レベル66 盲点 《ポイズン・ブレイク》
今までの攻撃でデュラーデに与えた総ダメージは18万のうちのたった9000程、底なしというのは間違っていない。
さらに先程『バゴルディ』でデュラーデの攻撃力を下げたにも関わらず、それでも200台はキープしている上に回復するインターバルも短めのようだ。
先程から下げた攻撃力が元に戻ろうと再び上がってきている。
「行くよぉ!!」
シェリー、再び射撃の準備、今度こそとデュラーデの右目に狙いを定める。
もしこれが本当にデュラーデの右目にヒットしたらば、これで完全にデュラーデの視界を奪ってかなり優勢になる。
シェリーは力強く引いた矢を、デュラーデの右目へ発射する。
「 『輝空閃』ぁ!! 」
光属性の一閃射撃。眩しさで視界を眩ませながらの射撃とは、シェリーも段々と戦闘が分かってきたみたいだ。
(技名の発音も以前よりうまくなっている。)
『・・・!!!』グググッ
対するデュラーデ、周りの大気を一気に吸い込み出す。
しかし光速射撃に対抗する手段としては、あまり考えない行動だ。
――― ッ!? シェリー逃ゲルゾッ ―――
そう言ったのはシェリーを背に乗せるゲリュオン。
そして次の瞬間、
デュラーデは吸い込んだ大気を一気に吐き出した。
『~~~~~~~!!!!!!!!』
デュラーデが吐き出したのはただの台風並みの吐息でなく、猛毒と闇の属性を含んだ『魔将の吐息』。
シェリーの『輝空閃』はこの最悪な吐息の中で急に失速し、輝く光はその中ですっと消えて行った。
『デュラーデの攻撃;「魔将の吐息」
猛毒と闇のスペルを組み込んだブレス攻撃で、確率で相手を猛毒状態にする。』
『ルート』スキルはこのように説明している。しかも最悪な事に解毒道具を持ち合わせていない。
「・・・マジかッ・・・!!」
よって、やられてしまった。
「うぅッ・・・苦しいよぉ・・ゲホゲホッ・・ハァハァ・・・!!!」
シェリーは、毒に侵された。
~~~~
最悪だ。
『毒攻撃』は時間が経つにつれて身体に段々と蓄積されていき、最終的には死に至る経過性ダメージ攻撃である。薬草などの解毒剤で消毒すれば一発で消えるが、今まで毒にかかったことが無くて解毒道具をそろえなかったのが仇になった。さらにシェリーが貰ってしまった毒はさらにタチが悪い、これは『猛毒』である。
『猛毒』は『毒』よりも蓄積されるダメージが多く、しかし一番厄介なのは『全ステータス大幅低下』という付与効果だ。
「ハァハァ・・・!!胸がいた、い・・・!!」
シェリーはゲリュオンの背中で息を荒げて悶え始めた。
「だ、大丈夫かッ!?」
――― ッ!?キサマァ・・・!!! ―――
ゲリュオンが主の状態異常を引き起こした原因をにらみつける先では、デュラーデが再び息を大きく吸い込んでいる。
・・・身体の向きがどことなくレイへと向いている。
――― レイ、今度ハ此方ノヨウダ・・・ ―――
「くッ・・!!『焔球護』!」
自分周辺に一時結界を張り、ブレス攻撃を無効化しようとするが、
――― アレニ結界ノ類ハ効果ナドナイ・・! ―――
「マジかよッ」
エヴィウスはレイを乗せて急いで射程外へと避難する。
『~~~~~~!!!!!!!』
――― ッ・・!! ―――
「うおッ」
ほんの数センチの差、レイとエヴィウスは何とか猛毒ブレスを回避する。
――― 我“神獣”ハ持ツオーラデ毒ナド効カナイ シカシ主ガ侵サレルト我モ同ジクソウナル ―――
エヴィウスがそういう先では、シェリーが猛毒にかかって放つ光が少し弱まるゲリュオンが何とかシェリーの回復に努めている。
一心一体の主従関係は、ここまで深く根付いているものなのか。
もしレイが猛毒に侵されるとエヴィウスも同じく猛毒状態に、そうなるとこのデュラーデ相手に勝ち目などなくなってしまう。
再び形勢逆転したデュラーデのブレス攻撃は、想像以上に厄介である。
『~~!! ~~!!』
デュラーデ、今度は自分の両手に猛毒ブレスを吹きかけ、両手に猛毒の闇スペルを纏い始めた。
「あれで殴り掛かるってことか・・・!?」
そしてデュラーデは、レイたちの方へ殴りかかってきた。
『ッ!!ッ!!』
「うおッ!」
デュラーデの拳は止むことなく次々とレイへと振り下ろされる、レイは避けたり剣で捌いたりなど何とか攻撃をかわしている。
しかし一発でも喰らえば事実上の“ゲームオーバー”。
そのプレッシャーがじわじわとレイの動きにブレーキをかけるかのように。
「野郎ッ!『烈火弾』!」
レイは咄嗟に爆光をデュラーデの顔面へ放つが、デュラーデは異常値体力を持ち合わせているために全くひるまない。それどころか一瞬の隙も見せない。
