レベル6 初陣 《バトル》
村の大門を潜り抜け、レイはミオンと共に門出を果たした。
レイはあの後家に戻り、両親に事情を説明。両親も成り行きに納得してくれて、準備も整え、そして今出発に至る。
途中でソリューに出くわし、案の定ミオンのことでからまれたが、そこは省略するとしよう。
「ねぇレイくん、これからどこ行くの?」
「まぁとりあえず城下町に行ってみようと思ってる。そこで色々世の状況知りたいし。」
「あ、じゃあイーストデルト城ってこと?」
イーストデルト城とは、レイ達が出発したベルトディア村から南の方角にある、最も村と近い城下町である。
イーストデルト城は海岸付近に立地しているため、街並みは異国の文化が多く組み込まれ、町は賑わいを見せている。
「なぁ、ところでみお姉って武器は何が使えるの?」
「私は基本的には杖を使うのよ。私は回復魔法と補助魔法専門だからね。」
補助魔法とは味方のステータスを一時的に向上させるための呪文のことである。
「へぇ、みお姉ってどんな呪文が使えるの?」
「私はね・・・レイくんちょっとこっち来て。」
ミオンはレイの手を握って、レイを自分の右肩に引っ張った。
「え?うおッ・・・! ―――
プニョンッ!
(おっふ・・・こ、これは・・・!!)
『おっとこれはレイ氏の腕というかもう左手がミオン氏のおっ〇いに当たってしまったようだぁ!レイ氏はいわゆる『ラッキースケベ』に耐性がない!さぁどうするレイ=ベルディア氏ッ!!!』
「ん?どしたのレイくん?」
「べべ別にッ・・・///」
「???」
『レイ氏の結構マジなほうでほとんど聞こえなかった発言が出たところでそろそろ話しを戻しましょうッ!!』
~~~~
「レイくん見てて」
ミオンは、改めてレイを自分の右方に置くと、自分の右のほうに意識を集中させた。
「えいッ!」
すると、
ピッ!
「うおッ、なんだこれ?」
ミオンが意識を向けた先には、ミオンのステータスや使用可能呪文など、色々な事が映されたパネルが召喚された。
「これはステータスパネル。このパネルで自分の能力が分かるんだよ。まぁレイくんはランク1になったばっかりだし、驚くのも無理ないかな。」
能力を映し出すこのパネルは、ランク1以上の冒険者でないと現れることはない。
ミオンのステータスは本人しか分からないが、使用可能呪文などの項目はパーティー仲間でも見られるのだ。また仲間のパーティー登録も、このパネルで行える。
「ほ~、『シェリエ』と『プロイ』って書いてあるなここ。」
「そう。私が使えるのはこの二つ、回復呪文の『シェリエ』と補強呪文の『プロイ』よ。」
仲間のHPを少し回復する呪文が『シェリエ』、仲間一人の守備力を一時的にある程度上げる呪文が『プロイ』となる。
「レイくんは?何かある?」
「多分ないよ、ランク1に上がったばっかだし。」
レイはそう言いながら、先程ミオンがやったように、右方に意識を集中させた。
ピッ!
「お、出てきた出てきた。これが俺のステータスね。まだまだ弱っちいなぁ。」
レイは特技、呪文の項目も開いてみる。もちろんダメ元で。
「どうせなにもないだろうけd・・・
項目を見ると、空白だと思っていた欄に、一行の文字が。
「え~ッと、『ジゴレヴィ』って書いてあるね。初めて聞いたよこの呪文。どんなやつなの?」
「俺にも呪文が使えるのか・・・!!」
「レイくん?」
「・・・」
「?」
「よッッッしゃあああああああ!!!!!」
「ひぇッ!?」
「じゅもんがつかえるうううううううう!!!!!!」
「え、まだ使えないよこれ。」
「ううううううぅぅぅぅぇぇぇえええ?」
「だってほら、これ消費MP100って書いてあるよ。今のレイくんにそこまでの魔力ないでしょ?」
「えッ、MP・・・?」
MPとはマジックポイントの略、いわば魔力値のことである。
レイは先程のステータスの項目にスライドさせて、今のレイの魔力値を確認すると、
「ホントだ・・・MP12って、かいてある・・・・」ズーン・・
(テンションの起伏激しいなレイくん・・・)
「でも何で使えないって分かったの・・・・?」
「私はプリーストだから、他の職よりMPが高いの。そんな私でも最大MPは24なんだからレイくんはなおさらってこと。」
「ま、mjk・・・」
「まぁでもランクが上がっていくと最大MPを上がってくから、そのうち使えるよ。」
「それでも最大MP12のやつが消費MP100の呪文を使える時ってランクいくつだよぉ・・・」
レイが自分のステータスに落ち込んでいると、
「あッ、レイくん!!まえ!!」
「えッ? ――――
~~~~~
『カメラゼが現れた。』
二人のパネルに、魔物の名前が映された。
「うおッ、これが魔物!!」
「気を付けてレイくん!!この魔物は比較的弱い部類だけど頭が良いわ!動きに注意して!!」
モンスターは『カメラゼ』というゴブリン系のモンスターだ。
身体のつくり自体は本当にゴブリンそっくりだが、知能指数はゴブリンよりも高い魔物だ。手にはそれぞれ盾とブロンズソードを装備している。
「私が守備力を上げるから、レイくんはそのまま攻撃して!私攻撃になると途端に弱くなるの!」
プリーストはサポート職の一つだ。本来のケースだとプリーストとは、一人での戦闘の場合だと最も向かない職なのだ。
「分かった!まず背の高い方から行くぜッ!!」
レイは腰の剣を抜くと、カメラゼに向かって走り出す。
「うおりゃああああ!!」
ミオンはすかさず呪文を唱える。
「いくよレイくん!! 『プロイ』ッ!! 」
ミオンが叫ぶと同時に、レイを優しい色の光が包み込み、攻撃から身を護る光の膜を成した。
「これで守備力上がったよ!回復も任せて!」
「おう、さんきゅー!!」
レイはそのままカメラゼに斬りかかる。
「くらえええ!!!」
スッ!
