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とある青年のレベル上げ ~グラド・サーガ~  作者: あいうえおさん
第6章 『天』という世界で 《ヘブンズ・ウェイハザード》
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レベル64 右腕 《デュラーデ》


――― ・・・ ―――



蒼い神獣はその青く透き通った二つの瞳に5人を映し、まるで何かを見定めるかのようなそんな目をして

そしてとある人物の前でふと視線を固定する。


・・・芽衣だ。



「ッ・・・!!」グッ



――― ・・・ソナタ ―――


「ッ!?」ビクッ



ゲリュオンの少し険しくなった表情を前に、芽衣の背筋はかなり凍り付く。

神獣が放つその神聖なるオーラに圧倒されるのは、決してこの大陸の亜人だけではなかったということだ。

そしてゲリュオンはゆっくりと芽衣との距離を詰めていく・・・



「な、なんですか・・・!?」


思わずそんな声が出てしまう。当然だ、顔だけ見ると芽衣を睨んでいるように見えるのだから。

しかしそんな芽衣に、ゲリュオンは意外な一言。




――― モウ一人ノ貴様ニ、貴様ノ言葉ハ届カナイ ―――



「・・・え」



――― 直ニ貴様ノ前ニ姿ヲ現スダロウ・・・ ―――



「なんで、分かるの・・・?」



――― ・・・ ―――




――― モウ一人ノ貴様ハ、貴様ヲ探シテイルカラダ ―――



「・・・そうなの。」



――― ・・・モシ現レタ時、貴様ヲ殺シニカカッテクルハズ ―――



「・・・」



――― 発端ハ大半ガ貴様等ダガ、解決ノ道ヲ持ツ者ハ貴様ノ方ダ ―――



「・・・もう一人の私は今どこにいるの?」



――― ・・・不明ダ、ヤツハスグニ場所ヲ移ス ―――



「・・・そう。でもいつかシル・ガイア神殿に姿を現すんでしょ?それがもうすぐなの?」



――― ・・・ソウダ ―――



「・・・分かった。教えてくれてありがとう。」


「・・・終わったか。じゃあシェリー、要件をゲリュオンに伝えてくれ。」



――― ソノ必要ハナイ シェリーガ私ニ思ウ事ハ聞カナクトモ分カル ―――



「へぇ・・・」



――― ソシテ探シ物モ、ソコニアル ―――



ゲリュオンがそう言って視線を映した先には、柱と同じ大理石でできた円形の石碑が一つ。

円形の内部に何かあるわけでもなく、ただの石碑が静かに佇むだけ。


「・・・これがそのゲートか?ただの形整った石にしか見えん・・・」


「・・・ゲリュオンこれがそうなの?」



――― ゲートヲ開ク ソウスレバ分カルハズダ ―――



ゲリュオンはその石碑の前に移動すると、その石碑の前で自分の魔力を放ち出した。



ッッ!!・・・



するとどうしたことか、円の内部から突然の光が溢れ出し

ほんの数秒の間、辺り全体を白に染める ―――



そして光が落ち着いた石碑の円の内部には



「おぉ・・・なるほど。」




――― とある島の砂浜が映っていた。





♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢


目の前に映る砂浜は、その先の情景を見ると言われなくてもおおよその検討がつく。

大臣が言っていた謎多き絶海の孤島『エルゴ』である。

ここから見る限り魔物はいないようだが、目の前に建つ神殿が絶妙な雰囲気を醸し出している。夜にここにいったら一流の心霊スポットだってデマでも信じちゃうレベル。


「・・・ここからでも島全部見えるぞ。そんなに小さい島だったのかよ・・・?」


まだレイたち5人はあの聖堂の床面に立っているが、その立ち位置からでも小さめの円の内部から島の面影を見る事が出来る。

実際見てみると本当に神殿一つだけがポツンと建っている、雰囲気もどことなく不気味だ。

するとゲリュオン、次にこういうのだ。



――― 我、獣騎士ノミシカ此処ヲ通セヌ・・・ ―――



このゲートはゲリュオンが不思議なチカラで解放したもの。しかし何かほかに不思議なチカラが働いているのか、通ることを許されるのは獣騎士の資格を得ている者、つまりレイとシェリーだけだという。シェリーはその理由をゲリュオンに尋ねるが、はっきりとしたことは分からないそうだ。この世界はやたらとこんな感じのご都合主義が多すぎる。

