のギュオリヤの前で急失速して無惨に落ちる。


「ッ!!シェリーちゃんあとどれくらい!?」


「まだ4分だって!!」


結構な数の攻撃を受けてきたが、それでもまだ先程から1分しか経ってないという。どれほどギュオリヤの攻撃ペースが速いかがこの事実で分かるだろう。

ギュオリヤの攻撃を必死に避け続け、パーティーメンバー全員に疲れが顕著に見え始めた。

さらにまだあと4分もある・・・さすがにこのまま避け続けるわけにはいかない。このままだといつか絶対にやられてしまう。


(・・・!!)


ミオンは考える。目の前には無敵状態になったギュオリヤ、補正効果もかかって攻撃力は半端が無い。対するこちら側、効果をかき消す波動を撃てるようになるまであと4分、アリナのスキルも確率発動の上にその確率自体もかなり低い。


(どうしよう・・・!!??)



『フッ・・・ここまで機能しない指揮官もいたものですね、滑稽だ。』


「え・・?」


『あなたのせいで他の皆さんが疲労しているのにまだお気づきになりませんか?・・・まぁ私としてはただ駆除しやすいだけですが。』


『ここまで一方的になると、私としても面白くないのでね。どうせ死ぬあなた達でも少しは楽しませてほしいものです。』



もしここにレイがいたならば、

先程の無駄な呪文発動のせいで、アリナに大分疲労が溜まっている。レイなら先を見てすぐに感情的になったアリナを止めたはずだ。

もしレイだったなら、ギュオリヤが『ヴァルテナ』を唱える前に、呪文の正体は分からなくても発動前にアクションを起こして流れを変えていたはずだ。

・・・予測が甘かったのだ。


(・・・!!!)


ミオンはさらに考える。

レイならばこの状況をどう捉えて皆を動かすだろう?レイは理屈っぽい内容が大好きだ。

何か対処法を考え出すときもまず見ていたのは『かかっている効果や動き』であった。なら私もやってみよう。

今ので波動発動は3分後かな?でもその間ただ逃げてるだけじゃ、3分後に効果を消してもすぐに発動される・・・!!

じゃあどうする?この3分間を?

少しでも対処しやすい方に持っていきたい、では何をすべきか?

二度とギュオリヤに『ヴァルテナ』を発動させないためにはどうすればいいか?あと『ヴァルテナ』ってどんな効果だった?



『一定時間の間、発動者及び発動者が効果を付与した対象者に一切のダメージも与えられなくなる。』


あ、こんな内容だったな・・・あれ?



『発動者及び対象者に一切のダメージも与えられない。』



まさか・・・



『一切のダメージも与えられない。』



まさか・・・・!?




――― 一切の“ダメージ”も ―――




「ッ!!アリナちゃん今呪文唱えられる!?」

「ハァハァ・・・はい、大丈夫です!!」


(こんな屁理屈みたいなの通るか分からないけど・・・やってみよう!)



「『オーディバイン』で相手の呪文耐性を下げてくれる!?芽衣さんは隠蔽魔法で私たちの身を隠して!」

「え?あ、うん!!分かった!!」

「へ?『オーディバイン』ですか!?」



(『オーディバイン』はダメージを与える攻撃じゃない・・・耐性を下げる状態異常手段だから・・・!!)


(通じるはず!!芽衣さんの『プラニイェト』で姿隠して場所特定を難しくすれば・・!!)



「 『プラニイェト』!! 」


芽衣がそう叫ぶと同時に、4人と一体の姿が一瞬で空気の中に消えた。



『・・・ん、どこ行った・・・・!?』



さすがのギュオリヤでも、『古代魔法』には敵わなかったようだ。今現在、先程まで自分の両眼にばっちりと映っていた標的の姿が全く見当たらない。

スペルの出場所が不明の場合、いつどこから来るのか分からないために対策が立てづらくなり、姿が見える時より状態異常攻撃が効きやすくなるのだ。

さらに姿が特定できないお陰で、今のギュオリヤは攻撃することが出来ない。



(・・・アリナちゃんお願いッ!!)




そしてアリナ、ギュオリヤへ紫色のスペルを召喚。


アリナは、呪文を唱えた。




「 『オーディバイン』!! 」




(お願い・・・)




(・・効いてッ!!)




次回投稿日;6月13日

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