カメラゼはレイの前に盾を構える、
「ッ!!」
ギインッ!!
「くッ・・!」
フンッ!!
カメラゼは攻撃を盾ごと横に受け流した。
「うおッ・・・!」
レイの右腕が横に流され、態勢が右方向に崩れる。
しかしその態勢でバックステップ、何とかカウンターは防げたようだ。
「レイくん!正面からじゃダメ!!狙う時は後ろか横よ!!」
レイはすぐさまカメラゼの後ろに回り込む。
が、
スッ ――――
カメラゼは背後に回るレイの、またさらに後ろへと回り込んでいく。
「えッ!??」
「レイくんあぶないッ!!」
カメラゼは手持ちの剣でレイへと振りかかった。
!!!!!
「ヴッ・・・・!!!」
カメラゼの一太刀は、レイの右肩に直撃。
刺さった箇所から出血が勢いを増していく。
レイの動きが大きく鈍っていく。
「やべッ・・・!!
「レイくんッ!!」
ミオンは呪文を唱えた。
「 『シェリエ』ッ!! 」
レイの右肩に青色の光達が流れ込み、青い光達は右肩の赤を透明に変えると、剣の傷を段々と塞いでいく。
そして傷口は完全に塞がった。
「!!・・・・どうレイくん?動ける?」
「あぁ・・・・大丈夫。さんきゅッ!!」
レイは態勢を立て直すと再び剣を持ち、カメラゼの方へ駆け出していく。
「こんどこそッ!!」
(後ろへ回り込めばまたさらに回り込まれる・・・ならッ・・・!!!)
レイはカメラゼの後ろに回り込もうとカメラゼの背後へ廻ろうと、カメラゼの右側から後ろに回り込む、カメラゼの右後ろに直線で移動する・・・
スッ ―――
しかしカメラゼはさらにレイの後ろに回り込もうと、その場をさらにバックステップ。
(ここだッ!!)
レイはカメラゼが真横を横切る瞬間に、カメラゼの横腹に剣を突き刺した。
――― グサッ!!!
『アアアアアアアアッッ!!!!!!』
カメラゼは流血する横腹を抑えてうずくまる
回り込んだ相手さえも回り込むほどのスピードで、刺さった剣はカメラゼの横腹を斬り裂いている。あふれ出る血の量は多い。
「レイくんとどめ!!」
レイはうずくまるカメラゼに剣を振り上げ、
!!!!!
最後のとどめをカメラゼに、
「ヴアアアアア!!!!!」
カメラゼはもがいた後、大気に浄化されて消え去った。
消えたと同時にゴールドが、その場に降ってきた。
『カメラゼを討伐。それぞれ経験値15を獲得、20ゴールドを手に入れた。』
二人の前に突如パネルが現れ、魔物の撃退を知らせる。
「ハァハァ・・・こんなに動いてたったの15か・・・」
「レベルアップってホント大変なんだね。」
「みお姉は大丈夫か?怪我とかは・・・」
「大丈夫。私は基本サポートしかしてないし。それよりレイくんこそ大丈夫?」
「あぁ、さっきの回復魔法で回復したよ。助かった。」
はじめての戦闘は、レイが思ってよりも難しく、そして手強く
痛い思いをしてたったの経験値15である。
『冒険』という行為の厳しさ、無情さ、そして
――― 『命を懸ける』の意味をはじめて思い知ったものとなった。
「カメラゼってどれくらいのランクなんだ?」
「う~ん・・・駆け出し冒険者がよく倒すレベル、かな?」
普通の駆け出し冒険者で普通に倒せるほどの相手に、レイたちは『命を懸けて』レベルでやっと倒した感じだ。
レベルアップどころか魔物討伐までも、レイたちにとって困難なものになっているのだ。
「てかまだイーストデルトまでまだまだあるんだよなぁ・・・」
「まぁまぁ、その分レベルアップできると思えばいいじゃん?」
「・・・はぁ、じゃあ行くか。」
少し重めのため息のあと、レイは下ろした荷物を背中にしょい込む。
二人は態勢を立て直し、イーストデルトへとまた歩き出した。
「生きてたどり着けたらいいけどな・・・」
「この状況でリアルっぽいこと言わないでよレイくん。」
次回投稿日:3月30日