しかしこうなるとレイは回復役を失う。というのもレイとシェリー、二人とも攻撃職である。レイは攻撃しかできず、シェリーもほぼ同じと言えよう。

回復しながら探索するには、他の三人から回復道具を譲り受けるしかない。

三人の回復道具が無くなってしまうが、三人は別に構わないよと言う。


「・・・さんきゅ。じゃあちょっと行ってくるわ。」


「何かあったらその『トレイフウィング』で帰ってくるんだよ?いいレイくん?」


『トレイフウィング』とは、想像は突くと思うが念のために説明しよう。使うと移動魔法『トレイフ』の効果を発動する魔道具である。

レイたちはゲートを通じてエルゴに向かうが、別に異次元に向かうわけではない。よってこの魔道具も役に立つことに変わりないということだ。


「分かってるっつの。じゃあシェリー、行くぞ。」

「うん!」




レイは三人から譲り受けた道具を自分のバッグにしまい、そしてその小さい円の中に身を乗り出し


シェリーと共に、絶海の孤島へ







そして、ゲートは閉ざされた。




~~~~~


押し寄せる波の音が不気味さを一層醸し出すこの場所は、エクスタシア王国領ラドウィン洋に浮かぶ絶島『エルゴ』。

この島はグラド大陸エクスタシア王国と隣のオルフェウス大陸ラドウィン王国の丁度真ん中に位置し、ギリギリエクスタシア王国領という絶妙な場所にある。

しかしその絶海の孤島さ故に、渡航で立ち入る者など誰もいない。この付近の海は魔物も狂暴であり、エクスタシアとラドウィンを結ぶ連絡船はルートの迂回を強いられる。


そんな場所に、亜人が二人 ―――



「なぁ、いざ降りてみるとさらに不気味に感じるな・・・」


「そ、そだね・・・もうちょっとじゅんびした方が良かったかも・・・」



不気味な空気 ―――

それはレイが味わった中でもかなり厄介なものである。無形の圧力が身体全体を圧迫するような・・・いるだけで体力を消耗しそうな勢いのこの雰囲気。

『不気味』ではなく『身が削られるような』雰囲気と言った方が正確だろうか。


しかしただ降り立った砂浜に立ち尽くしても仕方がない、2人は島の内部へと足を進めていく。

といっても面積はかなり小さいので、島中央部にある神殿にはすぐに到着するのだが。



「・・・さて、ココにデモンズカウザムだっけ?ソイツについて分かるモンがあればいいんだが・・・」


何か手掛かりを探す時、そう言ったものを見つけてくるのは内のパーティー内だと大体この少女だ。

その持つ大きな好奇心が働く故に、色々なところに目が光っているシェリーだ。

しかし結構障害物がない環境なので、何か見つけたのはレイの方だった。



しかし、レイは見つけると同時に両手に業火のスペルを召喚する。



見つけたものは、“モノ”ではなかった ――――



「 『星爆花(スターフレア)』! 」




炎の弾丸が衝突と同時に大きく爆ぜる。

爆炎は瞬時に拡がり巨大な大爆発が起こる。




「シェリー構えろッ!来るぞッ!!」



爆発による噴煙が収まり、段々と影が見えてくる。



「ッ!?うん分かったッ!!」



噴煙が引いてくると、その影はさらに大きくなり


完全に見える時には巨獣レベルの大きさが見えていた。




『バル神話』に出てくる魔王獣の右腕の存在、その怪力は大地など軽く砕け散る ――――






『“魔将獣”デュラーデ が現れた。』




♢ ♢ ♢ ♢ ♢


バル神話において、その持つ怪力から大国を瞬時に壊滅させた伝説を持つ『魔将獣』デュラーデ。

どうやらデュラーデが持つバカげた怪力は本当のようだ。

なぜかって?それは2人の目の前の光景を見てくれると分かるだろう・・・



――― たった腕の一振りで、海が大きく裂けている ―――



「ッ!!シェリーひたすら攻撃だッ!」


回復専門がいない今の状況で『耐久戦』なんてやってられない。長期戦は回復・サポート役がいてようやく出来る戦法である。

しかし今の場合、耐久出来る程の相手でないことは一目でわかる上に、下手したらワンパンだってあり得る。


今までのヤバい敵リストの上位に、簡単に入ってくるほどの敵なのだから。


「くぅ・・!!」


シェリーは数本の矢を弓に収め、それぞれに光のスペルを撃ち込んだ。

デュラーデが動き出すと同時に、シェリーは弓を引く手を離した。



「 『光雷雨(ホーリーシャワー)』ぁ!! 」



いくつもの閃光矢が光速でデュラーデの元へ。

矢は速さと相乗して持つ威力を段々と増していく ―――


そして




ッ!!! ッ!!! ッ!!! ッ!!! ・・・・



矢は次々とデュラーデの身体を貫通していく。レベルが結構上がったシェリーなので、一本一本の弓の攻撃力は前寄りかなり上がっている。

・・・いや、確かにシェリーの矢は全部貫通したはずだ。実際二人の眼にそのような光景が映されていたワケだし、貫通したことは間違いない。シェリーの攻撃もかなり強くなったのも間違いない。

間違いない、はず・・・だが・・・




「何でそんままこっちに来るんだよ・・・!!??」

「ウソ・・・!?なんでぜんぜんダメージ受けてないのッ!?」






デュラーデが、来る ――――




次回投稿日;6月9日

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