レイは強制的に『攻撃かわし』ターンへと追いやられる。
『ッ!! ッ!! ッ!! ッ!!』
「くッ!うおッ・・!!チッ、埒開かねぇ・・・!!」
エヴィウスも灼熱の波動を放ってレイを乗せながら応戦するが、それでも異常値体力を持つデュラーデに隙一つも作れない状況。
レイだけでなく、エヴィウスも追い込まれているのだ。
『ッ!!・・・』
デュラーデはふと動きを止める、“紅騎士”はその間で瞬時に距離を取って崩れかけた態勢を立て直したい。
しかし猛攻は一息もつかせてくれない。
デュラーデは、再び『魔将の吐息』を吐き出した。
『~~~~~~~!!!!!!』
しかも厄介なことをしてくれる・・・
デュラーデはブレスを吐きながら、猛毒を帯びた両腕を構えて猛突進してくるのだ。
「ッ・・!!」
普通の毒なら、炎で焦がせば絶えてくれる。しかしデュラーデが吐く『猛毒』は炎などで消化できる程度ではない。
毒を吐きながら自分の方へ毒攻撃を仕掛けるデュラーデ、しかもレイには解毒の手段がない。
よってレイに残された方法は一つ、『双方を回避する』しかない。
『~~~~~~!!!!!! ッ!!!! ッ!!!』
「ッ!! ッ!! ッ!!」
エヴィウスがブレスから走って回避するうえで、レイはデュラーデの猛毒突きを剣で受け流しを続ける。
息が合っている双方の連携だが、どちらも手いっぱいな状況に変わりはない。
しかしこのまま避け続けても埒が明かない。レイは可能な限り特技をぶち込んでいく。
「『烈火弾』! 『星爆花』ッ!! 『竜閃炎』ぅ!!」
それ以外にも結構な数を撃ち込んだが、それ全てを喰らうデュラーデは中々ひるんでくれない。発動中の『ルート』で見ても現在体力欄に書かれた数値はまだ15万さえ切っていない。
対するレイは残りの残弾が少なくなり、エヴィウスにも動きのキレが少しずつ無くなってきている。
いよいよピンチだ。
『~~~~~~~!!!!!!!』
デュラーデは猛毒を吐きながら再びこちらへ進撃・・・するはずが、
「・・!?まさかッ・・!! ―――
デュラーデの向かう先は、途中からレイではなく別の方向へとずれていった。
さらにその先とは・・・
「ハァハァ・・・ゲホッ!!・・・ハァハァ・・・!!??」
猛毒に侵されているシェリーの方であった。
「シェリー・・・!!ヤバいッ!!」
『パーティーメンバー4;シェリー=クラシア
現在ステータス・・・HP;15/256 MP;32/32』
――― HP、残り15 ―――
「」ダダッ
レイの身体は、自然とシェリーの方へと動いていた。
ッッッ!!!!!!!! ――――
『!!・・・ツイニ貴様モ侵サレタカ。コンナ形トハ思ワナカッタガ。』
「そ、それは良かったなぁ・・・!!ゲホッ、・・・ハァハァ・・」
身を挺してシェリーを庇ったレイの中腹にデュラーデの猛毒拳が炸裂、レイも猛毒に侵される。
しかしあのままであればシェリーは確実に死に至る、全く動けない状態のシェリーを延命させるにはこの手段しか思いつかない。
「くッ!・・・」ゲホッ
猛毒をいざ喰らってみると予想以上の嘔吐感に脱力感、そして焦燥感が襲って来る。
そう、レイがこれを喰らってしまうと、事実上の“ゲームオーバー”。
『・・・フフ、意外ニモ早ク片付ケラレソウダナ。』
(ヤバい・・・ヤバいッ・・・!!)
シェリーは、ついにHP二桁を切ってしまった。荒げた息も、段々と聞こえなくなってきている・・・
『ココマデ毒ニ弱イトハ・・・シル・ガイアモ認知シテイレバ良カッタモノダ・・・』
そしてレイの元へ歩み寄ると、猛毒を帯びたその大きな右腕を振り上げた。
(やべぇッ・・・いよいよヤベぇ・・・!!!)
『サァ、デハ死ンデモラオウカ。』
(くッ・・・!!)
『サァ死ネェ獣騎士ィィィィィィィィィ!!!』
(ホントにここまでなのかよッ・・・!!!)
振り下ろされる拳がレイに達する、
まさに、その時 ―――
ッ ――――
『ァ』
デュラーデが振り下ろしたはずの拳は、レイが目を開けた時には自分の真横に転がっていた。
視線を戻した先ではデュラーデが自分の右腕上部を左手でつかんで、どうやら必死に痛みに耐えているようだ・・・
その痛さは、肘より下が吹き飛ばされて膨大な量の血が出ていることで確認できた。
しかし、
(・・・だ、誰が・・・!!??)
そしてレイが視線を映した先には、
「・・・久しぶり」
翡翠色のオーラを放つ一人と、緑眼光を放つ巨大獣の姿が一つ
フィル・=ガイゼルと守護獣リモラが騎士覚醒した姿が、そこにはあった。
――― 『翠騎士』、である。
次回投稿日;6月11日




